ランドローバー・レンジローバー ランドローバー・レンジローバーの概要

ランドローバー・レンジローバー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/18 15:11 UTC 版)

初代 2ドアモデル(ホイールは後年のもの)

初代 (1970 - 1996年)

ランドローバー・レンジローバー
初代
初代 5ドア(1987年モデル)
初代 5ドア(1988年モデル)
概要
販売期間 1970年 - 1996年
ボディ
ボディタイプ 3ドアSUV
5ドアSUV
駆動方式 4WD
パワートレイン
エンジン ローバー製 3528cc V8
ローバー製 3.9L V8
ローバー製 4.2L V8
VMモトリ製 2.4L ターボディーゼル
VMモトリ製 2.5Lターボディーゼル
200Tdi型 2.5L 直4 ターボディーゼル
300Tdi型 2.5L 直4 ターボディーゼル
車両寸法
ホイールベース 2,540 mm
2,743 mm(バンデンブラ)
全長 4,470 mm
4,648 mm (バンデンブラ)
全幅 1,780 mm
全高 1,780 mm
車両重量 1,723 - 2,150 kg
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1970年、当時ブリティッシュ・レイランドBritish Leyland Motor Corporation : 略称BL)の1ブランドであったランドローバーから、フルタイム4WDのオールパーパスヴィークルとして発表された。

BLの技術者、チャールズ・スペンサー・キング(Charles Spencer King、通称Spen King:スペン・キングとも)などが中心となり、ランドローバー以上のオフロード性能を持ち、普段は高級乗用車と変わらぬ快適性を持つことを目標に開発された、まったく新しい概念の革新的コンセプトであった。はじめから海外でのノックダウン生産も考慮して設計が進められ、耐久性、メンテナンス性も考慮されていた。

ラグジュアリーカーエステートカー、パフォーマンスカー、クロスカントリーカーの4つの車の役割を1台の車で可能にする」と謳われた。21世紀に入ると高級車ブランドがハイパフォーマンスな高級クロスオーバーSUVを続々と世に送り出し、一定のカテゴリを形成するようになるが、当時このような車はほとんど見られず、わずかにアメリカジープ・グランドワゴニア西ドイツメルセデス・ベンツ・Gクラス1979年)が該当するのみであった。

当初は3ドアモデルのみであったが、後に5ドアモデルが追加された(経緯は後述)。現在では初代モデル全てを、レンジローバー クラシック(Range Rover Classic)と呼ぶようになっている。

丈夫な車ではあるが、特有のリアサスペンションAアームのピボットは、年式に関係なく点検と給脂をこまめに行う必要があり、極度に磨耗する前に交換することが望ましい。エアサスペンションにまつわるトラブルは2代目にも共通のもので、車高調整を諦め、金属スプリングに換えるユーザーも多い。部品は本国では、純正品、社外品共に潤沢に供給されており、価格は初代モデルのものが最も安価である。電装品やベアリングは、日本製(日本車用)で代用できる。

日本では自動車評論家の小林彰太郎、4輪駆動車専門雑誌「CCV」編集長石川雄一らが高く評価するとともに、自らも所有した。

シャーシ、ボディ

虚飾を排してシンプルな設計に徹した初期型のボディは、2枚のドアと上下2分割式の頑丈なテールゲートを持つ。強固な2mm厚ボックスセクションの2本のサイドメンバーと5本のクロスメンバーからなる剛性の高いフレームに、ゴムブッシュを介して鋼板製スケルトンボディを載せている。このボディにアルミ製のドア、フェンダー、ルーフが取り付けられ、車体の軽量化、防錆対策に貢献している。

スペアタイヤを車室内に縦配置するとともに、駆動部品を適切に配置しシャシーフレームおよびボディを適切な形に設計することで、悪路での障害物による損傷を防いでいる。アプローチアングル45°、ランプブレークオーバーアングル150°、デパーチャーアングル33°を確保。ホイールベースは100インチ(2540mm)で、大人5人がゆったりと室内でくつろぐことが可能でありながら、初期型は全長4470mm、全幅1778mm、全高1778mm、車重1700kg台前半と意外とコンパクト、軽量である。

エンジン

GMから製造権を買い取ってローバー・3500に使われていた、シリンダーヘッド、シリンダーブロック共にアルミ製の軽量なV型8気筒OHVの3.5Lローバー・V8エンジンを採用し、発表当時としては優れた静粛性と 155km/hのクルージングを可能にしていた。このトルクフルで頑強なエンジンは、当初、ゼニスストロンバーグキャブレター装備であったが、後には電子制御燃料噴射式となり、排気量も3.9Lから、最終型では4.2Lにまで拡大された。また8気筒ながら、当時のランドローバーLand Rover (Series/Defender))シリーズII Aに使われていた鋳鉄ブロックの4気筒よりも軽いことにより前後の重量配分が50:50となっており、結果としてオンロードでの旋回性能やオフロードでの走破性を良好にしている。またエンジンが短いことが前述のように広い車室の獲得にもつながっている。このエンジンは基本設計が古いこともあり、吸気抵抗や各部のフリクションロスが大きく、燃料消費が多いことが難点であった。これは電子制御化された後の改善もわずかであった。

ブリティッシュ・レイランドの整理後、中心的な役割を担ったオースチン・ローバー(Austin Rover)では、主に揮発油税の高率な欧州大陸向けとして、高速ディーゼルエンジンの開発を行っていたが、失敗続きの末、ついに自力開発を断念[要出典]ディーゼルエンジンメーカーとして実績のある、イタリア、VMモトリ(VM Motori)社製のエンジンを購入することになった。これは、直列4気筒 2.4Lの直噴ターボディーゼルで、1986年に追加され、1989年には2.5Lに拡大された。これらは熱効率に優れた直噴式であることや、燃料の価格差も寄与し、燃費はガソリンモデルの半分ほどと大きく改善した。

自社製ターボディーゼルエンジンを搭載した200TDiがラインアップに加えられたのは、モデル末期の1992年であった。

サスペンション

耐久性とオフロード性能を第一に追い求めたため前後輪ともコイルスプリングによるリジッドアクスル式サスペンションを採用。柔らかく長いコイルばねにより大きなホイールストロークを確保し、良好な乗り心地と卓越した悪路走破性を実現している。フロントはリーディングアームとパナールロッドによる3リンク式サスペンションで、自由な上下動と抗ロール性を両立しており、後のフロントリジッドアクスル4X4(SUV)に大きな影響を与えた。

またリアは重い荷物を積んだときにも車を水平に保つボーゲ(BOGE)製ダンパーを用いた機械式セルフレベリングユニットを組み込んだセンターAアームと、2本のトレーリングアームにより長大なストロークを確保している。これは現在に至っても優れた地形追従性を持ったサスペンションと知られるが、ダンパーや大きな力が加わるAアームのピボットの寿命が短いなどの難点がある。センターAアームは同社の初代ディスカバリーのほか、初代スズキ・エスクードに採用例があるが、2代目レンジローバーを含め、すべて後継車では採用されていない。

タイヤサイズは205R16で、5.64mという最小回転半径と良好な乗り心地を実現している。北米市場からの要求で、1990年からロールを抑えるスタビライザーが装着された。1992年から4駆として世界で初めて英・ダンロップ製のエアサスペンションを採用する。高速走行時には安定のため車高を下げ、不整地走行では地上高を稼ぐために車高を上げ、積載量の多寡による姿勢変化を抑え、ニーリングで乗降を容易にするなど、変化量の大きい車高調整が目的である。

四輪駆動機構

フルタイム式4WD車としてはジェンセン・FFに次いで史上2台目だが、オフロードを前提とした車ではもちろん初である。

使用しているセンターデフは1988年までのマニュアルロック型と、それ以降のビスカスカップリング式差動制限型とに分かれるが、トランスファーに2速の副変速機を持つことは共通である。そのHi / Loのギヤ比が2.7:1と大きく、悪路での極低速走行(クローリング、クロール)を可能にしている。

  • ベベルギア式センターデフ - 副変速機のHi / Loのどちらのポジションでも、センターデフのフリー / ロックが任意に選択できる(ローレンジでセンターデフをフリーにした場合は、強大なトルクフローが発生する懸念があり、それによる駆動系の破損を防ぐフェイルセーフはなく、ユーザーの自己責任となる)。
  • ビスカスカップリング式差動制限付きセンターデフ - ABSの働きを妨げないようにするために採用されたもの。
ブレーキ

開発当初からフロントブレーキキャリパーまでのブレーキラインを2系統確保した、完全分離型の2系統配管を持つ、4輪ディスクブレーキを採用している。フロントは大径ベンチレーテッドディスクと対向4ピストン、リアは対向2ピストンを標準とする。また駐車・非常用ブレーキとしては大径のドラムトランスファーの出力部に設置した、センターブレーキとしている。このセンターブレーキの作動には、通常のワイヤーとリターンスプリングの組み合わせではなく、ロッドによるリンケージが用いられており、強制的にブレーキシューを解放することで、泥や凍結による不緩解を防ぐ配慮がなされている。

その他
  • 20世紀中に世界で生産されたすべての車の中から最も傑出した車を選び出し、その製造者と設計者を讃えようというCar of the Centuryの選考27台に選出された。1970年代以降に登場した車で選出されたのは、他にGolf(1974年)、Quattro(1980年)、Espace(1984年)の3台であった。

年表

  • 1970年6月7日 初代レンジローバーデビュー。
  • 1977年 フェンダーミラーからドアミラーへ変更される。
  • 1979年 バンパーをブラックへ変更。パワーステアリング標準装備。クーラーをオプション設定。
モンテヴェルディ・サファリ
  • 1980年 4ドアモデルモンテヴェルディが限定販売される。これはスイスのモンテヴェルディ社を経営していた実業家、ペーター・モンテヴェルディがホイールベースを伸ばさず4ドアにするアイデアを提案したもので、これを市販化。BLは1972年に4ドアのプロトタイプを作製していたが、資金難で実現できなかった。また技術陣はシンプルさを旨としていたので4ドア化に積極的ではなかった。この為、ランドローバー社は1994年まで、モンテヴェルディにロイヤルティーを支払っていた[1]
  • 1981年 市場の声に応えてモンテヴェルディをリファインし4ドアが量産化される。ライトブルーメタリックの特別色にドアのウッドトリムや荷室のフルカーペットを装備したIN VOGUEモデル(2ドア、1,000台限定)がリリースされる。
  • 1982年 ランドローバー社がBLから独立し、資金繰りが楽になる。3速オートマティックトランスミッションを追加設定。
  • 1983年 5速マニュアルギアボックスを設定。
  • 1984年 三角窓廃止。VOGUEモデルが再登場し量産モデルとなる。
  • 1985年 4速オートマチックトランスミッション追加。
  • 1986年 イタリア VM社製 直列4気筒 2.4L 直噴ターボディーゼルエンジン追加。
  • 1987年 革内装のトップモデル「VOGUE SE」(ヴォーグ スーパーエディション)が登場、北米で販売を開始する。以後、北米市場に合わせたプレスティージ路線となる。
  • 1988年 3.9リッターエンジン登場。ABSの装備に伴い、手動センターデフロックに換え、ビスカスカップリングによる差動制限式センターデフを採用する。
  • 1989年 ターボディーゼルの排気量を2.5Lにアップ。レンジローバーの高価格化による上級移行に伴う穴を埋めるため、日本のオフロードヴィークルに価格面で対抗できる新モデルとして、ディスカバリーを発売する。これは、レンジローバーのシャシーから機械式レベリングユニットを省き、部品の共通化などで各部をコストダウンしたもの。日本国内では1991年より販売を開始し、1996年にはローバージャパンのフェアプレーキャンペーンにより、1980年代のレンジローバーとほぼ同じ足回りのディスカバリーが300万円を切って販売された。7人乗り仕様があり荷室も広く実用性は高かった。
  • 1990年 最高級仕様VOGUE SEのみがローバージャパンにより日本に正規輸入される。
  • 1992年 4.2Lエンジンを搭載したロングホイールベースモデル(日本名バンデンプラ、ホイールベース108インチ)が追加される。エアサスモデル追加。ディーゼルモデルを自社製ターボディーゼルエンジンを搭載した200TDiへ変更。
  • 1994年 日本での販売価格が改定され、約300万円もの大幅値下げが行われる。
  • 1994年 2代目が発表発売されるが、ファンの声に推され、レンジローバークラシックとして2代目と併行して継続生産される。クーラーを廃止、ディスカバリーのフェイズ2と同様のエアコンに置き換えられる。
  • 1996年 クラシックの生産を終了。総生産台数 31万7,615台。

2代目 (1994-2002年)

ランドローバー・レンジローバー
2代目
2代目
2代目 4.6 HSE
概要
販売期間 1994年 - 2001年
ボディ
ボディタイプ 5ドアSUV
駆動方式 4WD
パワートレイン
エンジン ローバー製 4.0L V8
ローバー製 4.6L V8
BMW製 2.5L 直6 ターボディーゼル
車両寸法
ホイールベース 2745 mm
全長 4713 mm
全幅 1889 mm
全高 1817 mm
車両重量 2090 - 2220 kg
テンプレートを表示

北米市場からの要求を最大限に取り入れ、乗用車化を図りたいマーケティング側と、高機能とヘビーデューティーを伝統と考える設計陣、さらに、合理化に抵抗する生産現場との間で折り合いが着かず、企画から開発にいたるまで、かなりの時間を要する結果となった。

愛好家の間では、「セカンドレンジ」、あるいは開発コードをとって「P38a」、型式より「LPレンジ」と呼ばれる。

シャーシ、ボディ

カタログモデルは全て4ドアワゴンでホイールベースも一種類のみとなった。

ラダーフレームと前後リジッドアクスルの構成は継承されたが、ボディーは一般的なスポット溶接構造となった。

エンジン

ガソリンエンジンは初代の改良型で、アルミブロックOHVのローバー・V8エンジンで、4.0Lと4.6Lの2機種であるが、ディーゼルエンジンは直列6気筒 2.5L ターボディーゼルのBMW・M51エンジンへ変更になった。

サスペンション

アイデンティティーとして、前後リジッドアクスルを継続採用したが、リアサスペンションは、センターAアームを廃し、横剛性を大きくとったトレーリングアームを導入したことが最大の変更点となった。

先代に続き、ダンロップの車高調整機能付きエアサスペンションを採用しているが、トラブルを嫌い、金属ばねに換えているユーザーも少なくない。

四輪駆動機構

初代の晩年と同様、差動制限にビスカスカップリングを用いたセンターデフを持つ、フルタイム4WDとなっている。

操作系は、トランスファーレバーのないアメリカ製SUVに慣れきったユーザーを考慮し、ATセレクターレバーとトランスファーレバーをひとつにまとめ、Hパターンとしたセレクターを採用した。

後期型(2000年〜)

2000年モデルよりマイナーチェンジ。新マネジメントシステムなどによるエンジンの改良、レイアウトの変更のほか、オルタネーターの容量UP,クリアライトの採用などがほどこされた[2]

LP58DおよびLP60Dと分類される。またスロットルヒーターからの冷却水漏れトラブルは後期型とディスカバリー2の共通マイナートラブルとして知られる

日本での販売

  • 1995年4月 2代目が発表される。この時点では、初代も「クラシック」として生産が継続されていた。グレードは排気量4.6L、本革シート、電動シート、サンルーフ、ウッドパネルなどが標準装備の4.6HSE、HSEより装備を省いた排気量4.0Lの4.0SEを設定。
  • 1996年10月 特別仕様車オートバイオグラフィー発表。上級グレードのHSEをベースに本来樹脂のバンパーなどがボディ同色に、専用の18インチアルミホイールを装着。インテリアはツートンレザーに細部に渡りウッドパネルがあしらわれており限定車の名に恥じない仕様となっているが、近年では状態の良い物件は少なく愛好家には幻の限定車とも言われている。
  • 1998年5月 特別仕様車2代目オートバイオグラフィー発表。初代オートバイオグラフィーの専用装備にインパネ埋め込み式パナソニック製DVDナビゲーションテレビを標準装備した。
  • 1998年5月 ランドローバー生誕50年を記念し50thアニバーサリーを発表。上級グレードのHSEをベースにバンパーなどをボディ同色、専用18インチアルミホイールやウッドコンビステアリング、専用フロアーマットなどを装備。廉価版としてファブリックシート4.0Sも同時に追加された。
  • 1999年1月 ディスティニー発表。中堅グレードのSEをベースにバンパーなどを同色ペイント、専用エンブレムや専用フロアマット、ウッドコンビステアリングなどが標準装備。
  • 2000年4月 後期型にマイナーチェンジ。エンジンの改良およびランプのデザイン変更などが行われた。また4.6ヴォーグ発表。上級グレードのHSEをベースにソフトタッチレザーや追加ウッドパネルなどがあしらわれたエグゼクティブなモデル[3]
  • 2000年12月 特別仕様車30thアニバーサリーエディション発表。70台限定販売[4]
  • 2002年5月 特別仕様車ロイヤルエディション発表。HSEをベースに追加ウッドパーツやパナソニック製ナビゲージョンを標準装備、国内150台限定販売[5]



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