「キャラ」との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 09:26 UTC 版)
「スクールカースト」の記事における「「キャラ」との関係」の解説
「キャラ (コミュニケーション)」も参照 キャラとは、キャラクター(英: character、性格・人格)を省略した若者言葉で、コミュニケーションの場における振舞い方に関する類型的な役割を意味する。社会学者の瀬沼文彰によると、その具体的な役割に応じて、例えば「まじめキャラ」「バカキャラ」「へたれキャラ」「癒やしキャラ」のようにさまざまなものが存在するという。 斎藤によると、現代の日本の若者は、各自の実際の性格だけではなく場合によっては場の空気による暗黙の圧力で配分される「キャラ」を演じてコミュニケーションをとるというスタイルが定着しており、教室内は例えば「不思議ちゃんキャラ」「毒舌キャラ」のような様々なキャラがひしめきあう状態となっている。こうした環境はスクールカーストの形成やいじめの発生と密接に関係しており、荻上はスクールカーストという序列は各々の「キャラ」に対して行われる格付けであるとした。 荻上によると、うまくキャラを確立できた者が勝利するという構造は日本の芸能界におけるお笑い芸人・雛壇芸人の生存競争にみられるものであり、土井、斎藤らは与えられたキャラを演じる若者の作法は日本のバラエティ番組・トーク番組における彼らのやりとりの影響を強く受けていると見なしている。ほかにも、ゼロ年代末から急速に支持を集めた女性アイドルグループであるAKB48の運営戦略と受容の構造も、「コミュニケーション能力(≒人気獲得力)によって決定される序列」が「キャラの分化を促進する」という意味でスクールカーストの持つ構造と一致するものであると斎藤は考察した。 荻上は、スクールカーストによるキャラの序列化を「コミュニケーションの地形効果」として説明している。ここでいう地形効果とは、ウォー・シミュレーションゲームにおいて戦闘キャラクター自身の属性とそれが位置している場所(地形)の属性の相性に良し悪しによって戦闘能力にプラスまたはマイナスの修正が与えられるということであるが、これと同じように現実世界のコミュニケーション空間でもどのような場にどのようなキャラの人が存在しているかによってその位置づけは変わるのであり、例えば「学校空間」という場では「根暗キャラ(インキャラ)な人はマイナスの修正を受ける」というような地形効果の影響を受けていると考察した。 キャラおよびスクールカーストの可変性について、森口は(前述したようにいじめの発生に付随した行動によってカーストの上昇/下降がみられることを指摘しながらも)新しい学年の始まる4月から5月頃のポジション取り(カーストの決定)が基本的には次のクラス替えまで1年間保存されるとしている。鈴木は2010年から2011年に大学1年生を対象としてインタビューを行っているが、その結果ではカーストが下降することはあっても自力で上昇するのはほとんど不可能であるとの意見が多かったとしている。それによると、部活動をはじめとするクラス間をまたぐ交友関係によって個々の生徒の情報は共有されることになるため、クラス替えなどを契機に人間関係がある程度リセットされたとしても過去のカーストが新年度もそのまま維持されてしまいがちなのだという。 土井や斎藤、荻上らは学校空間でのカーストの固定性が強いことや固定化がいじめへつながる危険性を持つことを認めながらも、キャラ自体は周囲の状況に応じて切り替えられていく可変的なものであることを指摘しており、宇野常寛や荻上はこのキャラの可変性に注目した論考を行っている。それらを踏まえた海老原の論によれば、カースト/キャラが可変性と不変性を併有しているのは、その位置決定にかかわるコミュニケーション能力そのものが、具体的な対人関係の中で成長させることが可能ではあるが、家庭環境のような(当人にはコントロール不可能な)外的要因の影響も受けるという二面性を持っているからであるとしている。そして、そもそもカースト/キャラの可変性の前提となっているのは現代におけるメディア・テクノロジー環境の変化をもたらした個人の固定的な身体性(階級・生育環境など)の抑圧であり、その箍が外れたときに(あたかも本物のカースト制度のように)「本来あるべきカースト」への固定化が働くと考察した。
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