アラブ世界におけるユダヤ人
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「アルベール・メンミ」の記事における「アラブ世界におけるユダヤ人」の解説
アルベール・メンミは自伝的小説を多く著している。アルベール・カミュが序文を書き、1953年に発表された処女作『塩の柱 ― あるユダヤ人の青春』は、フランス語マグレブ文学の古典とされ、アラブ世界におけるユダヤ人のアイデンティティ、個人とユダヤ人共同体および共存・共生する他の共同体の関係を追究する作品である。 1962年発表の『あるユダヤ人の肖像』をメンミは当初、他の自伝的小説と同じように、個人史として書き始めた。「ユダヤ人としての自分自身、私の人生におけるユダヤ人であることの意味を理解する」ためであった。だが、彼個人の経験が他の多くのユダヤ人の経験に重なり、「個人史を越えたユダヤ人共通の運命」があることに気づき、このユダヤ人に共通の運命・歴史を語る必要があると考えるようになった。 メンミはアラブ世界におけるユダヤ人の特殊性を異質性嫌悪 (ヘテロフォビア(フランス語版)) とユダヤ性という概念によって分析し、人種差別、植民地化および依存という概念を再定義した。「異性愛嫌悪」とも訳される異質性嫌悪は、メンミにとっては「差異を根拠にしたあらゆる他者の拒否」(メンミ『人種差別』)であり、人種差別とは「現実の、あるいは架空の差異に、一般的、決定的な価値づけをすることであり、この価値づけは、告発者(人種差別主義者)が自分の攻撃を正当化するために、被害者を犠牲にして、自分の利益のために行うものである」(メンミ『人種差別』)。彼は、「私はアラブ諸国に生まれ、アラブ諸国の人々と友情、愛情を保ち続け、しかもそれが堅固なものだと信じている。私が最も自然に自分に合っていると感じるのは、アラブ諸国におけるその光、匂い、果実、人間的接触の質なのである」と語る一方で、アラブ諸国におけるユダヤ人は「敵意をもつ環境におけるマイノリティ」であり、アラブ人との共生は「恐怖、不安」であるばかりでなく、「脅威に満ちたものであり、実際、その脅威は繰り返し現実のものとなった」と書いている(メンミ『ユダヤ人とアラブ人』)。しかも、独立後のチュニジアがムスリム・アラブ国家に変わっていく過程でユダヤ人が排除された以上、「ユダヤ人の抑圧に終止符を打つための運動」は、ユダヤ人国家を建設するシオニズム以外にはあり得ないと考えるようになった(メンミ『ユダヤ人とアラブ人』)。
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