人権擁護法案に対する批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/28 06:32 UTC 版)
「人権擁護法案」の記事における「人権擁護法案に対する批判」の解説
2002年(平成14年)3月、日本弁護士連合会は、小泉内閣が提出した人権擁護法案について、以下の諸点を指摘して、「仕組みを改めた上、出直すべきである」とする意見を表明した。 人権委員会は独立行政委員会とされるものの、法務省の外局とされ、法務大臣が所轄するうえ、必要十分な数の専任職員を置かず、その事務を地方法務局長に委任する点において、致命的な欠陥を有する。また、法案の内容は、1998年(平成10年)11月に日本政府が国際人権(自由権)規約委員会から受けた「警察や入管職員による虐待を調査し、救済のため活動できる法務省などから独立した機関を遅滞なく設置する」という勧告に、明白に違反している。 労働分野での女性差別や退職強要・いじめ等の人権侵害については、厚生労働省の紛争解決機関に委ねてしまい、特別人権侵害調査などの権限は厚生労働大臣(船員は国土交通大臣)にあるものとされ、この分野における救済機関の独立性は全く考慮されていない。 独立性の保障されていない人権委員会が、メディアに対し調査を行い、取材行為の停止等を勧告する権限を有することは、民主主義社会において不可欠である市民の知る権利を侵害するおそれが強く、極めて問題である。 また、2002年(平成14年)3月、日本ペンクラブは、人権擁護法案及び個人情報保護法案について、「個人の表現行為やメディアの取材・報道活動を規制し行政の監督下に置こうとする提案であり、憲法21条に保障された言論表現の自由及び国民の知る権利をそこなうおそれが強い」とし、同年5月には「いったん廃案としたうえで、議論を新たにやり直すこと」を求めた。 衆院議員の城内実は、月刊BAN(番)誌上の対談「人権擁護法案の危険性」にて以下のような問題点を指摘している。 人権委員会が、裁判所の令状もなしに立入検査や物件提出要求を行う事ができ、警察を上回る権力を持つ。 人権侵害の定義が曖昧で恣意的な運用が可能である。 人権擁護委員の選定基準に国籍条項が無く、日本国籍を持たない在日韓国人・朝鮮人を人権擁護委員に選任することが可能である。 人権擁護委員が弁護士会やバウネットジャパン、朝鮮総連など党派イデオロギーをもった団体によって構成されるおそれがある。 また産経新聞は、小泉内閣が提出した人権擁護法案を念頭に、以下の批判を展開した。法務省外局に作られる人権委員会は独立性が高くコントロールできる大臣がいない。偏った人物が委員長に選ばれれば、全ての市町村に配置される委員会直属の人権擁護委員が「どこかに差別はないか」とウの目タカの目で見回る監視社会になりかねない。特に問題なのは、委員会が「深刻な人権侵害」と認定すれば、勧告のみならず警察や検察ばりに出頭要請や立ち入り検査もできるようになることであり、何よりも救済対象となる「不当な差別、虐待」の定義が曖昧である等々。
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