メディアの巻き込み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/03 17:40 UTC 版)
「ボグダノフ事件」の記事における「メディアの巻き込み」の解説
2002年に議論が始まった頃、膨大な量の記事が『ニューヨーク・タイムズ』、『ワシントン・ポスト』、『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』、『エコノミスト』、『The Chronicle of Higher Education』、『プラウダ』、『ディー・ツァイト』、『ル・モンド』紙などの全世界のメディアに掲載された。 ボグダノフ兄弟は2002年に Rayons X(『X線』)というテレビショーをフランスの公共放送フランス2で始めた。2004年8月には宇宙論を取り上げた90分間の特別番組に参加し、他の宇宙論上のシナリオと共に自分たちの理論を紹介した。また兄弟は自分たちの本を宣伝するために多数のテレビトークショーによく招かれた。フランスの主流メディアは、出版物上でもインターネット上でも、新たな論争をいくらか扱っていた。この話題を取り上げた放送局の中には Europe 1、Acrimed、Ciel et Espaceが含まれる。 2004年にボグダノフ兄弟は商業的成功作となる一般向け科学書 Avant Le Big Bang (『ビッグバン以前』)を出版した。その本は兄弟の理論を簡単にしたもので、ボグダノフ事件への自分たちの観点についても述べていた。その本とテレビショーの両方とも基礎的な科学の不正確さを批判された。批判者たちは Avant Le Big Bang の「黄金数 φ は超越数である」という記述(兄弟は編集上のミスプリントだと主張した)や、減少する数列の極限は常に 0 となるという仮定や、宇宙の膨張(en:Metric expansion of space)は太陽系の惑星をより離れ離れにさせるだろう、という記述を例として引用した。 Ciel et Espace の記者はロンドン大学の Shahn Majid にグリシュカ・ボグダノフの論文に対する彼の報告書についてインタビューした。後に Majid はユーズネットへの投稿でそのことに関して、Avant Le Big Bang の附記でグリシュカはそのインタビューを翻案することによって Majid の意見を故意に間違った形で引用した、と述べた。Majid はグリシュカの論文に対する彼の報告書のうちフランス語版では「許諾無き翻案の一部はボグダノフ兄弟による創作である」としている。ある文では英語の "interesting"「興味深い」がフランス語の "important"「重要な」に翻案されていたり、"draft [mathematical] construction"「暫定的な[数学的]枠組み」が "la première construction [mathematique]"「初めての[数学的]枠組み」となっていたりする。他の箇所では、付け加えられた単語が「ボグダノフが自分の暫定的結論を理解していない」ことを示していると Majid は記し、他にもそれぞれ "surestimation outrancière"「度し難い過大評価」で捉えた意味に変えられた部分を少なくとも10箇所説明した。Majid によれば元の報告書は、「とても劣った」学生がそれにも関わらず「博士号を得るために印象的なまでの決意のほどを」デモンストレーションしているのを表現したものだった。 加えて同じ附記には、博士研究員 Urs Schreiber による批判的かつボグダノフ兄弟自身も「非常に正確だ」と認めた分析が、結論への「念のために:私は上記のどれも正しい理由付けだとは思わない」という注記を除いた形で含められていたため、意味が批判から表面上の支持へと逆転していた。さらに、物理学者 Peter Woit が書いた「あなた方が量子群に関していくつかの新しく価値ある結論を得ることは確かに可能です」という礼儀正しいコメントが「あなた方が量子群に関していくつかの新しく価値ある結論を得ることは完全に確かです」と変えられ、ボグダノフ兄弟の本の附記に含めて出版された。 2004年12月、ボグダノフ兄弟は "The Mystification of the Bogdanovs" という題の批判的な記事の出版による名誉毀損で Ciel et Espace を訴えた。フランスの裁判所は2006年9月に兄弟の訴えを退け、2500ユーロを Ciel et Espace の出版元である天文協会に支払い、さらに法廷費用を償うよう命じる判決を下した。
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