せん‐せん【先占】
先占
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/23 20:25 UTC 版)
先占(せんせん、独:Besitzergreifung, 羅:occupatio)とは、いずれの国にも属していない無主の土地(無主地)に対し、他の国家に先んじて支配を及ぼすことによって自国の領土とすることである[1]。無主地先占、または先占の法理ともいわれ[2]、国際法においての領土取得のあり方として認められている[3]。
国際法における無主地先占
国際法において無主地先占は先占の法理ともよばれ、他の国家によって実効的支配が及んでいない土地を領土として編入する際にも適用される。また、領土問題が発生した場合には、領土の権源のひとつとしても採用される法理である。
領土問題において無主物先占が言及される事例としては、以下のものがある。
- アメリカ州
- アジア州
- 南極 - 南極は気候条件が厳しく実効支配が難しいことから先占の法理が適用できないとして、先占がなくても一定の範囲で領域の取得を認めるセクター主義が主張された。後に科学技術の進歩によって実効的支配の可能性も否定できなくなったことから南極条約により各国が主張した領有権は凍結状態となった。
学説
先占(occupatio)の法理の成立背景
京都大学教授田畑茂二郎は、近世の国際法において先占(occupatio)の法理がもち出され、承認されていった背景として「新大陸、新航路の発見にともない展開された、植民地の獲得、国際通商の独占をめざした、激しい国家間の闘争」をあげている[7]。また、「国家間の行動を共通に規律する」国際法の動機について「他国に対して自国の行動を正当づけるといった動機が、多くの場合背景になっていた」と述べている[7]。
無主地の定義
東京大学名誉教授の横田喜三郎は、無主地について、「国際法の無主地は無人の土地だけにかぎるのではない。すでに人が住んでいても、その土地がどの国にも属していなければ無主の土地である。ヨーロッパ諸国によって先占される前のアフリカはそのよい例である。そこには未開の土人が住んでいたが、これらの土人は国際法上の国家を構成していなかった。その土地は無主の土地にほかならなかった」と指摘している[8]。
実効的先占
また、横田によれば、19世紀には国際社会によって、先占は土地を現実に占有し支配しなければならないと主張され、それがしだいに諸国の慣行となり、19世紀後半には、国際法上で先占は実効的でなければならないことが確立したとしている[8]。
横田は「先占が実効的であるというのは、土地を現実に占有し、これを有効に支配する権力をもうけることである。そのためには、或る程度の行政機関が必要である。わけても、秩序を維持するために、警察力が必要である。多くの場合にはいくらかの兵力も必要である」と、警察力・軍事力と実効的先占の関連についても指摘している[8]。
脚注
外部リンク
- 「尖閣諸島の領有をめぐる論点―日中両国の見解を中心に―」国立国会図書館外交防衛課,第565号,2007年2月28日.
関連項目
先占
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 01:07 UTC 版)
「先占」も参照 先占とは、領有の意思を持って無主地を実効的に支配することである。18世紀以降、西欧諸国による植民地支配のための重要な手段であった。西欧文明に類する段階に達していない地域は先占の対象となる無主地とみなされていたが、1975年の西サハラ国際司法裁判所勧告的意見(英語版)では、西欧文明に属さない先住民だけが居住している地域であっても、固有の政治的・社会的組織があって、住民を代表する首長の権限のもとに置かれている地域は、無主地ではないとする国際慣行が19世紀末には成立していたと判断された。先占というためにはまず領域取得の意思が示されなければならず、その地域を自国に編入するという宣言や他国への通告によって行われるが、一般的には個々の国家活動や関連事実から推定されるものであり、他国への通告は絶対的な条件とは言えない。先占は実効的な占有を伴うものでなければならず、単に無主地を発見したり、主権を宣言したり、国旗を掲揚しただけでは不十分とみなされる。例えば1928年のパルマス島事件常設仲裁裁判所判決では、スペインによる島の発見は先占による同国の領域権原を認めるには不十分なものであり、アメリカによる継続的かつ平穏な主権の行使が優先されると判断された。このような実効的占有は自国の法秩序を維持し、他国の介入を有効に排除する程度の具体的な国家活動でなければならない。
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