コーポレート・ガバナンスの主権者とは? わかりやすく解説

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コーポレート・ガバナンスの主権者

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/22 05:15 UTC 版)

コーポレート・ガバナンス」の記事における「コーポレート・ガバナンスの主権者」の解説

コーポレート・ガバナンスの主権者は誰か誰が企業統治するのか)という問題は、「会社企業)は誰のものか」という問いとも置き換えられ日本など多く議論呼んできた。 会社法上は、(1)出資者である株主取締役選任有し最終的に事業の運営支配していること、(2)事業活動によって生じ利益株主帰属することの2点をもって株式会社所有者株主であると解釈されている。しかし、現実企業所有イメージにおいて、誰を企業所有者主権者として認めるかは必ずしも一様ではなく敵対的買収などの局面株主取締役選任実質的に行使することに対し抵抗感持たれる場合もある。 アメリカでは多くの人が、企業株主のものであるというイメージ抱いている。これに対しドイツでは、企業株主従業員ものとい二元的所有イメージ強く日本では従業員株主顧客社会全体ものとい多元的なイメージ強くその中でも特に従業員ものとい考え方をする人が多いとされる1990年代初頭日米英仏独の経営者管理者対象行われたアンケート調査においては、「企業所有者株主である。株主利益最優先されるべきである」という命題と、「会社利害関係者全体長期的利益増進するために存在する」という命題それぞれに対し肯定的な回答をした経営者管理者割合次表のとおりであった各国企業所有イメージ アメリカ合衆国 ドイツ 日本株76% 17% 2.9% 利害関係者全体24% 83% 97% 日本で、従業員会社所有しているという独自のイメージ作り上げられてきた背景には、終身雇用年功序列という日本型雇用慣行がある。日本年功賃金制度の下では、従業員若年期生産性よりも低い賃金しか受け取れず、熟年期にその見返りとして生産性より高い賃金支払われ最終的に退職金という形で精算される。このような賃金後払い仕組みにより、従業員は「見えざる出資」、すなわち自分人的資本形成への投資強いられている。したがって従業員は、長く同じ会社勤務することによって投資回収する必要があり、従業員会社に対して所有意識を持つに至ったのにはそれなりの必然性があると指摘されている。こうした考え方は、日本における企業買収(特に敵対的買収)への強いアレルギーにもつながっており、王子製紙北越製紙対す敵対的買収不成立受けて行われた経営者対すアンケートでは、「日本の文化なじまない」という理由日本敵対的買収定着しいとした回答多かったこのような企業イメージ対応して1990年代後半から日本主張され始めたのが、コア従業員主権論であった。これは、会社は「コア従業員」、すなわち長期的に会社コミットする従業員従業員の中から選出される経営者含みパート派遣社員含まない)のものであるという考え方である。その理由として、(1)コア従業員の方が株主よりも企業競争力への貢献度高く、かつ希少性も高い(会社特殊的な技術・知識を有しており、代替性が低い)、(2)コア従業員の方が会社へのコミットメント強く、かつ長い資源長期わたって提供し続け意図持っている)、(3)コア従業員賞与への業績反映というリスク、そして倒産による解雇という重いリスク負担しているのに対し株主リスク分散投資により軽減することができる、という3点指摘する。 これに対し株主主権論からは、(1)付加価値形成に最も貢献している者が会社監視に当たることが適切とは限らない――従業員球団選手例えれば、選手監督経営者)を選ばせると、選手はその監督の下で優勝できる可能性よりも「その監督自分使ってくれるか」を優先するインセンティブが働くため、外部からそれを監視する必要がある――、(2)(a)短期的にしか株式保有しない株主であっても長期的な利益株価予想して株式売買している、(b)また従業員会社へのコミットメントが強いことは、むしろ過大なマーケット・シェア拡大多角化によるポスト増を求め方向働き一方で雇用確保のため不採算部門からの撤退難しくし、企業変革遅らせる(3)(a)実際に従業員付加価値から最初に分配受けており、従業員債権者分配した後に残らなければ株主分配を受けることができない(b)解雇というリスクについては、解雇による生涯賃金減少分を補填するような割り増し退職金制度設けることにより、従業員技術習得意欲維持することが可能であり、また国全体雇用を守るのは政府の役割である、などと反論されている。 もっとも、「会社は誰のものか」という極端な議論誤解を生みやすい指摘されている。株主主権論立場からも、従業員に対して正当な報酬支払なければ、働く意欲低下し生み出される付加価値減少することから、コア従業員の持つ会社特殊的人的資本貢献適正に評価し付加価値分配することが必要であるとされており、株主だけが会社成果丸取りすることを主張するものではないと考えられている。

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