コーポレート・ガバナンスの目的
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「コーポレート・ガバナンス」の記事における「コーポレート・ガバナンスの目的」の解説
菊澤 (2004) は、コーポレート・ガバナンスをめぐる議論を、(1)倫理に関わる問題と捉えるか、効率性に関わる問題と捉えるか、(2)広く社会全体(多様なステークホルダー)に関わる問題と捉えるか、株主や債権者といった投資家と企業との関係として捉えるかによって分類し、次のように整理する。 コーポレート・ガバナンス問題の整理企業と社会の問題(広義のガバナンス問題)企業と投資家の問題(狭義のガバナンス問題)倫理問題社会倫理問題(正当性の問題) 企業倫理問題(正当性の問題) 効率問題社会効率問題(国民経済政策の問題) 企業効率問題(企業政策の問題) 各国で1960年代から問われ始めたのは、公害等の社会倫理問題であったが、次第に、コーポレート・ガバナンス問題として問われる問題は、企業倫理問題(企業不祥事の防止)、そして企業効率問題(企業価値・業績の向上)、あるいは両者の複合問題へと移ってきたと指摘されている。 コーポレート・ガバナンスの必要性について、経済学のプリンシパル=エージェント理論(エージェンシー理論)は、次のように説明している。すなわち、株式会社においては、所有と経営が分離しており、株主は直接経営を行わず、経営者に経営を委任している。このような依頼人(プリンシパル)と代理人(エージェント)の関係においては、両者の利害が必ずしも一致しないこと(利害の不一致)、両者の持っている情報が同じではないこと(情報の非対称性)から、代理人が依頼人の利益を無視して自己の利益を追求するというモラル・ハザードが発生する可能性がある。例えば、経営者は、経営者としての名声を追求して、贅沢なオフィスを設けたり、不必要に多くの従業員を雇用したり、部下にポストを与えるために非効率的な事業に投資したりする可能性がある。そこで、このような問題を解決するために、依頼人である株主の利益が守られるよう、代理人である経営者を監視、規律するための制度として、コーポレート・ガバナンスが必要となる。 もっとも、このようなプリンシパル=エージェント関係は、経営者と株主との間だけでなく、経営者と債権者、従業員、顧客、取引業者等の様々なステークホルダー(利害関係者)との間にも発生するものである。したがって、コーポレート・ガバナンスは、狭い意味では、「企業と投資家(特に株主)の問題」であるが、広い意味では、これらのステークホルダー全体の利益を守るための「企業と社会の問題」と捉えることも可能である。
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