ストラクチャード・ファイナンスの金融技術
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「ストラクチャード・ファイナンス」の記事における「ストラクチャード・ファイナンスの金融技術」の解説
ファイナンスの形式転換を行う技術には、大きく分けてSPV介在型と直接型の2つがある。1.ファイナンスの形式転換SPVを介在させて、資金調達者とSPVが形式転換前の形態でファイナンスを行った以上、SPVと投資家との間はこれと異なる形態でファイナンスを行う手法がある。また、SPVを介在させることにより倒産隔離が可能になるため、高い格付けを取得するなどのクレジット・エンジニアリングが併用されることが多い。 直接型 これに対して、SPVを介在させないで主として法的な枠組みの工夫で転換をするのが直接型である。ファイナンス・リースやローン・パーティシペーションがこれに属する。少し毛色が異なるが、株式や永久劣後債のように期限のないエクイティ型(株主資本)の商品を、直接型で実質的に債券に転換するものがある。1.MMPS(Money Market Preferred Stock)株式が実質的にCP(Commercial Paper)に転換される。税法上益金不算入の制度が存在しているので、税後の配当利回りが表面的な配当利回りよりも高くなる場合があり、この特性を生かした商品が1980年頃に米国で一時普及した。最近では投資家側の税メリットを利用した低利調達という側面よりは、実質的にCPでありながら自己資本にカウントされる優先株式であるという特性により、負債比率改善等の効果もった財務商品として位置付けることもある。典型的なものとしては、税法上株式として認められる最短期間(米国では49日)語に償還可能な優先株式を、不動産を保有しているという理由で赤字が見込まれる子会社等が発行して、投資家の益金不算入制度利用後の税後利回りがCPよりは高いことを売り物に、49日ごとに投資家に入札させてこれを売りさばく。赤字会が発行する理由としては、そうでないと発行体は金利収入があり、課税所得が発生してしまうことになる。また、赤字会社の優先株式であるので、何かしらの信用補填なしには誰も投資しようとしない。そこで発行体が親会社に転貸する貸出金を高格付けの銀行が保証し、これを裏付けに優先株式に高い格付けを取得する。こうして優先株式が事実上CP調達に転換されるわけである。 2.VRN型永久債(Variable Rate Note)永久劣後債を3ヶ月程度の変動金利建てとしたうえで、利払い日こごとにディーラーに売る権利を可能としたうえで、毎回入札方式(競り下げるのでDUTCH ACUTIONとよばれる)で値決めをすることによって短期商品に転換したVRN型となる。 キャッシュフローの再構成 キャッシュフローの再構成には、デリバティブを利用する方法と仕組みそのものによる方法の2種類がある。 1.デリバティブを利用する方法固定金利の原資産を変動金利にしたり、変動金利の原資産にキャップ(金利を原資産としたオプションの種類の1つで、変動金利の上限を定めることのできるオプションをいう)やフロアー(金利を原資産としたオプションの種類の1つで、変動金利の下限を定めることのできるオプションをいう)をつけたり、単純な利付債を株価連動にしたりといった場合、デリバティブを利用することが多い。この古典例がリパッケージ債である。具体的にはSPVがスワップやオプション等のデリバティブを利用して原資産のキャッシュフローを変換する。一般に、スキームに関与する主体が複数の場合に、スキーム全体の格付けがこれに関与している最も格付けの低い主体の格付けを超えることができないという原則をウィーク・リンクという。最近では仕組みが多様化・複雑化してきいることもあって単純に当てはめられないケースがあるが、リパッケージ債や単純な証券化の仕組みなどでは依然として、重要な原則である。 2.仕組みそのものによるキャッシュフローの再構成モーゲージのyほうに、そもそも原資産のキャッシュフローが複雑でスワップが利用できない場合や、カウンターパーティの信用力を仕組み全体の信用力に影響させたくない、あるいは信用力を操作する観点から優先・劣後スキーム等をとりたい等の事情がある場合、SPVを介在させてキャッシュフローを直接再構成する必要がある。また、CMO(Collateralized Mortagage Obligation)のようにキャッシュフローを分解して異なる商品を作り出すような場合、SPVを介在させて分解するほうがはるかに簡単である。株式を信託したうえで、投資家受益権を元の株式と同一にせず、例えば、第一受益権は配当のみを受領し、第二受益権はキャピタルゲインのみを受領するように変形した株式ストリッピングがあげられる。
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