ゼラチン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 16:33 UTC 版)
食品としてのゼラチン
食品への利用
一般にアスピックなどのゼリー、煮こごりなどへの使用がよく知られている。マシュマロ・グミなど菓子だけでなく、焼肉などのタレやヨーグルトやクリームチーズ、ハムやソーセージなどにもゲル化剤・増粘剤・安定剤として広く利用されている。コンビニエンスストアで提供される弁当などのチルド食品では、電子レンジで加熱調理するまでスープや煮汁を固めておく用途にも利用されている。調理用の素材として販売されているゼラチンには、薄い板状の板ゼラチン、粉状の粉ゼラチン(粉末ゼラチン)、顆粒状の顆粒ゼラチンなどがあり、ゼリーをはじめ菓子などの家庭料理にも広く用いられている。
ただし、ゼラチンは食物アレルギーを引き起こすことがあるので、市販されているゼラチンを含む食品は、原則としてゼラチンを含む旨を表示することになっている。またゼラチンのうち、豚由来成分が使用されているものは、イスラム教徒にとってハラムやタブーであるので、注意が必要である[16]。
栄養特性
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 335 kJ (80 kcal) |
0 g | |
糖類 | 0 g |
食物繊維 | 0 g |
0 g | |
飽和脂肪酸 | 0.070 g |
一価不飽和 | 0.060 g |
多価不飽和 | 0.010 g |
85.60 g | |
トリプトファン | 0.000 g |
トレオニン | 1.475 g |
イソロイシン | 1.158 g |
ロイシン | 2.454 g |
リシン | 3.460 g |
メチオニン | 0.606 g |
シスチン | 0.000 g |
フェニルアラニン | 1.737 g |
チロシン | 0.303 g |
バリン | 2.081 g |
アルギニン | 6.616 g |
ヒスチジン | 0.662 g |
アラニン | 8.009 g |
アスパラギン酸 | 5.265 g |
グルタミン酸 | 8.753 g |
グリシン | 19.049 g |
プロリン | 12.295 g |
セリン | 2.605 g |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 0 µg(0%) 0 µg0 µg |
チアミン (B1) |
(2%) 0.025 mg |
リボフラビン (B2) |
(19%) 0.230 mg |
ナイアシン (B3) |
(1%) 0.085 mg |
パントテン酸 (B5) |
(3%) 0.125 mg |
ビタミンB6 |
(1%) 0.007 mg |
葉酸 (B9) |
(8%) 30 µg |
ビタミンB12 |
(0%) 0 µg |
コリン |
(8%) 38.5 mg |
ビタミンC |
(0%) 0 mg |
ビタミンD |
(0%) 0 IU |
ビタミンE |
(0%) 0 mg |
ビタミンK |
(0%) 0 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(13%) 196 mg |
カリウム |
(0%) 16 mg |
カルシウム |
(6%) 55 mg |
マグネシウム |
(6%) 22 mg |
リン |
(6%) 39 mg |
鉄分 |
(9%) 1.11 mg |
亜鉛 |
(1%) 0.14 mg |
マンガン |
(5%) 0.105 mg |
セレン |
(56%) 39.5 µg |
他の成分 | |
水分 | 13.0 g |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース(英語) |
ここでは乾燥粉末のゼラチンについて述べる。含まれる栄養素のほとんどはタンパク質である。タンパク質を構成する必須アミノ酸ではリジンが多く含まれる一方でトリプトファンはまったく含まれていない。すなわちゼラチンのアミノ酸スコアはゼロで、その第一制限アミノ酸はトリプトファンである。またメチオニンの量が相対的に少ない組成となっている。非必須アミノ酸に関しては、グリシンとプロリンが大変多く含まれており、この2つで重量比の3割強を占め、グルタミン酸も合わせると半分近い重量を占めている。
コーヒーゼリーの調理例
- コーヒーを淹れる。この際ゼラチンを溶かした水を混ぜることを考慮し、やや濃い目に淹れる方が良い。
- ゼラチンを水に溶かす(水分に対し約3%)。この際にゼラチンが塊である場合は水に溶けやすくするために細かくする。
- コーヒーを沸騰しない程度まで温めたら、ゼラチンを溶かした水を入れて粗熱をとり、冷蔵庫で1時間-2時間ほど冷却する。
- 好みに応じてシロップ、コーヒークリーム、ホイップを添える。コーヒーに添えるものであれば殆ど利用可能。
コーヒーゼリー以外にも、ワインゼリー、フルーツゼリー、マンゴープリンなど様々なゼリーに用いられる。フルーツゼリーの場合、パイナップルやキウイフルーツのように、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を含む生の果物を使った場合は、それらがゼラチンのタンパク質を分解してしまうためうまく凝固しない。プロテアーゼの一つであるパイナップルに含まれるブロメリン(プロメライン)やキウイフルーツのアクチニジン (酵素)は熱により変性しその効力を失うため、熱処理の行われたもの(缶詰)などを使えば、問題なく作ることができる。
消化と利用
1962年には、コラーゲンが加水分解されたゼラチンの摂取量が増えるほど、ヒドロキシプロリンがアミノ酸と結合したオリゴペプチドが血中に増加することが判明した[17]。2014年までの知見では、吸収されたオリゴペプチドが直接利用されてコラーゲンになるということではなく、細胞分化のための信号を送る役目を果たしていると考えられている[18]。1957年の研究では1日7グラムのゼラチンの摂取では爪のもろさが83%の人で改善、1976年の研究では14グラムのゼラチンでは70%の人で10%前後髪が太くなった[17]。
注釈
出典
- ^ ゼラチン. コトバンクより2020年9月8日閲覧。
- ^ a b 宇高 健太郎. “古典絵画における墨の研究”. 芳泉文化財団. 2019年5月10日閲覧。
- ^ a b c d e 森田恒之「膠の文化」『部落解放研究』154号、2003年10月
- ^ a b c 森井 啓二『ホメオパシー マテリアメディカ大全1(Abel-Agar)』エンタプライズ、2008年7月27日、287頁。ISBN 978-4-87291-188-6。
- ^ “膠”. 造形ファイル. 武蔵野美術大学. 2017年6月25日閲覧。
- ^ “膠水”. 造形ファイル. 武蔵野美術大学. 2017年6月25日閲覧。
- ^ 野田盛弘 (2016). “奈良の墨”. 化学と教育 (日本化学会) 64 (10): 514-517. doi:10.20665/kakyoshi.64.10_514.
- ^ “Technical aspects of Chinese painting”. A Visual Sourcebook of Chinese Civilization. 2017年6月25日閲覧。
- ^ 于非闇; 服部匡延[訳注解] (1985). “中国画顔料の研究 4”. 金沢美術工芸大学学報 (金沢美術工芸大学) 29: 65-70. NAID 110004686705.
- ^ “Thangka Painting: Introduction”. Chinavine. Chinavine. 2017年6月25日閲覧。
- ^ “Distemper”. Conservation and Art Materials Encyclopedia Online. Museum of Fine Arts, Boston. 2017年6月25日閲覧。
- ^ Roy, Ashok (1988). “The Technique of a 'Tüchlein' by Quinten Massys”. National Gallery Technical Bulletin (National Gallery, London) 12: 36-43 .
- ^ “キャンバス”. 造形ファイル. 武蔵野美術大学. 2017年6月25日閲覧。
- ^ “Tempera painting”. Encyclopædia Britannica. 2017年6月25日閲覧。
- ^ Jennings, Cathy. “絵具と紙:水彩画のしくみ”. Just Paint. Golden Artist Colors. 2017年6月25日閲覧。
- ^ “豚肉、豚由来成分はタブーです”. 国際機関日本アセアンセンター. 2022年11月14日閲覧。
- ^ a b 小山洋一「総説 天然素材コラーゲンの機能性」(pdf)『皮革科学』第56巻第2号、2010年8月14日、71-79頁。
- ^ 君羅好史、真野博「コラーゲンペプチドの食品機能性」『日本食生活学会誌』第25巻第1号、2014年、5-8頁、doi:10.2740/jisdh.25.005。
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