大淀川

デジタル大辞泉

おおよど‐がわ〔おほよどがは〕【大淀川】

読み方：おおよどがわ

宮崎県南部の川。都城盆地南部に源を発し、北流し、東に転じて宮崎平野を形成し、宮崎市で日向灘に注ぐ。長さ107キロ。

河岸の橘公園にはフェニックスが植えられている

日本の川

大淀川

宮崎の大地を潤す豊かな流れ大淀川

大淀川は、その源を宮崎県と鹿児島県の県境に位置する中岳（標高452m）に発し、沖水川等の支川を合わせながら、都城盆地を貫流して、中流の山間狭窄部を流れ、宮崎平野に入った後、本庄川等の支川を合わせ、宮崎市において日向灘に注ぐ、幹川流路延長107km、流域面積2,230km2の一級河川です。

宮崎市を流れる大淀川

河川概要

水系名 大淀川水系 河川名 大淀川 幹川流路延長 107km 流域面積 2,230km2 流域内人口 601,321人 流域関係都県 宮崎県、鹿児島県、熊本県

○拡大図

１．大淀川の歴史

"大淀川は鹿児島県の末吉町の中岳に発し、宮崎市より日向灘に注いでいます。かつて流域で生産された特産物は舟をつかって運ばれていました。寛政3年、舟の通行の障害であった観音瀬を開削する工事を行い、舟の航路が完成しました。"

大淀川の船運と観音瀬

大淀川は、その源を鹿児島県末吉町の中岳に発し、横市川(よこいちかわ)・沖水川(おきみずかわ)・庄内川(しょうないかわ)・高崎川(たかさきかわ)等を合わせつつ、都城盆地を貫流して、中流部の狭窄部に入り、岩瀬川等を合わせ、宮崎平野へ出てさらに本庄川を合わせ、宮崎市において日向灘に注いでいます。 流域内の産業は、気候に恵まれていたことから、その歴史は古く、中でも宮崎平野は大陸文化の流入を受けながら日向の穀倉地帯として発展し、弥生・古墳文化を築いてきました。現在でも関東、関西向けの施設園芸、牛・豚等の畜産、木工等の農林業による一次産業が主体となっています。 陸上交通の発達していなかった時代、大淀川は流域で生産された木炭、櫓木、樟脳、和紙などを、舟を使って河口まで運び、河口部に位置する赤江港から千石船(せんごくぶね)と呼ばれる大きな船に積み替え、江戸や大坂へ運ぶための重要な輸送路となっていました。 都城盆地を流れ出る所は観音瀬とよばれ、その昔、高さ10mほどの滝で、「白浪厳(はくろういわお)に激して水煙霧(すいえんきり)を吹き、その声とうとうとして百雷の鳴るが如し」と表現されていました。響きわたるその音から人々はそのあたりを”轟”と呼び、それが地名となったほどです。 1791（寛政3）年、都城領主であった島津久倫(しまづひさとも)は、観音瀬開削を藤崎公寛(ふじさききみひろ)に命じました。川の水量の少なくなる冬季、激流のなかでの難工事でしたが、3年後の1795（寛政6）年、幅一間（1.82m）の舟路が完成し（寛政の開削）、都城から大淀川河口まで舟の通行が可能となったのです。 下流側から見た観音瀬：（手前）寛政の開削、（奥）明治の開削 観音瀬平面図

２．地域の中の大淀川

"温暖な気候に恵まれた大淀川では四季を通じて多くの人々に利用されています。川の博物館「大淀川学習館」では、大淀川の歴史、文化を学ぶことが出来ます。大淀川下流部左岸に位置する「橘公園」は観光宮崎の顔として有名です。"

地域密着型河川の大淀川 温暖な気候に恵まれた大淀川では、四季を通じてその多様な河川空間を利用したさまざまなイベントが開催されています。また、散歩、ジョギング、クラブ活動など日常の河川敷利用も盛んであり、地域密着型河川であるといえます。 流域で開催される代表的なイベントとして、上流地区における「ウエルネスバルーンピア熱気球大会」、下流地区における「大淀川納涼花火大会」「大淀川イカダ下り大会」（宮崎市）などがあります。 大淀川納涼花火大会 ・大淀川学習館と水辺の楽校 宮崎市に大淀川学習の拠点として建設された川の博物館「大淀川学習館」には、大淀川に生息する生きものを紹介するコーナーや、四季折々の大淀川の豊かな自然を高画質なハイビジョンを用いた立体映像で紹介する川のシアターなどが設けられており、大淀川の環境や歴史、文化を学ぶことができます。この「大淀川学習館」は河川敷を整備した「水辺の楽校」と遊歩道でリンクされています。「水辺の楽校」には多目的広場や自然観察道、大淀川の水をそのまま引き込んだ「じゃぶじゃぶ池」などが整備されており、訪れた人達が安全に水辺の動植物に触れたり、水に入って遊ぶことがでるようになっています。これらの施設は子供達の総合学習の場としても活用されています。 ・観光宮崎の顔「橘公園」 「たまゆら」の文学碑と橘公園 宮崎市街地のほぼ中心を流れる大淀川下流部の河川敷は、親水公園やゴルフ場、運動公園等に整備され、住宅地からのアクセスにも適し、市民の憩いの場となっています。さらに、左岸部に位置する「橘公園」は、昭和39年、川端康成の小説「たまゆら」の舞台となった場所で、大淀川河畔とフェニックスの並木と観光ホテル群が一体となり、「観光宮崎の顔」として市民はもとより、県内外の観光客でにぎわっています。

３．大淀川の自然環境

"上流域はシラスが堆積した都城盆地を緩やかに流れ、中流の山間狭窄部を抜け、下流宮崎平野へ流れています。貴重な動植物として、魚類ではアカメが生息し、河口部ではアカウミガメの産卵が見られます。支川の本庄川は九州屈指の清流であり、アユの産卵場や、貴重な水生植物のミズキンバイが生育する良好な環境を創り出しています。"

大淀川流域の上中流部には、灰白色の火山噴出物（シラス）が厚く堆積した一大盆地（都城盆地）が形成されており、また、下流部では沖積層が広く分布した宮崎平野が形成されています。流域の年間降水量は約2,800mmで多雨地域となっています。 源流から都城盆地に至る上流部は、ほとんどがシラスによって形成された谷底平野に広がる市街地と、田園地帯を緩やかに流れ、土が剥き出しになっている自然河岸にはカワセミやヤマセミが見られます。 日向山地と鰐塚(わにづか)山地に挟まれた山間狭窄部の中流部では、自然林と人工林が混在する険しい地形の中を流れ、河岸にはオギやメダケが群生しています。また、最大支川の本庄川流域は四万十層(しまんとそう)群に覆われた急峻な地形を有し、国内でも貴重な照葉樹林帯の中を流れており、九州屈指の清流となっています。瀬にはアユの産卵場が多数存在するとともに、ワンドでは、絶滅危惧種のミズキンバイなどの水生植物やメダカが生息し良好な環境を創り出しています。 宮崎平野に広がる下流部では、瀬にはアユの産卵場が多数存在し、汽水域では、多くの魚類の稚魚が生息しているコアマモ群落が分布し、魚類では宮崎県や高知県の大きな河川の河口付近及びその近海のみに分布するアカメが生息しています。 河口周辺では準絶滅危惧種のアカウミガメの産卵がみられ、タブノキ等の河畔林で囲まれた丸島と呼ばれる中州ではミサゴやサギ類等多くの鳥類が生息するなど、多種多様な環境がみられます。 また水量が豊かなことからスズキがアユを追って中流淡水域まで遡上し、そのスズキやアユなどを捕獲する伝統漁法（あば）も現存しています。 河川水質については、中流から下流域は類型指定Ａを経年的に満足しています。上流域については家畜や家庭排水による汚濁があり、近年は回復傾向にあるものの、類型指定Ｂ類型を一部超過する地点もみられることから、流域自治体、流域住民による水環境改善の取り組みを実施しています。また、流域自治体、住民団体、河川管理者、学識経験者から成る地域協議会をつくり、地域と一体となり水環境改善の今後の取り組みについて協議を進めています。

４．大淀川の主な災害

発生日 発生原因 被災市町村 被害状況 昭和29年9月 台風12号 宮崎市 高岡町 高城町 都城市等 死傷者・行方不明者26人 家屋流失・全半壊1,615戸 床上浸水9,417戸 昭和46年8月 台風23号 宮崎市 高岡町 高城町 都城市等 負傷者4人 家屋全半壊10戸 床上浸水294戸 床下浸水1,083戸 昭和57年8月 台風13号 宮崎市 高岡町 高城町等 家屋半壊18戸 床上浸水264戸 床下浸水463戸 平成元年7月 台風11号 宮崎市 高岡町 都城市等 家屋半壊64戸 床上浸水79戸 床下浸水323戸 平成2年9月 台風20号 宮崎市 高岡町 都城市等 行方不明・負傷者6人 家屋全半壊59戸 床上浸水1,187戸 床下浸水1,908戸 平成5年7月 前線 宮崎市 高岡町 都城市等 死傷者3人 家屋全半壊14戸 床上浸水771戸 床下浸水784戸 平成9年9月 台風19号 宮崎市 高岡町 都城市等 死傷者5人 家屋全半壊25戸 床上浸水401戸 床下浸水584戸

（注：この情報は2008年2月現在のものです）

河川・湖沼名辞典

大淀川

読み方：オオヨドガワ（ｏｏｙｏｄｏｇａｗａ）

所在 鹿児島県、宮崎県

水系 大淀川水系

等級 1級

地名辞典

大淀川

読み方：オオヨドカワ（ｏｏｙｏｄｏｋａｗａ）

所在 山形県鶴岡市

地名辞典では2006年8月時点の情報を掲載しています。

ウィキペディア

大淀川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2022/08/26 07:27 UTC 版)

大淀川（おおよどがわ）は、宮崎県・鹿児島県内を流れ太平洋（日向灘・フィリピン海）に注ぐ大淀川水系の本流であり宮崎県を代表する河川である。