中国の夢とは? わかりやすく解説

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中国の夢

読み方:ちゅうごくのゆめ
別名:中国の夢、私の夢中国的夢中国夢チャイナドリームチャイニーズドリーム中国的夢我的夢

中国習近平国家主席が、2012年11月国家主席就任以後提唱しているスローガン2013年11月現在に至るまで、氏自身のほか、政府国営メディアによっても盛んに用いられ様々な政策において目標として位置づけられている。

習近平氏は2012年11月に、「中国の夢」を「中華民族偉大な復活」と位置づける談話発表している。また、2013年3月談話では、「中国の夢」は「民族の夢であるとともに一人ひとりの中国人の夢でもある」と述べている。

「中国の夢」は抽象的な語であり、それが具体的に何を意味するかについては議論対象となっている。中国の経済面・軍事面での強化、すなわち「富国強兵」にあたるとす解釈や、国際社会での中国地位高めることを指しているという解釈が多い。また、「中国の夢」は米国の「アメリカンドリーム」と対になる言葉として捉えられることも多く中国米国と並ぶ世界の2大大国になろうとして米国対抗心向けていることのあらわれだとする解釈もある。

中国の夢

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/05 08:44 UTC 版)

中国の夢(ちゅうごくのゆめ、簡体字: 中国梦繁体字: 中國夢拼音: Zhōngguó mèng)とは、元人民解放軍の大佐(准将)の劉明福がアメリカンドリームに対抗するものとして提唱したイデオロギー。中国共産党習近平総書記が採用した。2010年に劉明福が同題のタイトルの書籍を出版し内外に知られるように成った。

中国共産党はナショナリズムの高揚とアメリカ合衆国を仮想敵国とする根拠としてこのスローガンを多用しており、米国では警戒されている。[1][2]

定義

「中国の夢」は「軍事力の米国との対等化[3]」「中華民族の偉大なる復興」と「一帯一路」、3つの要素から構成されている。かつて東は中国から西はローマ帝国に及ぶ広大なシルクロードを勢力下に置き、鄭和の艦隊がアフリカの角にまで進出して文化や経済と科学技術をリードした中国の栄光を取り戻す」という意が込められている[4]

提唱者の1人である劉明福によると、中国の軍事力をアメリカ軍と対等化させて地政学的に有利な環境を作り出す事だとしている[5]

中国共産党による公式的な解釈

中国最高指導者中国共産党総書記の立場である習近平が採用した中華人民共和国の思想であり、中国共産党第十八回全国代表大会以来、第5世代中央指導グループの執政理念でもある[6]

2012年11月15日、習近平は中国共産党中央委員会総書記に選出された半月後、11月29日に中国国家博物館の『復興の道』展を視察した際に、以下の発言を行った[7]

誰しも理想や追い求めるもの、そして自らの夢がある。現在みなが中国の夢について語っている。私は中華民族の偉大な復興の実現が、近代以降の中華民族の最も偉大な夢だと思う。この夢には数世代の中国人の宿願が凝集され、中華民族と中国人民全体の利益が具体的に現れており、中華民族一人ひとりが共通して待ち望んでいる。 — 習近平[7]

2013年3月14日、習近平は国家主席に選出された後、3月17日の第12期全国人民代表大会第一回会議の閉幕式で以下演説を行った[7]

小康社会の全面完成、富強・民主・文明・調和の社会主義現代化国家の完成という目標の達成、中華民族の偉大な復興という夢の実現は、国家の富強、民族の振興、人民の幸せを実現させるものである。中国の夢とはつまり人民の夢であり、人民と共に実現し、人民に幸せをもたらすものだ。 — 習近平[7]

2013年6月8日,習近平国家主席総書記)は当時のオバマ米国大統領に以下どおり説明した。[8]

中国の夢は国家の富強、民族の振興、人民の幸福であり、協力、発展、平和、ウィンウィンの夢でもある。それは、米国のアメリカンドリームや各国国民の夢とは共通している。 — 習近平[7]

2017年10月、中国共産党第十九回全国代表大会マルクス・レーニン主義毛沢東思想鄧小平理論三つの代表科学的発展観などのように「中国の夢」は党規約に盛り込まれた[9][10]

諸外国の反応

2017年12月15日に大韓民国文在寅大統領は韓国の国家元首として中国の北京大学で行った演説にて、「私は習近平主席から中国の度量の大きい夢を見た」、「法と徳を前面に出して包容するのは中国を大国らしくする基礎」、「韓国も小さい国だが、責任ある中堅国家として中国の夢に共にするだろう」と中国の夢への賛同演説を行った。 中央日報は中国が北朝鮮と共に韓国を滅亡させようとした朝鮮戦争を起こした歴史を忘却して賛美し、韓国が中国の夢に賛同する根拠が不明で事大主義な演説を行ったと批判した[11]

朝鮮日報は相手国を「大国」、自国を「小さな国」としてついて行くと表現した大韓民国大統領は初だとして、同じ表現をアメリカや日本相手に使用したら、韓国国内から「屈辱外交だ」と非難やデモが起こるだろうと指摘した。韓国人記者集団リンチ事件や文大統領による公式訪中で10回中2回も一人飯させられるなど、韓国は中国に冷遇を受けた。また、「朝鮮」という国名は明の太祖が選んだ名前で、その太祖は李成桂権知高麗国事(李氏朝鮮初代国王)が送った使臣を「面前に座る姿勢が悪い」として半殺しにして送り返した歴史がある。このように朝鮮の使臣を半殺しにされても声も上げられない明への絶対服従の時代を「両国が共に絢爛たる文化を開花させた時期」と演説で述べたことも批判されている[12]

2018年3月25日に朝鮮民主主義人民共和国金正恩委員長は最高指導者就任後の初外遊で訪中して北京人民大会堂で行った演説にて、「中国の国際的権威が日ごとに高まっていくことを自分のことのように嬉しく思う。中華の偉大な復興を成し遂げることを心から祈る」と述べたと朝鮮中央通信は報じた[13]。同年6月19日に再び訪中した際は「習近平同志と中国共産党の指導があるので中国人民は遠くない未来に中華の偉大な復興という中国の夢を必ず実現することになる」と北京の人民大会堂で演説したと朝鮮中央通信は報じた[14]。同年10月1日には国慶節にあわせて「中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現するための戦いで驚くべき成果を収めていることは自分のことのように嬉しい」と祝電をおくった[15]

書籍『中国夢』

中国人民解放軍国防大学教授の劉明福により2010年アメリカン・ドリーム簡体字: 美国梦繁体字中国語: 美國夢)をもじって出版された書籍「中国夢」が同題をもつ[16]。書籍『中国夢』は、中国人民解放軍国防大学教授(当時)の劉明福(Liu Mingfu)により2010年に出版された[17]。同書は21世紀において中国が「世界ナンバーワンの強国になること」を構想し、目的達成のために中国が取るべき手段や戦略について描いている[17]

本書をマイケル・ピルズベリーMichael Pillsbury)が著書『100年マラソン The Hundred-Year Marathon(邦題:China 2049)』の中で取り上げ、『中国夢』中国語原書において著者の劉が「アメリカ合衆国の弱みを研究し、中華人民共和国のプランに西洋が気がついたら、すぐに打倒できるよう準備しておくことが重要とほのめかしている[18]」と述べていること、また劉が「100年マラソン」という表現を用いてその夢の実現には、中華人民共和国成立年の1949年から100年かかるとしたことを指摘している[18]

脚注

  1. ^ Olsson, Jojje (2018年1月10日). “Racial Thinking in Modern China: A Bridge to Ethnonationalism?”. Taiwan Sentinel. 2021年3月9日閲覧。
  2. ^ Anderlini, Jamil (2017年6月21日). “The dark side of China's national renewal”. Financial Times. https://www.ft.com/content/360afba4-55d1-11e7-9fed-c19e2700005f 2021年3月9日閲覧。 
  3. ^ The China Dream: Great Power Thinking & Strategic Posture in the Post-American Era.” (2016年3月22日). 2025年4月5日閲覧。
  4. ^ “韓経:【コラム】中国の夢、日本の夢”. 中央日報. (2018年1月11日). https://japanese.joins.com/JArticle/237398 2018年8月26日閲覧。 
  5. ^ 『中国「軍事強国」への夢』 劉明福著” (2023年11月3日). 2025年4月5日閲覧。
  6. ^ 狼煙を上げた知識層の激烈「習近平批判」(下)清華大教授の「中国の夢」大否定:野口東秀 | 中国・台湾の部屋 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト”. 新潮社 Foresight(フォーサイト). 2019年3月5日閲覧。
  7. ^ a b c d e 習近平主席が「中国の夢」を語る - 北京週報 日本語版
  8. ^ 首会晤 习近平:中国梦与美国梦是相通的 - 滚动新闻 - 21CN.COM” (2013年6月11日). 2018年11月20日閲覧。
  9. ^ “中国共产党第十九次全国代表大会关于《中国共产党章程(修正案)》的决议”. 新華社. (2017年10月24日). http://news.xinhuanet.com/politics/2017-10/24/c_1121850042.htm 2017年10月27日閲覧。 
  10. ^ 中国共产党章程”. 人民網 (2017年10月28日). 2017年10月29日閲覧。
  11. ^ 【時視各角】韓国は小さい国?文大統領の演説文は誰が書いたのか| Joongang Ilbo | 中央日報”. s.japanese.joins.com. 2019年1月30日閲覧。
  12. ^ 文在寅大統領の訪中に韓国国民が驚いた理由”. WEDGE Infinity(ウェッジ) (2017年12月25日). 2019年1月30日閲覧。
  13. ^ “「初外遊、北京は当然」「中華復興、心から祈る」金正恩氏、訪中食事会であいさつ”. 産経ニュース. (2018年3月29日). https://www.sankei.com/article/20180329-GBC44R65UZNIBBOR34HGT4JGLE/ 2019年6月24日閲覧。 
  14. ^ “「中国は引き続き役割果たす」金正恩氏訪中、北朝鮮が詳細報道”. デイリーNK. (2018年6月20日). https://dailynk.jp/archives/112146 2019年6月24日閲覧。 
  15. ^ “金正恩委員長が国慶節で習近平主席に祝電=「まるでラブレター」と韓国紙”. Record China. (2018年10月3日). https://www.recordchina.co.jp/b650310-s0-c10-d0054.html 2019年6月24日閲覧。 
  16. ^ 我が道を行く習近平の「中国夢」の真意とは ダイヤモンドオンライン 2013年7月16日
  17. ^ a b 我が道を行く習近平の「中国夢」の真意とは ダイヤモンドオンライン 2013年7月16日
  18. ^ a b マイケル・ピルズベリー『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』日経BP社、2015年9月。ISBN 978-4822251048 

関連項目

外部リンク



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