《鬼籍に入る》の敬語
「鬼籍に入る」の敬語表現
「鬼籍に入る(きせきにいる)」とは、人が死ぬ、亡くなることの婉曲的表現です。鬼籍とは閻魔帳(えんまちょう。亡くなった人の名前を記載する帳簿)のことで、「鬼籍に入る」とは閻魔帳に名前が記載されること、すなわち人が亡くなったことを意味します。「鬼籍に入る」の元の言葉は「死ぬ」です。「死ぬ」の敬語表現についてみていきます。敬語には、丁寧語、謙譲語、尊敬語の3種類があります。丁寧語は「です」、「ます」、「ございます」などを付けて丁寧な言い回しをして、相手に敬意を表します。例えば「行く」を丁寧語で表現すると「行きます」になります。ただ、「死ぬ」という言葉は直接的な表現を避ける傾向にあるためこのルール通りではありません。
「死ぬ」の丁寧語は、「亡くなる」、「逝去する」となります。謙譲語は、自分に対してへりくだる表現を使うことによって相対的に相手を高め、敬意を表します。ですが、自分が死んだことを自分で誰かに伝えることはできないので、「死ぬ」という言葉に謙譲語はありません。尊敬語は、相手を高める表現をすることによって、相手に敬意を表します。「死ぬ」の尊敬語は、「お亡くなりになる」、「ご逝去する」、「崩御(ほうぎょ)する」です。
「鬼籍に入る」の敬語の最上級の表現
「鬼籍に入る」の元の言葉である「死ぬ」の敬語の最上級の表現は、「崩御(ほうぎょ)する」です。「崩御する」とは、国王など最上位の身分の人が亡くなった時に使われる表現です。2021年4月、イギリスのエリザベス女王の夫であるエディンバラ公爵フィリップ王配が亡くなった際、日本の各ニュースで、「エディンバラ公爵フィリップ王配が崩御した」と伝えられました。日本の場合であれば、天皇家の人が亡くなった場合に「崩御する」という表現が使われます。一般の人に対しては使われません。「鬼籍に入る」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
家族が亡くなった際に会社に連絡する場合のビジネスメールの例文をご紹介します。「〇〇様
昨晩、私の父が鬼籍に入りました。
(死亡者氏名:〇〇〇〇(実父)、〇月〇日〇時〇分死亡、死因〇〇)
忌引休暇を取得したく存じます。
担当業務の引継ぎは佐藤さんにお願いする予定です。
休暇中何かございましたら、〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇〇までご連絡ください。
通夜や葬儀に関しましては、決まり次第改めてご連絡いたします。
まずは、取り急ぎのご連絡まで。
署名」
続いては、手紙の場合の例文をご紹介します。亡くなったことを知らせる手紙では「永眠しました」という表現が使われることが多いです。またこのような報告の手紙の場合、時候のあいさつは入れない、忌み言葉や句読点は使用しないなどのルールがあります。忌み言葉とは、死を連想させる直接的な表現や、ネガティブなイメージを持つ言葉のことで、「終わる」、「消える」、「切る」などがあります。ほかに、「重ね重ね」など不幸の連鎖を連想させるような言葉の使用も避けましょう。
「〇〇様
祖父○○○○(氏名)かねてから加療中でしたが
去る×月×日△△歳にて永眠いたしました
ここに故人が生前賜りましたご厚誼に対し
心より御礼申し上げます。
葬儀につきましては故人の遺志により
近親者のみにて執り行いました
ご連絡が遅れましたことを深くお詫び申し上げます
略儀ながら謹んでご通知申し上げます
○○県○○市○○町○○-○○
喪主氏名」
「鬼籍に入る」を上司に伝える際の敬語表現
「鬼籍に入る」という言葉は敬語表現ではありませんが、上司に使っても失礼ではありません。例えば、取引先の方が亡くなったことを上司に伝える際には、「昨晩、〇〇社の〇〇様が鬼籍に入られたそうです。」などのように使うことができます。また、自分の家族についても、「鬼籍に入る」という言葉を使うことができます。「私の祖父は三年前に鬼籍に入りました。」や、「昨晩祖母が鬼籍に入りました。」のように表現できます。通常、自分の身内に対して丁寧な言い回しをすることはありません。例えば、「母が〇〇だとおっしゃったんです。」と、自分の母を高める表現をするのは間違いです。ですが、死というのは重大なことであり、話題にする場合には丁重に扱う必要がありますので、身内に対しても丁寧な表現を使うことができます。「鬼籍に入る」の敬語での誤用表現・注意事項
「鬼籍に入る」の元の言葉である「死ぬ」の、間違えやすい敬語表現についてみていきます。まず、「お亡くなりになられました」というのは間違った表現です。「お亡くなりになる」と「られる」という二つの敬語が使われている二重敬語となります。正しくは、「お亡くなりになる」です。また、「逝去する」という言葉は身内には使わないように注意が必要です。「逝去」は、他人の死の場合に使われる敬語です。身内に使う場合は「急逝」という言葉を使います。「鬼籍に入る」の敬語での言い換え表現
「死ぬ」ことを意味する「鬼籍に入る」は、多くの言い換え表現があります。最初に「泉下(せんか)の客となる」という表現をご紹介します。泉下とは、死後の世界のことを意味しています。「長い闘病生活を経てとうとう泉下の客となった」のように使うことができます。また、「身罷る(みまかる)」という言葉もあります。主に身内の死に対して使われる言葉です。「自宅で祖母を身罷った。」のように使います。ほかに、「永眠」、「他界」といった言葉もあります。「祖父は〇月〇日、病院にて永眠しました。」、「年明けすぐに、祖母が他界しました。」などのように使います。「息を引き取りました」という表現もあります。「叔母は、苦しむことなく眠るように息を引き取りました。」などと表現できます。- 《鬼籍に入る》の敬語のページへのリンク