ペルスヴァル続篇との照合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/14 16:10 UTC 版)
「ゴラグロスとガウェイン」の記事における「ペルスヴァル続篇との照合」の解説
上述したように、『ゴラグロスとガウェイン』の2つのエピソードとよく似た展開の挿話は、『聖杯の物語』の第一続篇 に見出すことができる。『ペルスヴァル第一続篇』の第IV部は、「傲れる城」(仮訳)の部で(これが中英詩のゴラグロスの城に相当する)、その城に捕らわれたジルフレ(グリフレット卿)を奪還しようとするアーサー王たちの冒険である。 だが肝心の目的地以前に、『ゴラグロスとガウェイン』とよく似た食料補給の冒険がおきる。内容は次のようなものである: 道中で疲れはてた王のために、ケイ卿は、食べ物を求めて、メヨラン/メリオランの君主の城ちかくの屋敷に無断で立ち入る。そして小人がクジャク肉の丸焼きにしているのみつけ、「誰か人はいないか」などと聞く。相手の無愛想さに殺意さえ覚えたケイは、「そなたのような小人には不釣り合いであるから、その見事は俺様が夕餉にちょうだいする」の調子でしゃべるので、ついに小人は憤慨し、「出て行け、さもないと酷い目に遭うぞ」と反発。ケイは小人を継ぎ飛ばして暖炉を支える柱に打ちつけたところ、その主人がやってきて見つかる。 主人の質問に、ケイ卿は相変わらずの無礼な応答をする。主人は、「わが家のしきたりでは、食べ物を求める者を拒むことはしない」、と言って、クジャクの丸焼きを(おそらく焼き串についたまま)手に取り、ケイの首を殴打して一生消えない火傷の跡をつける。ケイは、食料調達の失敗をアーサー王に報告するが、ガウェイン卿の下手に出るような礼儀正しさに、主人(美丈夫イデールという)は感服し、アーサー王の一行は歓待を受ける。(Potvin 編本第III巻16331-16624行; 1530年散文版103b-105葉)。 やがてアーサー王の一団は、ブランデリス Brandelis を案内役として「傲れる城」に到達する。前述したとおり、ここが英詩でのゴラグロスの城に当たるわけであり、何でもよく説明できるブランデリスの役は、英詩ではスピナグロスが務めている。以降の展開は次のとおりである: アーサーたちがやってくると、目的の城の鐘が大きく鳴り響き、周囲付近の騎士らが集結し、3000の軍旗が城に翻った。だが大がかりな攻城戦の様相とは裏腹に、両方の軍は、毎日一人ずつの代表の騎士を差出し、ジョスト(槍試合)を戦わせることになるのだった。 初日、アーサー側の一番乗りは、ルーカン献酌侍臣(執事)であったが、敵城の相手をみごと落馬させ、馬を奪って戻り、勝利した... かに見えた。ところが、ブランデリスは、それでは勝負の決着にはならない、と残念がる。もし相手を捕虜として連行しておれば、敵は敗北を認めて開城していたのだという。ルーカンは試合に復活するが、相手の交代選手に敗北し、グリフレット卿と同じ監獄につながれる。翌日のブランデリスは勝利をおさめるが、三日目ののケイ卿は、接戦するも、場外ルールで敗退する)。 試合はいったん休止になるので、アーサーたちは狩猟に出かけ、ガウェイン卿は、木の根元に座り込んだ騎士を発見する。話しかけても反応しないので、持ち上げて運んで王に采配を仰ごうと決めるが、その騎士は、ほっといてくれ、死なせてくれと怒り出す。わけのわからずまま、ガウェイン卿はそこを去るが、今度はその騎士と関係ありの淑女と出会い、事情が明らかになってくる。淑女は、騎士とは許嫁なのだが、挙式の日に間に合わなかったので、騎士が悲観して命を落とすのではないか、と心配しているのだ。ガウェイン卿は、その騎士なら無事である、と淑女をなだめる。ところが識者のブランデリスに事の次第を話すと、なんとその騎士は、「富める傭兵」(仮訳) Riche Soudoier といって、「傲れる城」の城主その人であるという。 槍試合が再開し、4番手イヴァン卿も勝利。次の日は、いよいよ城主「富める傭兵」じきじきのお出ましということなので、ガウェインが相手を願い出る。 結局ガウェインが勝利し、アーサー王たちは目的(グリフレット卿の奪還)を果たすのであるが、英詩『ゴラグロスとガウェイン』と同様、ガウェイン卿は「富める傭兵」に頼まれて負けたふりをするので、アーサー王は、しばらく甥の安泰についてやきもきすることになるのである。英詩では単に相手の面子をたもつでけに勝ちをゆずっているが、『ペルスヴァル第一続篇』では、「富める傭兵」が、もし自分が敗北したなどと、愛する人が知ってしまえば彼女は自害して果てるだろうと、愛人の淑女の命がかかっている。 (Potvin編本 16331-624, 18209-19446行、Bryant要約、Madden要約に拠る。Madden要約ひとつをとっても、上よりもかなり詳述しているが、ここでは省いた)
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