脱出作戦の準備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/04 03:15 UTC 版)
テイラー大使は本国に支援を要請する。カナダ政府は枢密院令を出し、6人のアメリカ人にカナダのパスポートを与え、定期便の航空機によってアメリカに脱出させることにした。カナダ政府はアメリカ政府との協力を緊密にし、脱出作戦をCIAに依頼する。CIAでは秘密工作本部作戦支援部のトニー・メンデスが作業班を編成して、変造したビザ、衣服、変装用具など用具一式を用意した。 メンデスの作業班はカナダのクーリエに依頼して、パスポートと用具一式をテヘランのカナダ大使館に届けさせた。その後メンデスは作業班一名と共にテヘランへ飛んだ。複数の偽装作戦のうちどれを選択してもいいように、複数のパスポートや偽装するための用具も用意されていたが、大使館員により最終的に選択された作戦は、「6人をロケハンのため渡航したカナダの映画スタッフに身分偽変させる」というものだった。その偽装作戦のシナリオの中には、本物らしさを得るために設定された『アルゴ』(Argo)という名前の映画も含まれていた。映画の脚本は『光の王』というSF小説を原作としたものだった。 偽装作戦の一環として、カリフォルニア州ハリウッドの著名メイクアップアーティストであるジョン・チェンバースの支援を得て、ハリウッドにオフィスも設立され、6人は、ロサンゼルスにある「Studio Six」に電話をすれば応対されると伝えられていた。さらにハリウッドには「Studio Six」の名で広告が掲示され、また関係する記事が掲載された新聞が偽装文書の一つとしてコーラ・リジェックに与えられた(なお本作戦を題材とした映画『アルゴ』の中では、同時に特殊部隊をテヘランに送り込み大使館を奪還する作戦も考慮されていたことが描写されている)。 作戦の最中にビザの日付にミスがあることが発覚した。準備した作業班がイランの新年が3月後半に始まることに注意を払っていなかったことが原因だった。カナダ大使館員がこのミスを指摘し、予備のパスポートを用いる事でメンデスはイランのカレンダーに基づいた新しいビザを変造する事が出来た。1週間が経ち、6人は本を読んだりゲームをしたりして過ごしていた。またテイラー大使は不要不急の要員を脱出させる努力をしていた。彼は空港の出入国管理を欺くため、嘘の用事をでっちあげて彼らが移動する理由を作った。やがて怪しげな電話がかかるようになり、それも含めた徴候から彼らがかくまわれている事はおそらく発覚したのではないかと考えられるようになった。
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