ラテン文字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/16 05:51 UTC 版)
使用される文字
ラテン文字は、大きく分けて基本字と追加字に分類される。
基本字
遅くとも1960年代に(どの団体に?)標準化がなされて以降、ラテン語の23字に「J・U・W」を加えた26字を基本と見なし、多く実用の際は、歴史的に書体の差から生じた異なる字形を持つ大文字と小文字を併用する。この基本字は英語の表記に必要最低限の文字であり、それ以外の字は外来語でしか用いない。英語においても大文字と小文字を併用し、ラテン文字を用いる多くの言語同様、文の最初の語の頭文字と、各言語ごとに異なる特別な語の頭文字や、あるいは強調したい部分などに大文字を用いて、それ以外はすべて小文字を用いる。
大文字 | A | B | C | D | E | F | G | H | I | J | K | L | M | N | O | P | Q | R | S | T | U | V | W | X | Y | Z |
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小文字 | a | b | c | d | e | f | g | h | i | j | k | l | m | n | o | p | q | r | s | t | u | v | w | x | y | z |
追加字
ラテン文字はもともとラテン語を表すための文字であり、他の言語に用いるには表記できない発音も存在していた。こうした状況を解決するために、現在の基本字にはいくつかの文字が付け加えられたものの、それでも表記できない発音に対しては、こうした音を表記するために基本字に発音を区別する符号を付けたり、2つ以上の文字を結合したり、さらに文字を追加したりする言語が多く表れるようになった。
ダイアクリティカルマーク
ラテン文字の発音区別符号は、総称してダイアクリティカルマークなどと呼ばれる。ドイツ語やスウェーデン語などではウムラウト、フランス語やポルトガル語、トルコ語などではセディーユ、スペイン語やポルトガル語ではティルデが多く使用されるなど、ダイアクリティカルマークを採用しているラテン文字使用国は多数存在する。日本語のローマ字表記においては、サーカムフレックスやマクロンが長音の表記に使用される場合がある。
合字
ラテン文字において、2つ以上の文字の合字は、リガチャーとも呼ばれる。代表的な合字としては、ドイツ語の「ß(エスツェット)」や、アイスランド語・デンマーク語・ノルウェー語の「Æ」、デンマーク語やノルウェー語の「Ø」などが挙げられる。なお、現在では基本字のひとつとなっているが、本来「W」も合字であり、多くの言語において「ダブルのU」、または「ダブルのV」を意味する名称で呼ばれる。
その他
また、現代では消滅したが、アングロ・サクソン語の「Ƿ」のようにルーン文字など、基本字にさらに他の文字から取り入れられた文字も、一部では用いられる[注 8]。
アキュート アクセント |
グレイヴ アクセント |
サーカムフレックス | ウムラウト /トレマ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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大文字 | Á | Ć | É | Ǵ | Í | Ḱ | Ĺ | Ḿ | Ń | Ó | Ṕ | Ŕ | Ś | Ú | Ẃ | Ý | Ź | À | È | Ì | Ǹ | Ò | Ù | Ẁ | Ỳ | Â | Ĉ | Ê | Ĝ | Ĥ | Î | Ĵ | Ô | Ŝ | Û | Ŵ | Ŷ | Ẑ | Ä | Ë | Ḧ | Ï | Ö | T̈ | Ü | Ẅ | Ẍ | Ÿ |
小文字 | á | ć | é | ǵ | í | ḱ | ĺ | ḿ | ń | ó | ṕ | ŕ | ś | ú | ẃ | ý | ź | à | è | ì | ǹ | ò | ù | ẁ | ỳ | â | ĉ | ê | ĝ | ĥ | î | ĵ | ô | ŝ | û | ŵ | ŷ | ẑ | ä | ë | ḧ | ï | ö | ẗ | ü | ẅ | ẍ | ÿ |
セディーユ | ティルデ | オゴネク | 合字 | ルーン文字由来 | |||||||||||||||||||||||||
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大文字 | Ç | Ḑ | Ę | Ģ | Ḩ | Ķ | Ļ | Ņ | Ŗ | Ş | Ţ | à | Ẽ | Ĩ | Ñ | Õ | Ũ | Ṽ | Ỹ | Ą | Ę | Į | Ǫ | Ų | Æ | Œ | ẞ | Ð | Þ |
小文字 | ç | ḑ | ȩ | ģ | ḩ | ķ | ļ | ņ | ŗ | ş | ţ | ã | ẽ | ĩ | ñ | õ | ũ | ṽ | ỹ | ą | ę | į | ǫ | ų | æ | œ | ß | ð | þ |
併用される記号の例
ラテン文字は、音読の際の休止符に由来する句読点や、感嘆符、疑問符、その他の約物、レタリングなどから生まれた記号をしばしば併用する。一般にアットマークは記号であるが、一部の言語の正書法において、音を表すアルファベットとして用いる。
約物 | 記号 | |||||||
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. | , | : | ; | ? | ! | & | @ | # |
注釈
- ^ なお、他の言語に対し同様の表現が使われることはまれであり、たとえば漢字略称で「仏語」とされるフランス語の表記に用いても、フランス語で用いていることを強調しない場合は「仏字」などとは呼ばない。したがってフランス語で書かれていることがさほど重要ではない場合、ひとまとめに「英字」と称することさえ珍しくない。
- ^ なお、ギリシャ文字の文字数は22文字、現代ギリシャ語においても24文字とさらに少ない。
- ^ ルーマニアの語源は「ローマの」といった意味であり、ラテン文字を用いる。
- ^ なお、モルドバ語は1996年にモルドバ共和国の公用語ではなくなり、名称が違うだけで同じ言語ともされるルーマニア語が現在のモルドバ共和国の公用語である。
- ^ たとえば、学校教育により訓令式に慣れた日本人にとって、ヘボン式の「つ」の表記「tsu」は、見慣れないことから日本人でさえ読みづらいことがあり、あるいはMicrosoft 日本語 IMEのローマ字入力に慣れたユーザーにとって、ヘボン式のラ行に「l」を用いる表記は、事前に断りがなければ小書き仮名文字の表記として誤読される可能性がある。
- ^ 主に教育現場において、児童が混乱するなどの理由から統一が求められている[18]。なお、この記事に関して「あくまで国語教育の中で行われるローマ字教育に対する問題を、英語教育が関係するとの誤解のもと書かれている」という指摘がある[19]。
- ^ 特に紀元前338年に、第二次ラティウム戦争で共和政ローマが勝利し、それ以前のラテン人にラテン市民権を与えたことで、ローマ共和国の人々としてラテン人はローマ人と呼ばれるようになる。
- ^ なお、ルーン文字に関しては、その多くがラテン文字に由来するとされるため、異字体が別の文字として追加されただけともいえる。
出典
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- ^ 町田和彦『世界の文字を楽しむ小事典』(初版第1刷)大修館書店、東京、2011年11月15日、124-128頁。ISBN 9784469213355。 NCID BB07474128。
- ^ 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 編『図説 アジア文字入門』(初版発行)河出書房新社、東京、2005年4月30日、102頁。ISBN 9784309760629。 NCID BA71677265。
- ^ 町田和彦 編『図説 世界の文字とことば』(初版発行)河出書房新社、東京〈ふくろうの本〉、2009年12月30日、19頁。ISBN 9784309761336。 NCID BB00577235。
- ^ 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 編『図説 アジア文字入門』(初版発行)河出書房新社、東京〈ふくろうの本〉、2005年4月30日、105頁。ISBN 9784309760629。 NCID BA71677265。
- ^ 町田和彦 編『図説 世界の文字とことば』(初版発行)河出書房新社、東京〈ふくろうの本〉、2009年12月30日、61頁。ISBN 9784309761336。 NCID BB00577235。
- ^ a b 柴宜弘 著、柴宜弘 編『バルカンを知るための66章』(第2版第1刷)明石書店、東京〈エリア・スタディーズ〉、2016年1月31日、272頁。ISBN 9784750342986。 NCID BB20639903。
- ^ 柴宜弘 著、柴宜弘 編『バルカンを知るための66章』(第2版第1刷)明石書店、東京〈エリア・スタディーズ〉、2016年1月31日、269-270頁。ISBN 9784750342986。 NCID BB20639903。
- ^ 宇山智彦 著、宇山智彦 編『中央アジアを知るための60章』(初版第1刷)明石書店、東京〈エリア・スタディーズ〉、2003年3月10日、104頁。ISBN 9784750331379。 NCID BB01243734。
- ^ Zhang, Lintao「カザフスタンが表記文字を変更、ロシア文字からローマ字へ」『Reuters』(ロイター)、2017年10月30日。2023年9月18日閲覧。オリジナルの2023年4月19日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「ローマ字化、是か非か=旧ソ連のカザフで論議」『Yahoo!ニュース』(時事通信社)、2017年6月21日。2017年6月21日閲覧。
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- ^ a b c d Khalaf, Salim. “The Phoenician Alphabet” (英語). Encyclopedia Phoeniciana. Salim George Khalaf. 2023年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年2月14日閲覧。
- ^ 町田和彦 編『世界の文字を楽しむ小事典』(初版第1刷)大修館書店、東京、2011年11月15日、255頁。ISBN 9784469213355。 NCID BB07474128。
- ^ 日本語での各文字の名称は『広辞苑』第五版、岩波書店、1998年に拠る。
- ^ 編、赤羽美鳥, 澤田治美 訳(フランス語)『世界の文字の歴史文化図鑑 : ビジュアル版 : ヒエログリフからマルチメディアまで』(第1刷)柊風舎、東京、2012年4月15日、284-285頁。ISBN 9784903530574。 NCID BB09123769。
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