「カトリック教会の陰謀」論の虚偽
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「死海文書」の記事における「「カトリック教会の陰謀」論の虚偽」の解説
1991年にイギリスの作家マイケル・ベイジェント(英語版)とリチャード・リー(英語版)が『死海文書の謎(英語版)』(英語: The Dead Sea Scrolls Deception)を出版し、死海文書の出版が進まないのはカトリック教会(バチカン)の陰謀であると主張した。同書によれば委員長のド・ヴォーはバチカンから「写本の年代を紀元前2世紀として新約聖書の成立年代から極力離すこと」と「カトリック教会の教義をおびやかす内容がある場合、決して公表させないこと」という2つの指令を受けていたとしている。 「カトリック教会の陰謀」というテーマで一般受けした同書ではあるが、学術的にはまったく意味のないものである。オックスフォード大学の死海文書研究者ゲザ・ヴァーメシ (Geza Vermesh) は成立年代に関しては非カトリックの学者たちによっても広く認められていること、委員の中にはカトリック教会と無関係の者も多く、ド・ヴォーのそのような指示があったとしても従う義理のないものが多いこと、最終的にすべての写本の内容が公開されているが、キリスト教もユダヤ教もどちらに関してもその土台をゆるがすような記述は何もないことなどをあげて、まったくのナンセンスと論破している。ノートルダム大学の教授で死海文書の研究家ジェイムス・ヴァンダーカム (James VanderKam) もベイジェントとリーの著作について「死海文書のすべての巻物を利用することのできる今、誰もそこにキリスト教にダメージを与えたりするものや、バチカンが隠蔽しようとしたものを見出すことはできないでいる」と述べ、2人の陰謀説が「根も葉もない」もので、同書は「学問といかがわしさがこれほど奇怪に合体した書物を想像することは難しい」と切り捨てている。ベイジェントとリーは1982年にも『レンヌ=ル=シャトーの謎』 (The Holy Blood and the Holy Grail) を出版してカトリック教会の陰謀論を展開した(同書は後に『ダヴィンチ・コード』の原案となった)。
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