保護の適用範囲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/02 14:48 UTC 版)
労働基準法は、原則として、事業に使用されるすべての労働者について適用されるが、例外として、後述するように、同居の親族、家事使用人、一部の国家公務員等についてはその適用が除外されている。この労働基準法上の労働者性の判断は、契約その他一切の形式に関わりなく、実態により客観的に判断されるため、例えば明示的には雇用契約を締結せず、そのかわりに形式上・表面上は請負、業務委託等の契約書を交わしていても、実態として、事業に使用されている(=使用従属性がある)という実態が認められる者は、労働基準法上の労働者としての保護を受けることとなる。従って、正社員に限らず、パート、アルバイト、日雇、研修医、外国人(不法就労外国人を含む。)等であっても労働基準法の労働者となる。事業も、それが法人か個人か、営利か否か、外資系企業か否かということは関係ない。 使用従属性は、第一に従事する作業が指揮監督下にあるかということ(使用者が業務遂行につき具体的な指揮命令を行うこと、時間的・場所的拘束を行うこと等)、第二に報酬の労務対償性により判断すべきものとされており、その判断基準は労働基準法研究会報告及び労働者性検討専門部会報告に詳しい(ただし、労働組合法における「労働者」の意義は労働基準法のそれとは異なるので注意されたい。)。 また、作業の指揮監督性が弱いために労働者とまでは言えないものの、報酬の労務対償性が強いとされる家内労働者(いわゆる「内職」)については、家内労働法により、若干ながら労働者に準じた保護が図られている。 労働基準法の適用単位は、事業場である。事業場とは、一定の場所において相関連する組織のもとに業として継続的に行われる作業の一体を意味し、例えば、工場、店舗、支店、営業所などの事業単位を意味する。ただし、新聞社の通信部等規模が著しく小さいものについては直近上位の事業場に一括して取扱い、また、同一場所におけるものでも例えば工場内の診療所、食堂等のように、その管理が全体から明確に区別された部門については、これを独立した一事業場として扱うことにより法がより適切に運用できる場合においては、独立した一事業場として取扱うこととされている。 労働基準法の主たる名宛人は使用者であるが、使用者の範囲には、事業主はもとより、事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をするすべての者が含まれる。その一方で、昭和47年に労働基準法の一部を分離して制定された労働安全衛生法では、使用者を名宛人とはせず、労働者を使用する事業者という概念を用いて主たる名宛人とした。事業者とは、個人事業である場合はその事業主、法人事業である場合はその法人を指し、営業利益の帰属主体そのものである。 このように労働基準の履行義務は第一に労働者を直接使用する事業(使用者ないし事業者)に課され、労働法制一般は労働と請負とを峻別して構築されている。しかし、例外として、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者のうち最上位にある者には、下請事業者に対して労働安全衛生法の遵守指導等を行う義務を負わせている。特に、建設事業又は造船事業における元方事業者には、統括安全衛生管理義務が課され、関係請負人を集めた協議組織の運営や、現場を毎日巡視する等の管理を行わなければならない。建設事業又は造船事業を自ら行う注文者で最上位にある者は、安全な足場の設置その他の具体的な安全措置の責任を、事業者と共に負うこととされている。さらに、建設事業に関しては原則として元請負人が災害補償を行うこととされている。
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