《忘れていた》の敬語
「忘れていた」の敬語表現
「忘れていた」を敬語にすると、「失念しておりました」になります。忘れたことを丁寧に表現する言葉です。「忘れる」を謙譲語にすると、「失念」になります。「失」はなくす、失うの意味で、「念」は覚えておく、記憶や心に留めるという意味があります。つまり、覚えておくことを忘れた「失念」という形になります。また、仏教用語でもあります。仏教が教える煩悩のひとつで、物忘れ・気づきを失った心という意味です。それが転じて「忘れる」という意味になりました。この「失念」は物に対して直接かかるのではなく、行動に対してかかります。かつ、自分自身のことについて伝える時に使います。ビジネスシーンや目上の人に対して、自分のすべきことやしなければならなかったことをうっかり忘れてしまったことを伝える際は、それは自分自身のミスなので謝罪の言葉と一緒に失念しておりましたと使いましょう。「失念」の対義語は、心に留めること、気を付けるという意味の「留意」や「記憶」です。
「忘れていた」の敬語の最上級の表現
「忘れていた」の最上級の敬語はありません。上記で述べたように、「失念」は第三者についてではなく自分自身について使います。最上級の敬語というのは、日本語における最上級の尊敬表現です。かつては天皇・太上天皇・太上法天・皇族に限らず、摂政・関白、征夷大将軍など高位の貴人や高僧のみに用いられていました。明治時代からは主に天皇・皇族に対してのみ用いられるようになりました。現在は天皇や皇族の方、または他国の国王や王族の方に対して使う表現です。つまり、「忘れていた」を敬語として使う際は、「失念しておりました」だけになります。「忘れていた」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
ビジネスメールや手紙で伝える際は、基本的に「失念しておりました」になります。また、「失念しておりました」を使うときは必然的にお詫びの文章になるので、ここに誠意をもって謝罪の言葉も入れましょう。さらに今後の改善点も追記するとなお良いでしょう。ただし、口頭や電話で直接謝罪したほうが良い場合もあるので注意が必要です。(例文)
・打ち合わせのスケジュール変更の連絡を失念しておりました。大変申し訳ございません。今後は確認を徹底いたします。
・先日お送りいただいたメールの確認を失念しておりました。大変申し訳ございません。今後は再度メールを確認いたします。
・契約書にサインをいただくはずが、失念しておりました。ご迷惑をお掛けして大変申し訳ございません。
・データを添付するのを失念しておりました。お手数おかけして申し訳ございません。もう一度お送りしたので、ご確認のほどよろしくお願いします。
「忘れていた」を上司に伝える際の敬語表現
上司に伝える際も、「失念しておりました」になります。ビジネスメールや手紙での使い方と同じように、誠意を持った文章を心掛けましょう。また、口頭で述べる際も謝罪の意を込めて伝えましょう。(例文)
・忘年会の会費の提示を失念しておりました。○○円ほどお願いしたいと考えております。いかがでしょうか。
・会議日時を失念してしまいまして、申し訳ないのですが再度ご確認させていただいてもよろしいでしょうか。
・○○日の14時からの会議を失念してしまい、取引先との打ち合わせを入れてしまいました。申し訳ございません。
・申し訳ございません。懇親会の支払いを失念しておりました。
「忘れていた」の敬語での誤用表現・注意事項
「失念しておりました」を使う際は、基本的にビジネスシーンになります。間違った使い方に注意しましょう。主に注意点が三つあります。一つ目は、ものに対して使えない点です。家にスマートフォンを失念しましたというような文章は使えません。家にスマートフォンを忘れましたという文章が正しいです。二つ目が、自分ではなく同僚や上司といった第三者に対しては使えない点です。○○さんが△△を失念しておりましたというようには使えません。三つめが、もともと知らなかったことに対しては使えない点です。「失念」は知っていたことを忘れたという意味なので、知らなかったことを伝えたい際は存じ上げませんでしたを使いましょう。「忘れていた」の敬語での言い換え表現
「失念」の類語として、「忘却」と「放念」、「忘失」があります。どれも何か物事を忘れたという意味です。「忘却」は「忘れる」を強く表現した言葉で、自分だけでなく第三者にも使えます。ただし、これは詩的・文学的表現としての意味合いが強いので、ビジネスシーンにおいて使うことはあまりありません。「放念」は気がかりなことを忘れて心に留めないことという意味です。「放念」はビジネスシーンにおいて主に書き言葉で使われます。つまり、ビジネスメールや手紙などで使うことになります。敬語にすると、「どうぞご放念ください」になります。気にしないでください、忘れてくださいというニュアンスがある表現になります。「忘失」は「失念」とは違い物に対しても使えます。書類やスマートフォンをなくしたり、忘れたりした際も使える表現です。例えば、「書類を忘失しました」というようになります。- 《忘れていた》の敬語のページへのリンク