ポリグラフ検査の強要
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 15:14 UTC 版)
「伊勢市女性記者行方不明事件」の記事における「ポリグラフ検査の強要」の解説
他方、別件逮捕後も辻出失踪事件に関する追及は続き、津署は1999年4月29日にXをポリグラフ検査にかけようとした。しかし、刑事が検査機器をXに装着させようとした際に、Xの両腕を強く握って揺さぶったため、Xは右肘内側に表皮剥離の障害を受けたという。翌30日に室木が接見室でこの傷を写真撮影し、その後逮捕監禁事件での公判で、別件逮捕の違法性と刑事による暴行を訴えた。 すると検察側はこれに対し、ポリグラフ検査の際に刑事の暴行があったことを否定するため、津署でのポリグラフ検査の状況を撮影したビデオテープを提出した。ところがそのビデオには、後にXから人権救済申立てを受けた日本弁護士連合会が強く問題視するほどの、多数の問題行為が含まれていた。その取調べ内容とは、 Xに対する暴行として、検査を実施しようとした際の、Xの右太腿内側への右平手での殴打1回 Xの組んだ脚の左側を、大声で「〔X〕、なんでや、お前。おぉ。ちゃんとはずせ、足ちゃんとせい」と言いながらの左手での払い 両手でXの両腕を掴み、「なにが拒否じゃぁ! 令状出てるんやないか、こらぁ!〔中略〕拒否もクソもあるかぁ! 能書きたれとんなよ、お前、いつまでも」などと怒鳴りながら、幾度もXの身体を揺する 弁護人との接見妨害として、ポリグラフ検査を拒否できるか室木に確認したいと求めるXに対し、「〔X〕、お前、弁護士っちゅうのはな。関係ないわ」「後で聞きゃ、えぇやないか」「弁護士はオールマイティーと違うんやで」「法的にはできないんだよ。もう」との発言 黙秘権に関する虚偽の説明について、「黙秘っちゅうのは、私が犯人ですと認めてるわけやぞ。〔中略〕都合の悪いことだけは黙秘してもよろしいよっちゅう規定やぞ。それを黙秘しますっちゅうことは、都合の悪いことだらけですっちゅうことやぞ」「自分がしゃべりたないことしゃべらんて、そんな黙秘権はないわさ」などとの、黙秘権の行使によってXが犯人であると認定されるかのような偽計を伴う威圧 ポリグラフ検査に関する虚偽の説明について、「今ここに、白か黒かはっきりしてもらえる機械与えてもろとんやないか。それを、拒否するちゅうんは黒としかないやねんからな」「お前は自分で蹴ったんやぞ。最後の道を。だから今から、白っちゅうよな言葉使うなよ、お前。の。証拠はないけれども、真っ黒んなったんや、今の時点から。よう覚えとけよ。俺自身のも。の。わかった。真っ黒なんやで。前よりいっそう黒なったんやで。もう限りなく黒に近い黒や」などとの、ポリグラフ検査によってXの犯人性が確定するわけでも、検査を拒否したとしても犯人と見做されるわけでもないのに、それが事実であるかのような偽計を伴う威圧 その他の虚偽の説明について、「君は、義務があるやないか。逮捕されとんのやで」「逮捕された被疑者はどんなことがあっても取り調べ拒否できひんやないか。弁護士にそのぐらい聞いとるやろが、え。応じる義務があるて、書いてあるやろが」「被せられてる容疑が殺人やねんから」との、Xが辻出失踪事件で逮捕されているかのような偽計を伴う威圧 「どって証明するん。どこで証明するんにゃ。伊勢の事件をどって無実証明するんや。え。どって証明するんにゃ。アホみたいなことばっか言うなよ。どこで証明するの」との、Xの側に無罪の立証責任があるかのような偽計を伴う威圧 「一〇年勝負してって、警察と一〇年勝負して負けんのお前に決まっとるやネいか、ほんなもん。勝った奴おらへんぞ、ほなもん。ヤクザでも尻尾巻いて逃げて行くんやないか、警察と勝負して。一〇年つきまとわれて見ろ。どんなにヤなもんか、お前、わからへんやないか」などとの威圧 「令状出とんのやで何してもええんやで、鑑定処分やて。必要があったら切り刻んでもええんやで。チンチンの中へ棒突っ込むこともできるんやないか。え」との、鑑定処分が無制限に行えるかのような偽計を伴う威圧 というものであった(室木は、検察側が「適正な取調べが行われた証拠」としてこのビデオテープを提出してきたことに恐怖を覚えた、と述べている)。 また、日弁連人権擁護委員会は4月29日のビデオテープ内容のみならず、 2月17日の調べにおける、「弁護士が余り黙秘権を使えと被疑者に言うと、〔中略〕弁護士会から追放になる」などとの、偽計を伴う威圧 翌18日の調べにおける、Xが室木から説明された黙秘権の意味について「弁護士が黙秘権についてそんなことを言うと、弁護士も大変なことになる」などとの、偽計を伴う威圧 同18日の調べにおける、捜査過程で入手したXの裸の写真を提示しての、「この写真を証拠に出せば、裁判官はお前が変態だという心証を持つぞ」との威圧 という捜査手法も問題視している(しかし三重県警本部はこれらについて、取調べ内容はいずれも通常の説得行為、または事実の告知の範疇にある、として違法性を否認している)。
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