エンジン各部の名称と構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 02:16 UTC 版)
「ジェットエンジン」の記事における「エンジン各部の名称と構造」の解説
エンジンの吸気口からの空気を回転しながら圧縮する圧縮機、圧縮機からの圧縮空気に燃料を噴射して高温・高圧の燃焼ガスを発生させる燃焼室、燃焼室からの高温・高圧の燃焼ガスを受けて回転するタービンの3つで構成されており、タービンは前方にある圧縮機に軸を介して繋がっており、そのため、圧縮機はタービンと一緒に回転する構造となっている。 ターボジェットエンジンまたはターボファンエンジンの主要構成部分の圧縮機・燃焼室・タービンからなる部分をガスゼネレータまたはコア・エンジンと呼ぶことがある。 ジェットエンジンは、エンジンの整備性を良くするため、エンジン本体がモジュール構造と呼ばれる、いくつかのセクション単位に分割が可能な構造となっており、必要に応じて欠陥のあるモジュールを交換するだけで修理が容易な構造となっている。そのため各モジュールは完全な互換性がある。そのため、エンジンの外部から位置の指定や確認ができるように、エンジンのケース外側にあるフランジには、エンジン本体の最前部から後方に向かってアルファベット順にフランジ名称が識別のために付けられている。 ジェットエンジンは直接高温の燃焼にさらされる燃焼室・タービン・排気ノズルの各セクションを纏めてホット・セクションと呼び、空気入口・ファン・圧縮機・アクセサリードライブ・ファンのからの空気だけが通るバイパスの各セクションを纏めてコールド・セクションと呼んでいる。ホット・セクションでは高温による大きな熱応力を受けるため、構成部品に耐熱性の優れた材料が使用されており、整備でも部品の寿命や劣化の配慮が必要となってくる。 ジェットエンジンの軸に使用されている軸受は、軸方向と径方向の荷重を受ける玉軸受と径方向の荷重を受けるころ軸受があり、圧縮機やタービン・ローターでは前者がそれ以外の場所では高温による熱膨張を避けるために後者が使用されている。また、エンジンの振動を減少させるために、軸受外輪と軸受支持部との間に適当な隙間を開けて、そこに圧力油膜を形成して、軸受部の支持剛性を下げて共振点をずらし、振動を吸収させて振動の振幅の60-80%を減衰可能としたオイル・ダンプト・ベアリングまたはスクイズ・フィルム・ベアリングと呼ばれる油膜支持式軸受構造も採用されている。エンジン運転中では軸受部に高速回転による高荷重や高温度を受けているので、エンジン滑油系統からの高圧油による強制潤滑冷却を受けているが、軸受外部の滑油漏れ防止のためと外部から高温のガスが滑油に入り込まないようにシールが装着されており、黒鉛製のリングを軸のローターのリング溝に軸方向へ並べる形に入れて軸のステーターと共に側面と外周面でシールするカーボン・リング・シール、黒鉛製のリングを軸のステーターのリング溝に入れ、その側面を軸のローターに当てる形とし、軸方向の側面をシールするカーボン・フェイス・シールがタービン軸受に使用されており、軸のローターとステーターの間に金属製のナイフエッジを設けて、その部分を低圧とし、それにより圧縮機からの高圧空気を導くことで、滑油が外部に漏れないようにしたラビリンス・シールが圧縮機軸受に使用されている。また、ジェットエンジン本体での軸受の数は構造により異なるが、軸受の位置においての名称は、ジェットエンジン本体前方から後方にかけて最初の1番目をNo.1とし、次の2番目をNo.2とした順序で呼ばれている。 ジェットエンジンは、内部で連続燃焼を行うため、ホット・セクションの中心部は非常に高温となり、構造材料の耐久性の維持や滑油の炭化防止のため冷却が必要となる。冷却は圧縮機からの抽気(ブリードエア)による空気で行われるが、冷却空気の温度は、高すぎると冷却効果がなく、低すぎると構造材料に熱応力歪を発生させて材質の劣化を招くため、冷却場所の温度に応じて適度な温度差で行われなければならない。一般では、高圧圧縮機のローターやその軸受部のシールの圧力維持には、低圧圧縮機からの抽気による空気が使用され、燃焼室・タービン入口部のタービンノズルガイドベーン・タービン動翼・タービンディスクの高温部には高圧圧縮機からの抽気による空気で行われる。
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