ロイコ染料
ロイコ染料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/27 19:51 UTC 版)


ロイコ染料(ロイコせんりょう、ロイコはギリシャ語でleukos「白」から)とは、2種の化学種(その一方は無色)の間を変化できる染料である。可逆的変化としては熱、光あるいはpHによるものがあり、それぞれサーモクロミズム、フォトクロミズム、ハロクロミズムの例である。 不可逆的変化として典型的なものには還元または酸化によるものがある[1]。無色型は時にロイコ体と呼ばれる。
ロイコ染料は感熱式サーマルプリンターに用いる感熱紙やある種のpH指示薬の原理となる。
感熱紙は、見かけ上はサーモクロミズムであるが、ロイコ染料が熱で融解して顕色剤(固体酸性物質)と反応することで発色するので、原理的にはハロクロミズムである。
例
最も知られた例としては、硫化染料と建染染料の応用がある。そのうちインディゴは古典的な例である。これは特徴的な紫色を呈するが、水には全く不溶であり、つまり直接衣類には染められないということである。その代わり、還元すると水に溶けるが無色のインディゴ白(ロイコインディゴともいう)になる。インディゴ白に浸した布地を外に出すと、染料はすぐ空気中の酸素と結合し、不溶性で強く発色するインディゴに変化する。還元工程は典型的には亜ジチオン酸ナトリウム、ヒドロキシアセトンと水素、あるいは電気化学的方法[2][3]により行われる。
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インディゴ白 (ロイコインディゴ)
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インディゴ
オキサジンのスピロ体には無色のロイコ染料がある。これは分子中のオキサジンと他の芳香環部分が 、sp3混成スピロ炭素により分断されている。分子の一部のプロトン化、紫外線照射(フォトクロミズムを参照)や、その他の種類の変化を受けると、スピロ炭素とオキサジンの間の結合が切断されて開環し、スピロ炭素はsp2混成軌道を獲得して平面状になり、芳香環基が回転して、そのπ軌道は分子の他の部分と連なり、共役系が形成されて、可視光光子を吸収できるようになるため、着色して見える[1]。
他のロイコ染料の例としては、クリスタルバイオレットラクトンがある。これは、ラクトン体では無色またはわずかに黄色いが、低いpHではプロトン化され、強い紫色を呈する[1]。他の例では、フェノールフタレインやチモールフタレインがあり、これらは酸性から中性のpHでは無色だが、アルカリ性ではピンクまたは青になる。他の例には多数の酸化還元指示薬があり、これらは特定の電極電位で発色体と無色体の間の可逆的変化を受ける。
参考文献
- ^ a b c Chemistry and Applications of Leuco Dyes. Ramaiah Muthyala. 302 pag. Springer; 1997 edition. ISBN 978-0306454592
- ^ Božič, Mojca; Kokol, Vanja (2008). “Ecological alternatives to the reduction and oxidation processes in dyeing with vat and sulphur dyes”. Dyes and Pigments 76 (2): 299–309. doi:10.1016/j.dyepig.2006.05.041.
- ^ Roessler, Albert; Jin, Xiunan (December 2003). “State of the art technologies and new electrochemical methods for the reduction of vat dyes”. Dyes and Pigments 59 (3): 223–235. doi:10.1016/S0143-7208(03)00108-6.
関連項目
- ノーカーボン紙
- 指示薬
- フリクション (筆記具) - サーモクロミズムを利用し(感熱紙とは逆に)摩擦熱で消色するようになっている。
- Flexplay - DVD互換性のある光学ビデオディスクフォーマットの商標で、ロイコ染料を使って、意図的に限られた回数再生すると"磨り減る"ようになっている。
- Hypercolor - 熱で色が変わる衣類
ロイコ染料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/12 04:21 UTC 版)
ロイコ色素とは、有色と無色の間の色変化を示す色素を指す。サーモクロミック染料としては、このロイコ色素と他の化学物質の混合物が用いられる。これらは温度に応じて、無色のロイコ型と有色型の間の色変化を示す。染料が材料に直接塗布されることはほとんどなく、通常は、内部に混合物が密封されたマイクロカプセルの形をしている。代表的な用途はハイパーカラーファッション(色が変わるTシャツなど)である。クリスタルバイオレットラクトン、ベンゾトリアゾール(弱酸)、およびドデカノールに溶解した脂肪酸の4級アンモニウム塩(オレイン酸アニオンとミリストイルアンモニウムカチオンの塩など)を含むマイクロカプセルをファブリックに添加している。低温でドデカノールが固体の場合、ベンゾトリアゾールが酸として働き、クリスタルバイオレットラクトンのラクトン環を開環してカルボン酸体へと構造変化する。この開環体は紫色を示す。一方、これを加熱すると、ドデカノールが融解し、オレイン酸アニオンがベンゾトリアゾールのプロトンを引き抜くことで、マイクロカプセル内のpHが上昇する。クリスタルバイオレットラクトンは閉環反応を示し、無職のラクトン体へと変化する。この色変化は可逆であり、pHに依存するハロクロミズムでもある。 この方式のサーモクロミズムで最も一般的に使用される色素は、スピロラクトン、フルオラン、スピロピランおよびフルギドである。酸にはビスフェノールA、パラベン、1,2,3-トリアゾール誘導体、4-ヒドロキシクマリンなどがある。これらはプロトン供与体として働き、色素分子をロイコ型とプロトン化着色型との間で変化させる。より強い酸を用いると、変化が不可逆的になることがある。 ロイコ染料は、液晶よりも温度応答の正確性に乏しい。そのためおおよその温度(「低すぎる」、「高すぎる」、「適温」)のインジケータや、さまざまなノベルティに適する。それらは通常、他の顔料と組み合わせて使用され、ベース顔料の色と、ロイコ染料の非ロイコ型の色と組み合わされた顔料の色との間の色変化をもたらす。有機ロイコ染料は、幅広い色で、約-5 ℃(23°F)~60 ℃(140°F)の温度範囲で使用できる。色の変化は通常3℃(5.4°F)の間に発生する。 ロイコ染料は、温度応答の精度が重要ではないアプリケーションで使用される(例えば、ノベルティ、バストイ、フライングディスク、マイクロ波加熱食品の温度インジケータなど)。マイクロカプセル化により、広範囲の材料および製品で使用できる。マイクロカプセルのサイズは通常3~5 μm(通常の顔料粒子の10倍以上)の範囲であり、印刷および製造プロセスの調整が必要である。 ロイコ染料は、デュラセルのバッテリー状態インジケーターにも用いられている。ロイコ染料の層が抵抗ストリップ上に適用されて、その加熱を示し、バッテリーが供給できる電流量を測定する。ストリップは三角形状で、長さによって抵抗が変化するため、流れる電流の量に比例して長いセグメントが加熱される。ロイコ染料のしきい値温度を超えるセグメントの長さが色付きになる。 ロイコ染料は、紫外線、溶剤、高温にさらされると劣化する。約200~230 ℃(392~446°F)を超える温度では、通常、ロイコ染料は分解する。製造中は、わずかな時間であれば約250℃(482°F)まで耐える。
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