「インディアン・マスコット」の廃絶変更要求運動
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「インディアン・マスコット」の記事における「「インディアン・マスコット」の廃絶変更要求運動」の解説
特定の民族を動物扱いしてスポーツ・マスコットに使用したこの「インディアン・マスコット」は、1960年代にインディアンたちが興した権利回復要求運動「レッド・パワー」が全米に拡がるにつれ、「野蛮なイメージによってインディアン民族の品位を汚し、卑しめるステレオタイプな人種差別である」として、多数のインディアンの団体・個人、インディアン学生による批判と抗議を受けることになった。初期の抗議団体にインディアンのロビー団体「アメリカインディアン国民会議」(NCAI)があり、彼らは西部劇やディズニーアニメなどの映画、漫画などのメディアにおける、インディアンの否定的イメージの排除を要求するなかで、この「インディアン・マスコット」の廃止要求を行って注目された。「NCAI」の抗議は続く「全米インディアン若者会議」(NIYC)、「アメリカインディアン運動」(AIM)といった次世代のインディアン団体に受け継がれ、その抗議は現在も続けられている。 1972年、AIM運動家のラッセル・ミーンズらが「クリーブランド・インディアンス」球団に対し、「ワフー酋長の意匠はインディアンの伝統を卑しめている」として、チーム名の変更と、ワフー酋長の使用廃止を求め、大規模な抗議デモを本拠地球場前で行った。さらにラッセルらは、これらチーム名、マスコット使用をインディアン民族に対する人種差別であるとして、インディアンス球団に対して900万ドルの損害賠償訴訟を起こした。しかしこれは、球団のファンからすさまじい反発と抗議を受けた。ラッセルの許にはインディアンスのファンからの嫌がらせの手紙が殺到し、その中の何人かは、アメリカインディアンの民族浄化を要求していた。あまりの嫌がらせのひどさに、ラッセルは「クリーブランド・インディアンセンター」の所長を辞任せねばならず、訴訟自体が和解に追い込まれている。 1992年、「コロンブス上陸500周年」に当たるこの年に、AIMのヴァーノン・ベルコートは、「スポーツとメディアの人種差別に関する全国会議」(NCRSM)を結成し、スーザン・ショーン・ハルジョやシャーリーン・テッタースらインディアン女性運動家と連携し、ナショナル・フットボール・リーグの「ワシントン・レッドスキンズ」や、「カンザスシティ・チーフス」、プロ野球メジャーリーグの「アトランタ・ブレーブス」と「クリーブランド・インディアンス」のオーナーに、その名称の変更とインディアンのマスコットキャラクターの廃止を訴えて激しい抗議運動を行った。 同年9月12日、スーザン・S・ハルジョ、ヴァイン・デロリア・ジュニア、マテオ・ロメロら7人のインディアン原告団が、「ワシントン・レッドスキンズ」に対して、「レッドスキンズ」(赤い肌)のチーム名とチームロゴが「インディアンの文化を卑しめている」として、その廃棄を求めて米国特許商標庁で訴訟を起こした。全米フットボール協会は訴訟に対して、憲法修正第1条の「言論の自由」を盾にとった。特許商標庁の審査員は全員インディアンに有利な判決を下したが、最高裁判所はインディアン側敗訴の判決を下した。特許商標庁はなおも、この案件は再検討に値するとスーザンらに同意している。 現在、この訴訟は「Blackhorse et al v. Pro Football」として、インディアンの若者たちが原告団となって引き継がれている。(→Harjo et al v. Pro Football, Inc.、Pro-Football, Inc. v. Harjo) 1994年、「インディアンス」の新球場「ジェーコブス・フィールド」完成に合わせ、ヴァーノンたちインディアン抗議者は「インディアンス」の名称変更と「ワフー酋長」の廃止を要求し、「ワフー酋長」のマスコット人形を燃やして抗議した。この廉で、ヴァーノン他4人のインディアンがクリーブランド警察によって「加重放火」の罪で逮捕された。 スーザン・S・ハルジョらは、オクラホマ大学のインディアン・マスコットの「リトル・レッド」の使用廃止、ダートマス大学の「インディアンス」の名称変更に成功している。インディアンたちの抗議によって、全米のかなりの数の高校・大学が、「インディアン」に関連する名前やマスコットの使用を廃絶している。 2002年9月26日、ニュージャージー州選出の連邦議会議員フランク・パローネは、大学高校のスポーツチームの「インディアン・マスコット」の意匠廃止に伴う資金の援助法案を議会に提出している。2003年3月3日には同議員は「様々な環境におけるイメージを変える先住民法」としてこれを表明し、これに合わせて「米国現代語学文学協会」、「全米教育協会」、「全米黒人地位向上協会」、「長老教会」、「米国統一メソジスト協会」などが、「インディアン・マスコット」使用に対する非難声明を出した。
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