双対変換とは? わかりやすく解説

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双対変換

読み方そうついへんかん
【英】:dual transformation

概要

双対変換は, 2つ対応する双対空間の間の1対1変換で, 双対双対元に戻るという性質をもつ. もっとも基本となるのは, 点と超平面の間の双対変換である. その変換代表的なものが, 極変換である. 双対変換により, 点集合問題超平面問題扱いやすい方で解くことができる. 2次元の場合, 線分を双対変換したものは, 領域になる. ハフ変換, 共役関数共役変換も双対変換である.

詳説

 ORの様々な理論において,双対性重要な役割を果たす.これは計算幾何でも同様で,特に双対性対応する変換によって,ある問題別のよりわかりやすい問題変換して解くことができる.詳細については, [1, 2, 3]参照.

 まず,d\, 次元空間2次曲面に関する極変換について述べる.d\, 次元空間超平面は,


a_1x_1+a_2x_2+\cdots+a_dx_d+a_{d+1}=0\,


表されるd\, 次元空間2次曲面は,(d+1)\times (d+1)\, 対称行列A\, (d+1)\, 次元ベクトル \boldsymbol{x}=(x_1,x_2,\ldots,x_d,1)^{\top}\, 用いて\boldsymbol{x}^{\top} A \boldsymbol{x}=0\, 表せる.点p=( \boldsymbol{p})=(p_1,p_2,\ldots,p_d)^{\top}\, に対して方程式


\boldsymbol{x}^{\top} A( \boldsymbol{p},1)=(x_1,x_2,\ldots,x_d,1)A
(p_1,p_2,\ldots,p_d,1)^{\top}=0\,


をみたす超平面D(p)\, 対応させる逆に定数ベクトルp=(p_1,p_2,\ldots,p_d)^{\top}\, 用いて \boldsymbol{x}^{\top} A( \boldsymbol{p},1)=0\, と書ける超平面h\, に対してD(h)=p\, 対応させる明らかにD(D(p))=p,D(D(h))=h\, であり,この変換D\, 双対変換である.点p\, 超平面D(p)\, (点D(h)\, 超平面h\, ) は,2次曲面 \boldsymbol{x} A \boldsymbol{x}^{\top}=0\, に関する面となる.2次曲面としては,球や面がよく用いられる

 以下,簡単のため2次元の場合述べる.放物線y=(x^2)/2\, 用いれば,点p=(p_x,p_y)\, 対す極線D(p)\, y=p_xx-p_y\, となる.y\, 軸に平行でない直線h\, は,傾きp_x\, y\, 切片のマイナスのp_y\, 用いてy=p_xx-p_y\, 表せh\, D(h)\, は点(p_x,p_y)\, となる.p\, 放物線上にあるとき,p\, での接線D(p)\, となる.

 この変換は,接続関係(上下関係)を保存する.すなわち,点p=(p_x,p_y)\, 直線h\colon y=q_xx-q_y\, およびその双対変換D(p)\colon y=p_xx-p_y\, D(h)=(q_x,q_y)\, に対してp_y+q_y\, p_xq_x\, 大小関係に応じて以下のことが成立する

(a)p\, 直線h\, 上にあるとき,およびそのときのみ,点D(h)\, 直線D(p)\, 上にある(p_y+q_y=p_xq_x)\,
(b)p\, 直線h\, 境界とする上半平面(下半平面)にあるとき,およびそのときのみ,点D(h)\, 直線D(p)\, 境界とする上半平面(下半平面)にある.

 接続関係(上下関係)の不変性は,2次曲線として円や楕円用いて変換定義して成立し一般d\, 次元空間でも成立する.点の集合それだけで扱うとばらばらで考えにくいため,アルゴリズム的にも上下関係など関係式がわかるように,この双対変換を適用して直線(超平面)の集合からできる平面(空間)の交差図形利用することがしばしば行われる.このとき,双対変換で1対1対応するとともに,この関係式保存され直線(超平面)が交わって空間分割することから問題がとらえやすくなるこのような直線(超平面)による平面(空間)の交差図形アレンジメントと呼ぶ.アレンジメント1つセル対応する凸多面体についても,ファセットを含む超平面定まる半空間の交わりとしても,端点凸包としても表せる.これは双対性現れで,すべての次元構成要素であるフェイス全体がなす束でも,対応するの上下を反転すれば同じとなる双対性成り立つ.したがって双対性から半空間の交わり求めることと,点集合凸包求めることとは,アルゴリズム計算量観点からは同じである.

 2次曲線として円を用いた場合極変換も重要である.このとき,原点以外の(p_x,p_y)\, 直線p_xx+p_yy-1=0\, 変換される.この直線は,原点からの距離が原点と元の点(p_x,p_y)\, の距離の逆数になっており,原点と元の点を結ぶ直線に垂直で,原点に関して元の点と同じ側の直線となる.

 円に関する極変換変形反転がある.反転は,原点以外の(p_x,p_y)\, 上の極変換施した直線への原点からの垂線の足に対応させる反転により,原点を通る円は直線変換される.この変換をもう1次元高い空間で行うと,球と平面の間の変換得られる.たとえば、(0,0,1)\, 中心とする半径1の球面基本となる二次曲面として採用した場合極変換では,xy\, 平面(0,0,1/2)\, 中心とする半径1/2\, の球へ変換される.この変換立体射影 (stereographic projection) と呼ばれる

 さらなる変形として,画像処理で特に用いられているハフ変換 (Hough transformation) がある.2次元直線原点からこの直線への垂線の距離r\, 直線x\, 軸がなす角度\theta\, 表して,それを

直線 x\sin\theta+y\cos\theta=r \ \mapsto\,  点 (r,\theta)\,

変換する.Hough変換は,画像からの直線成分さらには楕円などを抽出することによく用いられる

 極変換2次曲線としていたが,一般凸関数拡張するともできる.この場合の双対変換は,Legendre変換一般に呼ばれ,特に最適化分野ではFenchelの共役性として知られている.この場合凸関数共役凸関数が定義でき,放物線y=(x^2)/2\, 自己共役になっている凸関数共役性は,凸解析基本概念である.



参考文献

[1] H. Edelsbrunner, Algorithms in Combinatorial Geometry, Springer-Verlag, 1987. 邦訳(今井浩, 今井桂子訳), 『組合せ幾何学アルゴリズム』,共立出版, 1995.

[2] F. P. Preparata and M. I. Shamos, Computational Geometry: An Introduction, Springer-Verlag, 1985. 邦訳 (浅野孝夫, 浅野哲夫訳) , 『計算幾何学入門』, 総研出版, 1992.

[3] 佐々木建昭, 今井浩, 浅野孝夫, 杉原厚吉, 『計算代数計算幾何』, 岩波応用数学[方法9], 岩波書店, 1993.

「OR事典」の他の用語
計算幾何:  動的ボロノイ図  区間木  厳密計算法  双対変換  可視グラフ  四分木  多面体理論



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