「インディアン宣言書」の発表
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「ヴァイン・デロリア・ジュニア」の記事における「「インディアン宣言書」の発表」の解説
1969年、ヴァインは法律学校に通う間に書きためた処女作、『Custer Died For Your Sins: An Indian Manifesto』(『インディアンの宣言書:カスターはその罪ゆえに死んだ』)を発表する。この本の中でヴァインは、白人がインディアンに押し付ける固定観念なイメージを論証し、ことに白人人類学者たちがインディアンの共同体で行うフィールドワークの杜撰さを例に挙げ、彼らによる歪曲されたステレオタイプなインディアン文化の普遍化、これに基づく合衆国やインディアン支援団体、キリスト教会のインディアン文化への見当違いな干渉を批判し、また神学者としてインディアンの宗教観の保護を訴え、文字通りインディアンの歴史的宣言書となった。 同書はアメリカの論壇、批評家たちの絶賛を浴び、アメリカ人類学教会の支援を受けて現在も重版を続けている。絶賛者のひとりであるニューヨークタイムズ紙の論説委員ジョン・レオナルドはこの本について、こうコメントしている。「私たちは犯した罪をごまかし、統計を鵜呑みにして観てみぬふりをしています。私たちは現実の人たち(インディアン)の前にちゃんと立って見せていないし、それはできそうもありませんね」 「インディアン部族は自決のために、文化的に白人社会と分離し、政治的に合衆国と分離すべきである」というこの本のテーマはそのまま「レッド・パワー運動」を担う「全米インディアン若者会議」(NIYC)や「アメリカインディアン運動」(AIM)の最終目標として掲げられ、勢いづかせた。 同年、リチャード・オークスやジョン・トルーデルら76人のインディアンの若者たちが、「全部族インディアン」を名乗って「アルカトラズ島占拠事件」を決行した。彼らが掲げた「アルカトラズ島をインディアンの文化センターとする」との目標は、ヴァインの『カスターはその罪ゆえに死んだ』に裏打ちされたものだった。インディアンの権利を理論づけたこの『カスターはその罪ゆえに死んだ』は、当時高まりを見せていたインディアンの権利回復要求運動「レッド・パワー」を勢いづかせ、インディアンの若者たちはこぞって自家用車のバンパーに『 カスターはその罪ゆえに死んだ』の標語を貼り付けた。 ヴァインはインディアンの権利は条約に基づくものであり、同時期の黒人たちの公民権運動とは区別されるべきであると訴えた。この本の結びで、ヴァインはこう書き残している。 私がこの本を書く気になった理由のひとつは、より若いインディアンたちのために、彼らが自分たちのために提起していない、いくつかの問題を喚起させることでした。もうひとつの理由としては、私が彼らインディアンたちに、口に出すことはなかったけれどもしばしば感じられた白人に対する敵意、そしてそのような敵意の理由に何らかの考えを与えたかったということでした。
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