「カナダの策謀」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 10:03 UTC 版)
「イランアメリカ大使館人質事件」の記事における「「カナダの策謀」」の解説
テイラー大使は、本国の外務省に対してこれらの6人の救出を依頼した。直ちにカナダ政府はアメリカ政府にこの事実を伝え、脱出計画の依頼を受けたアメリカ中央情報局(CIA)のアントニオ・J・メンデスらが、館員らをカナダから派遣された農業調査員や英語教師、映画の撮影スタッフに偽装させて脱出させる計画を立案した(カナダの策謀)。 救出作戦の実行に際してカナダ政府は枢密院令を出し、この6人とメンデスらCIAの作戦グループにカナダのパスポートを発給、更にカナダ政府とアメリカ政府の緊密な協力のもと作戦を進めた。メンデスらはその後テヘランに到着、カナダ大使公邸に入り6人と合流した。その後6人と偽装作戦のシナリオを選び「映画の撮影スタッフに偽装する」物を選択した。 この作戦の中には、本物らしさを得るために設定された『アルゴ』(Argo)という名前のSF映画を作成するのも含まれていた。映画の脚本は『光の王』というSF小説を原作としたものだった。 さらに偽装作戦の一環として、ジョン・チェンバースの支援を得て、ハリウッドにオフィスも設立され、ロサンゼルスにある「Studio Six」に電話をすれば応対されると伝えられていた。さらにハリウッドには「Studio Six(「6人のスタジオ」の意味)」の名で広告が掲示され、偽装文書の一つとして関係する記事が新聞に掲載された。 また、メンデスらは6人に「カナダ人の映画の撮影スタッフ」として出入国管理を欺くための偽装工作を施し、さらにテイラー大使は嘘の用事をでっちあげて彼らが移動する理由を作った。やがて大使公邸に怪しげな電話がかかるようになり、それも含めた徴候から彼らがかくまわれている事はおそらく発覚したのではないかと考えられるようになった。 1980年1月27日に、6名の館員とメンデスら作戦グループは、イラン政府当局関係者の目を掻い潜ってテヘランのメヘラーバード国際空港にてチューリヒ空港行きのスイス航空機に搭乗し脱出に成功した。 この作戦は、計画の時点でカナダの一部のマスコミに漏れたが、6名が無事に脱出するまで記者により伏せられていた。しかし6人の帰国後明らかにされ、その結果、6人の存在をフロリダ州の政府施設に秘密裏に隠蔽しようと考えていたアメリカ政府の計画が実行不能となった。また、残る人質の安全を考えて米加両国政府は、CIAがこの件において果たした役割を機密にした。CIAの関与は、ビル・クリントン政権下の1997年になるまで明らかにされなかった。 なお、作戦の計画と実行の一部始終は、2012年に『アルゴ』という題名でベン・アフレックにより映画化され、第85回アカデミー賞において作品賞など3部門を受賞している。
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