五行 (文献)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/18 16:31 UTC 版)
『五行』(ごこう[1]、ごぎょう、拼音: )または『五行篇』は、中国戦国時代の子思学派の文献。長らく散佚していたが、馬王堆漢墓(紀元前168年埋葬、1973年発見)と郭店楚墓(紀元前300年頃埋葬、1993年発見)から発見された。
概要
2つの版の関係については議論が続いている[2]。馬王堆は帛書(馬王堆帛書)だったのに対し、郭店は竹簡(郭店楚簡)だった。「経」(本文)と「説」(本文の注釈・解説)からなる構成は双方とも共通している[3]。この「経・説」は伝世文献の墨弁などにも見られる。
本書のいう「五行」は「木火土金水」の五行説ではなく、「五常」に近い「仁義礼智聖」を指すが、五行説との関連を指摘する学者もいる[4][5]。儒家の『中庸』『大学』(『礼記』の篇)などと関連する内容であるが、馬王堆帛書では『老子』甲本と同じ巻に記されている[6]。
伝世文献においては、『荀子』非十二子篇で、荀子が敵対する思孟学派(子思と孟子の学派)を非難する際に、「五行」説という邪説をといた学派として非難している[4]。この箇所では「五行」説の内容が説明されておらず、長らく謎の学説だったが、『五行』が発見されると解明が進み、龐樸や杜維明ら多くの学者に注目された[4]。
参考文献
- Mark Csikszentmihalyi, Material Virtue: Ethics and the Body in Early China. 2005.
- Kenneth Holloway, "The Five Aspects of Conduct" 五行: Introduction and Translation. Journal of the Royal Asiatic Society, Third Series, Vol. 15, No. 2 (Jul. 2005), pp. 179-198.
- 近藤浩之; 西信康「先秦~秦漢代 (特集 学界時評)」『中国研究集刊』第56号、大阪大学中国学会、2013年。doi:10.18910/58716 。
関連文献
- 齋木哲郎『五行・九主・明君・徳聖 《老子》甲本巻後古佚書』東方書店〈馬王堆出土文献訳注叢書〉、2007年、ISBN 9784497207135
- 末永高康『性善説の誕生 先秦儒家思想史の一断面』創文社〈東洋学叢書〉、2015年、ISBN 9784423192719
- 西信康『郭店楚簡『五行』と伝世文献』北海道大学出版会〈北海道大学大学院文学研究科研究叢書〉、2014年、ISBN 9784832967991
脚注
- ^ 朱淵清 著、高木智見 訳『中国出土文献の世界』創文社、2006年。ISBN 978-4423450062。230頁。
- ^ 苟東鋒. 郭店楚簡《五行》釈義(2011年)
- ^ Holloway, 185.
- ^ a b c 近藤 & 西 2013, p. 9-12.
- ^ 武田時昌『術数学の思考 交叉する科学と占術』臨川書店、2018年、38;42頁。ISBN 9784653043751。(木火土金水の五行説が形成される「思想的基盤」の一つとして)
- ^ 李学勤「帛書《五行》与《尚書・洪範》」
「五行 (文献)」の例文・使い方・用例・文例
- 百ページの五行目に在る
- みだらな五行戯詩
- 陰陽五行説において,生まれ年による男女の相性
- 中国の戦国時代において,陰陽五行を説く人
- 陰陽五行説に基づく学問
- 陰陽五行説に基づく方術
- 中国の陰陽五行説に基づいてみた,家の位置や方角や構造などのよしあし
- 五行にあてはめた人の性質
- (五行説で二つのものが)対立し侵し合う
- 陰陽道において,木火土金水の五行を人の生年月日に配したもの
- 五行を陽の兄と陰の弟とに分けたもの
- 五行説において,対立する物同士が五行の運行に従って互いに他に克つこと
- 五行説において,土の性
- 陰陽五行説という,古代中国の世界観
- 五行の運行
- 金という,五行の一つ
- 五行説で,五行の運行に従って互いに他を生じること
- 五行説において,万物の生成や変化に作用する力のうち,火という要素
- 中国の五行で,5つの自然構成物の中の第5番目に属する水
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