葉 葉の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/13 20:21 UTC 版)

葉の概略図(1–6までが葉)
  1. 葉先(葉尖、leaf apex[1][2][注釈 1]
  2. 中央脈 (central vein)[4][注釈 2]
  3. 側脈 (lateral vein)[注釈 3]
  4. 葉身 (lamina)
  5. 葉縁 (leaf margin)[注釈 4]
  6. 葉柄 (petiole)
  7. 側芽lateral bud、この場合特に腋芽 axillary bud
  8. (stem)[注釈 5]

一般的な文脈における「葉」は下に解説する普通葉を指す[10]。葉は発達した同化組織により光合成を行い、活発な物質転換や水分の蒸散などを行う[8]

葉の起源や形、機能は多様性に富み、古くから葉の定義やとの関係は議論の的であった[7][8]ゲーテ以降、葉を抽象的な概念に基づいて定義しようという試みが形態学者によりなされてきたが、ザックス以降、発生過程や生理的機能、物質代謝、そして遺伝子発現や機能などに解明の重点が置かれている[8]。茎と同様にシュート頂分裂組織に 由来するが、軸状構造で無限成長性を持つ茎とは異なり、葉は一般的に背腹性を示し、有限成長性で腋芽を生じない[8]。維管束植物の茎はほぼ必ず葉を持ち、茎を伸長させる分裂組織は葉の形成も行っているため、葉と茎をまとめてシュートとして扱う[11]

進化的起源

葉の進化的起源は系統によって異なり、コケ植物の茎葉体(配偶体)が持つ葉 (phyllid)小葉植物胞子体が持つ小葉[注釈 7]、そして種子植物の胞子体が持つ大葉は独立に進化してきた[7][9][12]。大葉は形態の変異に富み、針葉などもこれに含まれる[7]。また、大葉植物の内部系統でも、葉は最大で11回独立に進化してきたと考えられている[13]。特に、大葉シダ植物の胞子体が持つ羽葉トクサ類楔葉は被子植物の大葉とは異なる起源を持っていると考えられている[14]。大葉シダ植物の中ではマツバラン目では、葉を持たず、茎には葉状突起が側生する[15]

コケ植物の葉 (phyllid, phyllidium)[16]は配偶体にできる点で大きく異なり、普通1細胞層からなり、維管束がなく中肋という軸で支持され、維管束植物の葉とは起源も形態も本質的に異なるものである[7][17]

葉の起源を含む包括的な維管束植物の形態進化はヴァルター・マックス・ツィンマーマンが提唱した仮説、テローム説によって解釈される[18][19]。古典形態学の概念では生物がある「原型」を変形させることで進化したと考えらえており、テローム説もその流れに則っている[20]。陸上に進出した当時の陸上植物は二又分枝を行う軸により植物体が構成されていた[18]。ツィンマーマンはそれに基づき、そういった植物は形而上学的な単位である「テローム」及び「メソム」と呼ばれる軸から体が構成されていたと考え、それが癒合や扁平化などの変形をし陸上植物の根や茎や葉を形づくったと考えた[19][20]。二又分枝の末端の枝をテローム、それ以外のテロームを繋ぐ軸をメソムと呼び、二又分枝の体制はそれらの軸を単位として構成されていたとした[20]

大葉

大葉シダ植物の基部で分岐したラコフィトン Rhacophyton の化石。主軸と側軸に分かれているが、枝は二又分枝を行っている。

大葉(だいよう、または大成葉、megaphyll, macrophyll)は葉身に多数の葉脈が形成される葉である[21]。種子植物の大葉と大葉シダ植物の羽葉(うよう、frond)、そして大葉シダ植物のうち基部トクサ類がもつ楔葉(けつよう、sphenophyllまたは輪葉[22]、輪生葉[23]とも)が大葉に含まれる[24]。これらの葉はかつては相同であると考えられたこともあったが[24]、現在では何れも進化的起源や性質が異なると考えられている[12]。大葉植物(特に被子植物と大葉シダ植物)の葉跡[注釈 8]の上側の髄と皮層を繋いでいる部分には一次木部細胞に接して柔細胞が形成されている[25]大葉シダ植物羽葉では茎から葉原基に向かって葉跡が伸長する[25]。羽葉の葉跡の上にある柔組織を葉隙(ようげき、leaf gap)と呼ぶ[25]。それに対し、被子植物の葉は葉跡が葉原基から茎に向かって伸長する求基的葉である[25][26]。被子植物の葉跡の上にある柔組織は空隙(くうげき、lacuna)と呼ぶ[25]。それぞれの葉の起源も形成過程も異なるため、葉隙と空隙は相同ではないと考えられている[25]。葉隙や空隙の存在は小葉との識別点とされてきたが、葉隙の有無は完全に系統を反映しているわけではない[21]トクサ類種子植物真正中心柱では葉柄に入る葉跡が多数あり、それぞれが茎の維管束から仮軸分枝によって供給されるため葉隙はなく、メシダ科など薄嚢シダ類でも網状中心柱が小型化すると葉跡が仮軸分枝するため、見かけ上葉隙がなくなる[21]。また、トクサ類の楔葉は節に輪生し、小葉のように葉跡は1本であるが、古い時代のものでは脈が又状分岐するのもある[22][27]。構造が単純化した現生のトクサ属のものは葉緑体を持たず光合成は行わないようになっており、葉の基部が隣同士で融合して状の葉鞘を作るものがある[22][28]。しかし化石植物の楔葉はそれより大型であり、プセウドボルニア Pseudobornia では2回二又分枝した軸に細かい葉片が鳥の羽状につく形態であった[28]。かつては葉隙の有無に焦点が当てられていたこともあり、葉隙ができないトクサ類の楔葉は小葉であるとされていた[29]

大葉植物の葉はテローム説における癒合および扁平化により形成されたという解釈がなされている[30][31]。大葉の完成には、テローム軸が癒合および扁平化することに加えて背腹性左右相称性の獲得が必要であった[32]。現生大葉植物のステム群であるトリメロフィトン類 Trimerophytopsida では、二又分枝の2本の枝に強弱が生じ不等二又分枝を行うか、無限成長をする主軸と側軸の分化が起こり、単軸分枝するようになった[30][31]。また、側軸が平面に展開する傾向がある[31]。この2つの性質は大葉の形成途上と考えることができ[31]、葉の祖先である軸が側生器官の特徴を獲得した段階であると考えられる[32]。軸の癒合による葉面形成はトリメロフィトン類ではまだ進んでおらず、そこから派生した各系統で葉面形成が起こったと考えられている[13]

テローム説では二又分枝を行っていた植物が持つテローム軸が癒合し、扁平化することで大葉植物が持つ扁平な葉が形成されたと考えられているが、すでに出来上がった枝が癒合することはないため、テローム説を現代的な生物学に対応させて考えれば、複数の器官の集まりである枝系を作っていた発生遺伝子系が1つの器官である葉を作る発生遺伝子系へと進化したと解釈できる[30]。しかし、現生植物の葉でシュート頂分裂組織で機能する遺伝子制御系が機能していても、葉にシュート頂分裂組織の遺伝子系が流用されているだけかもしれないという可能性が否定できず、側枝から葉が進化した証拠としては乏しい[33]。また上記の通り、大葉は多数回起源であり、それぞれの葉形成の仕組みが共通しているとは必ずしも言えない[34]

中期デボン紀から後期デボン紀にかけての種子植物の祖先における扁平な葉身の獲得は、葉の進化において鍵となるイベントであった[35]。この扁平な葉身は光の捕捉効率を最大化させるとともに、背腹性を獲得し、葉に向軸側背軸側の2領域を作り出した[35]。向背軸極性を決めるのはYABBY遺伝子群とKANADI遺伝子群である[36]。YABBY遺伝子群は被子植物の葉形成に関わり現生裸子植物でも保存されているが、種子植物以外には存在しない[34][37]。そのため、大葉形成の遺伝子系は種子植物か木質植物の共通祖先でできあがった可能性がある[37]

大葉シダ植物においては、化石植物群であるコエノプテリス類 Coenopteridales のスタウロプテリス科とジゴプテリス科では茎と羽葉の分化が不十分で、不完全な背腹性を獲得していた[38]。葉柄に当たる部分の維管束はまだ放射相称で葉態枝と呼ばれ、分枝が進んだ頂端付近の羽軸や小羽軸で背腹性が生じる[38]。現在の大葉シダ植物が持つ羽葉では背腹性および左右相称性を獲得している[26]

小葉

突起仮説に基づく小葉の起源。

小葉(しょうよう、または小成葉、microphyll)は原生中心柱や板状中心柱から葉隙を形成せず生じ、通常1本のみの葉脈が通る葉である[39][21]。小葉植物の葉の起源は、突起仮説に基づいた解釈が有力だと考えられている[39][19]。ほかにテローム説の1つであるテローム軸の退縮説、胞子嚢を頂生する軸の退化説がある[19][40]。後二者の仮説は証拠に乏しいが、完全に否定されたわけではなく、今後の小葉類の分子発生学的研究による解明が俟たれる[19]

突起仮説1935年フレデリック・バウアーによって提唱されたもので、軸の表面に生じた棘状の突起が進化の過程で大きくなり、そこに維管束が入り込むことによって形成されたとするものである[39][19][40]。これは化石証拠が得られている[19]。すなわち、小葉植物ステム群であるゾステロフィルム類のソードニア Sawdonia では維管束を持たない突起のみが存在し、現生小葉植物姉妹群であるドレパノフィクス類のアステロキシロン Asteroxylon では維管束は突起の付け根まで伸び、古生リンボク目のレクレルキア Leclercqia や現生小葉植物では小葉中に1本の葉脈がみられる[39][19]

葉状突起

Tmesipteris lanceolata の葉状突起。

大葉シダ植物ハナヤスリ亜綱マツバラン目では、葉を持たず、茎には葉状突起(ようじょうとっき、foliar appendage)が側生する[15][41]マツバラン属 Psilotum の葉状突起には維管束がないが、イヌナンカクラン属 Tmesipteris の葉状突起は葉隙がなく、1本の維管束が伸びている[15]。また、ソウメンシダ Psilotum complanatum では分枝した維管束が葉状突起の基部まで伸びている[41]。これは小葉植物の小葉と類似しているが、別起源である[15]

外部形態

形態学的用語

葉緑体を持ち、光合成を行う葉を普通葉(ふつうよう、foliage leaf)と呼ぶ[10][42]。普通葉の多くは扁平であるが、針葉樹の針状葉(しんじょうよう、needle leaf)やネギ属 Alliumヒガンバナ科)やイグサ属 Juncusイグサ科)が持つ管状葉(かんじょうよう、tubular leaf)も普通葉に含まれる[10]。また、1個体に異なる形態の普通葉が生じる現象を異形葉性(いけいようせい、heterophylly)と呼ぶ[43][注釈 9]。より広義には、普通葉の形態に限らずその種の特徴として常に2種類以上の異なる形態の葉を持つことを指す[43][45]。異形葉性を示す葉を異形葉(いけいよう、heterophyll)という[45]

葉の構成部分は基部から順に、托葉葉柄葉身の3部に大別される[10][42]托葉(たくよう、stipule)は葉の基部付近の茎または葉柄上に生じる葉身とは異なる葉的な器官で[10]葉柄(ようへい、petiole)は茎と葉身を繋ぎ、葉身を支持する[46]。被子植物の葉が持ち、普通扁平な光合成を行う主要な部分を葉身(ようしん、lamina, blade)という[35][46]。葉身の組織は葉脈葉肉表皮からなる[46]

托葉や葉柄を欠く葉も多い[10][46][47]。葉柄を欠く葉を無柄葉(むへいよう、sessile leaf)という[46]。また、葉身を欠くものもあり、偽葉(ぎよう、phyllode)と呼ばれる[47][48]

普通葉の形状から木本植物を大別した場合、広葉樹(こうようじゅ、broad-leaved tree, hardwood)と針葉樹(しんようじゅ、needle-leaved tree, acicular tree)に分けられる[49]。基本的には系統関係と対応しているため、イチョウ Ginkgo bilobaイチョウ科)、ソテツ Cycas revolutaソテツ科)、ナギ Nageia nagi およびイヌマキ Podocarpus macrophyllusマキ科)といった裸子植物は広葉をもつが広葉樹ではない[49]。このうち、マキナギは、鱗状葉を持つヒノキイブキヒノキ科)、針状葉を持つマツ科や旧スギ科とともに針葉樹に含まれる[49]ガンコウランツガザクラなどの針状の葉(エリカ葉)を持つ広葉樹もある[49][50]イチョウソテツヤシ類はどちらにも含まれない[49]。また、針葉樹の葉は形態によって針形葉線形葉鱗形葉に分けられる[51](下記「#針葉樹の普通葉」節を参照)。

最長の葉はラフィアヤシ Raphia farinifera で、20 m になるが掌状複葉であるためいくつかの小葉に分かれており、単葉ではインドクワズイモ Alocasia macrorrhizos が最大で最長となる[52]

複葉

ワサビノキ Moringa oleifera の3回奇数羽状複葉

葉身が複数の小部分に分かれた葉のことを複葉(ふくよう、compound leaf)とよぶ。それに対し、葉身が1枚の連続した面からなる葉を単葉(たんよう、simple leaf)と呼ぶ[53]。複葉は単葉の葉身の切れ込みが深くなり、主脈の部分にまで達した状態であると解釈される[54]

複葉における、分かれている葉身の各片を小葉(しょうよう、leaflet)、小葉が付着する中央の軸部を葉軸(ようじく、rachis)と呼ぶ[54][55]。小葉が柄を介して葉軸につく場合、その柄は小葉柄(しょうようへい、petiolule)と呼ばれる[54][55]。葉片が単葉か複葉の一部かは腋芽の有無によって区別され、複葉の小葉柄の基部には腋芽ができない[55]

大葉シダ植物の複葉(羽葉)の場合、小葉に当たる部分は羽片(うへん、pinna)と呼ばれる[56]

葉縁の形質

鋸歯の形状
A 全縁、B 毛縁、C–E 鋸歯縁、F 重鋸歯縁、G 歯牙縁、H 円鋸歯状縁、I 微突形、J 条裂
分裂葉の形状
A 全縁の不分裂葉、B 浅裂、C 深裂、D 全裂、E 波状縁、F 欠刻縁、G 掌状葉、H 三裂葉

葉縁にみられる鋸の歯のような細かな切れ込みを鋸歯(きょし、serration, teath)という[57]。鋸歯を持たず、切れ込みもないことを全縁(ぜんえん、entire)という[57][2][58]

凹凸が大きく葉全体の形にかかわるほどの切れ込みがある単葉を分裂葉(ぶんれつよう、lobed leaf)と呼ぶ[55]。この突出部を裂片(れっぺん、lobe)という[2]。それに対して裂片のない葉を不分裂葉という[59]。切れ込みが浅いものを浅裂(せんれつ、lobed, lobate)、やや深く切れ込むものを中裂(ちゅうれつ、cleft)深く裂けていれば深裂(しんれつ、parted, partile)、完全に裂けたものを全裂(ぜんれつ、dissected)という[2]。裂片が放射状に配置し、のようになったものを掌状(しょうじょう、palmate)、裂片が左右に列をなし、鳥の羽のようになったものを羽状(うじょう、pinnate)という[2]。裂ける深さと形を組み合わせて、葉の形状を表現することが多く、例えばヤツデの葉は掌状深裂ヨモギの葉は羽状深裂する。

有鞘葉

ワタスゲ Eriophorum vaginatum の稈の基部に見られる鞘葉。

単子葉植物の葉の多くは有鞘葉(ゆうしょうよう、sheathing leaf)となるものが多い[60]。有鞘葉は扁平な部分と基部の葉鞘(ようしょう、leaf sheath)からなる[60]。葉鞘はイネ科カヤツリグサ科ツユクサ科ショウガ科ラン科などに一般的で、ユリ科の一部にも見られる[60]

葉鞘はつねに地上茎の節から生じるわけではなく、地下茎から直接生じて順次内側の葉鞘を包み、筒状となって地上茎のように見えることがある[60]。こうした葉鞘の集まりを偽茎(ぎけい、pseiudostem)と呼ぶ[60]ガマ科ショウガ科テンナンショウ属 Arisaemaサトイモ科)、シュロソウ属 Veratrumシュロソウ科)、スズラン属 Convallariaキジカクシ科)などに見られる[60]

葉身が発達せず、葉鞘だけの葉を鞘葉(しょうよう、sheath leaf)と呼ぶ[60]。鞘葉はイグサ科イグサ Juncus decipiens やミヤマイ Juncus beringensisカヤツリグサ科ワタスゲ Eriophorum vaginatumホタルイ Schoenoplectiella hotaruiカンガレイ Schoenoplectiella triangulatusフトイ Schoenoplectus tabernaemontaniハリイ属 Eleocharis などに見られる[60]。これらではの基部に小数個の鞘葉が重なり合っている[60]。また、ホシクサ属 Eriocaulonホシクサ科)では茎の下部に常に1個の鞘葉がある[60]

また、有鞘葉のうち花序に腋生するものを苞鞘(ほうしょう、bract sheath)という[61]スゲ属 Carex の苞は苞鞘であることも無鞘であることもあり、シバスゲ節 sect. Praecoces やシオクグ節 sect. Paludosae の小穂の苞は少なくとも最下が苞鞘である[61]

根生葉

根生葉(こんせいよう、または根出葉、radical leaf)は地上茎の基部の節に付き、根から生じているように見える葉である[62]。大葉シダ植物や草本性被子植物に多い[62]。バラの花冠状に放射状に重なり合ってつき、地表に密着して越冬する根生葉をロゼット葉(ロゼットよう、rosette leaf)と呼ぶ[62]

なお、根生葉に対し伸長した地上茎に側生する葉は茎生葉(けいせいよう、または茎葉、cauline leaf)と呼ぶ[62]

楯状葉

葉柄の先に雨傘状の葉身を持つ葉を楯状葉(盾状葉、じゅんじょうよう、peltate leaf)という[63][64]ハスジュンサイノウゼンハレンサンカヨウ属、ミヤオソウ属、テンジクアオイ属、ハスノハカズラ属などで見られるほか、ヤブレガサタイミンガサのように葉身が放射状に分裂しているものもある[63][64]。また、楯状葉葉身の葉縁の拡大があまり進行せず、葉身の葉縁方向への平面成長が進んだ形態は、杯状葉または嚢状葉と呼ばれる[65]杯状葉(盃状葉、はいじょうよう、aecidial leaf)は奇形として知られており、ラッパイチョウクロトン、シナガワハギなどによく観察されている[65][66][64]

針葉樹の普通葉

幅広い葉を持つ Agathis dammaraナンヨウスギ科

古くから針葉樹類と言われた裸子植物の系統は[67]、分子系統解析が進んだ現在ではマツ科と残りの針葉樹類(広義のヒノキ目)の2系統が含まれることが分かっている[68][69]。現生針葉樹類の普通葉は全て単葉である[68][70]。その中でも、多くの針葉樹類の葉は細くて先細りとなるため、針葉(しんよう、needles)と表現される[70]。ただし、ナギモドキ属 Agathisナンヨウスギ属 Araucariaナンヨウスギ科)、マキ科(ナギ属 Nageia)では著しく幅の広い葉を持つ[70][71]。ヒノキ科以外の多くの針葉樹類の葉は長枝に発生し、螺旋葉序または互生葉序となる[70]ヒノキ科では全て十字対生葉序か輪生葉序である[70]

現生針葉樹の葉は、その形態によって針形葉、線形葉、鱗形葉と呼び分けられる[51]Laubenfels (1953) は現生針葉樹類の葉を、その3つにナギなどの幅広い葉を加えた4つのタイプに分類した[71]

針状で扁平ではないものを針形葉(しんけいよう、または針状葉、針葉、needle leaf)という[51][10][50]スギは針形葉が螺旋状につき、葉の基部が小枝と一体化している[51]マツ属 Pinus ではシュートに長枝と短枝が分化し、針形葉が短枝に分類群ごとに1–5本の一定の数ずつつく[51][72][70]。この短枝は俗に「松葉」と呼ばれる[72]クロマツでは短枝に2本の針形葉、ダイオウマツは短枝に3本の針形葉、ゴヨウマツは短枝に5本の針形葉をつける[51]。また、マツの葉は等面葉である[50]

幅が狭く扁平なものを線形葉(せんけいよう、または線状葉、線葉)という[73]。中脈が明らかで、背軸面には気孔気孔帯がみられることが多い[73]モミツガマツ科)、カヤイヌガヤイチイ科)などには2本の気孔帯が認められる[73]イヌマキマキ科)の線形葉は中脈が顕著である[73]コウヤマキコウヤマキ科)の線形葉は短枝につく2本の葉が合着したものである[73]

扁平な葉が十字対生して茎を包んでいるものを鱗形葉(りんけいよう、または鱗状葉、鱗葉、scale like leaf)と呼ぶ[74][75][注釈 10]ヒノキ科の普通葉に多く[75]ヒノキサワラアスナロコノテガシワに見られる[74]ビャクシンの葉は普通、鱗形葉であるが、ときどき針形葉を交じる[74]


注釈

  1. ^ 葉頂[1][2]と呼ばれ、葉頭や葉端などの訳語も知られる[3]。なお、それに対して葉身の基部は葉脚または葉底 (leaf base) と呼ばれるが、leaf base の語は葉柄も含む葉全体の基部を表す葉基に対しても用いられる[1]
  2. ^ 中脈[4][5]、主脈[4]、一次脈 (primary vein)[6]とも呼ばれる。
  3. ^ 図中の矢印は一次側脈 (primary lateral vein) で[4]、二次脈 (secondary vein) と呼ばれることもある[6]。そこから分枝した脈は二次側脈 (secondary lateral vein) または三次脈 (tertiary vein) と呼ばれる[6]
  4. ^ 葉縁の突起は鋸歯 (serration) と呼ばれる。
  5. ^ 葉・側芽を合わせてシュートと呼ぶ
  6. ^ 以降注記なしの立体ラテン文字は英名を示す。
  7. ^ 複葉の各裂片も小葉 leaflet と呼ばれるが、別の用語である[7]
  8. ^ 茎から葉に繋がる維管束
  9. ^ 環境条件によって異なる形態の葉を形成することをヘテロフィリー heterophylly、環境条件が一定でも成長過程で異なる形態の葉を形成することをヘテロブラスティー heteroblasty と呼び分け、それらを総称して「異形葉性」と呼ぶこともある[44]
  10. ^ 下記の鱗片葉とは異なる[75]
  11. ^ 旧シロモジ属 Parabenzoin を含む
  12. ^ ホメオボックス転写因子をコードする[115]。クラスⅠ KNOX 遺伝子とも[110]
  13. ^ syn. Aspidium cicutarium

出典

  1. ^ a b c 巌佐ほか 2013, p. 1420i.
  2. ^ a b c d e f 巌佐ほか 2013, p. 1424e.
  3. ^ 葉先. コトバンクより。
  4. ^ a b c d 清水 2001, p. 134.
  5. ^ 郡場 1951, p. 141.
  6. ^ a b c 清水 2001, p. 136.
  7. ^ a b c d e f g h 清水 2001, p. 119.
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 巌佐ほか 2013, p. 1069a.
  9. ^ a b c 長谷部 2020, p. 31.
  10. ^ a b c d e f g h 清水 2001, p. 120.
  11. ^ 清水 2001, p. 167.
  12. ^ a b 長谷部 2020, p. 152.
  13. ^ a b 西田 2017, p. 96.
  14. ^ 西田 2017, p. 85.
  15. ^ a b c d 長谷部 2020, p. 171.
  16. ^ 日本植物学会 1990, p. 519.
  17. ^ 伊藤 2012, p. 114.
  18. ^ a b 長谷部 2020, p. 70.
  19. ^ a b c d e f g h 西田 2017, pp. 93–94.
  20. ^ a b c 長谷部 2020, p. 71.
  21. ^ a b c d 西田 2017, p. 92.
  22. ^ a b c 岩槻 1975, pp. 170–173.
  23. ^ 長谷部 2020, pp. 153–157.
  24. ^ a b Kenrick & Crane 1997, pp. 294–297.
  25. ^ a b c d e f 長谷部 2020, pp. 158–159.
  26. ^ a b c 西田 2017, p. 155.
  27. ^ 加藤 1999, pp. 28–29.
  28. ^ a b 西田 2017, pp. 148–154.
  29. ^ 西田 2017, p. 91.
  30. ^ a b c 長谷部 2020, p. 144.
  31. ^ a b c d 西田 2017, p. 88.
  32. ^ a b 西田 2017, p. 158.
  33. ^ a b 長谷部 2020, p. 146.
  34. ^ a b 長谷部 2020, p. 148.
  35. ^ a b c d e f Taiz & Zeiger 2017, p. 553.
  36. ^ Taiz & Zeiger 2017, p. 558.
  37. ^ a b 長谷部 2020, p. 176.
  38. ^ a b 西田 2017, p. 156.
  39. ^ a b c d 長谷部 2020, p. 128.
  40. ^ a b Kenrick & Crane 1997, pp. 288–292.
  41. ^ a b ギフォード & フォスター 2002, p. 101.
  42. ^ a b 原 1994, p. 36.
  43. ^ a b c d e f 清水 2001, p. 164.
  44. ^ 長谷部 2020, p. 184.
  45. ^ a b 巌佐ほか 2013, p. 62f.
  46. ^ a b c d e 清水 2001, p. 122.
  47. ^ a b 原 1994, p. 37.
  48. ^ a b c d e f g h i j k l m n 清水 2001, p. 142.
  49. ^ a b c d e 清水 2001, pp. 23–24.
  50. ^ a b c d e f g 原 1994, p. 42.
  51. ^ a b c d e f 岩瀬 & 大野 2004, p. 74.
  52. ^ 湯浅浩史『世界の葉と根の不思議:環境に適した進化のかたち』誠文堂新光社、8頁。ISBN 978-4416212110 
  53. ^ 巌佐ほか 2013, p. 896i.
  54. ^ a b c 巌佐ほか 2013, p. 1200h.
  55. ^ a b c d 清水 2001, p. 126.
  56. ^ 清水 2001, p. 132.
  57. ^ a b 巌佐ほか 2013, p. 329c.
  58. ^ 清水 2001, p. 276.
  59. ^ 清水 2001, p. 127.
  60. ^ a b c d e f g h i j k l 清水 2001, p. 124.
  61. ^ a b c d e 清水 2001, p. 152.
  62. ^ a b c d e 清水 2001, p. 140.
  63. ^ a b 熊沢 1979, p. 157.
  64. ^ a b c 小倉 1954, p. 139.
  65. ^ a b 熊沢 1979, p. 158.
  66. ^ 熊沢 1979, p. 159.
  67. ^ ギフォード & フォスター 2002, p. 405.
  68. ^ a b 長谷部 2020, p. 199.
  69. ^ Christopher J. Earle. “Gymnosperms”. The Gymnosperm Database. 2023年6月29日閲覧。
  70. ^ a b c d e f ギフォード & フォスター 2002, p. 413.
  71. ^ a b ギフォード & フォスター 2002, p. 414.
  72. ^ a b 長谷部 2020, p. 209.
  73. ^ a b c d e 岩瀬 & 大野 2004, p. 75.
  74. ^ a b c 岩瀬 & 大野 2004, p. 76.
  75. ^ a b c d e f g h i j k l m 清水 2001, p. 144.
  76. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 清水 2001, p. 148.
  77. ^ a b 清水 2001, p. 26.
  78. ^ 原 1994, p. 44.
  79. ^ 小倉 1954, p. 144.
  80. ^ 加藤 1997, p. 80.
  81. ^ a b 清水 2001, p. 108.
  82. ^ 熊沢 1979, pp. 31–32.
  83. ^ a b ギフォード & フォスター 2002, p. 493.
  84. ^ 熊沢 1979, p. 262.
  85. ^ a b c d e f g 原 1994, p. 67.
  86. ^ a b c 原 1994, p. 43.
  87. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 清水 2001, p. 146.
  88. ^ 熊沢 1979, p. 232.
  89. ^ a b 小倉 1954, p. 145.
  90. ^ 巌佐ほか 2013, p. 929e.
  91. ^ 熊沢 1979, p. 261.
  92. ^ a b c d e f g 長谷部 2020, p. 59.
  93. ^ 清水 2001, p. 130.
  94. ^ 清水 2001, p. 202.
  95. ^ 巌佐ほか 2013, p. 1425a.
  96. ^ a b 原 1994, p. 59.
  97. ^ a b c d e f g 清水 2001, p. 158.
  98. ^ 原 1994, p. 95.
  99. ^ a b c 原 1972, p. 178.
  100. ^ a b 原 1972, p. 179.
  101. ^ a b c d e f 長谷部 2020, p. 89.
  102. ^ a b c 巌佐ほか 2013, p. 1426d.
  103. ^ a b c 原 1994, p. 61.
  104. ^ a b c 清水 2001, p. 160.
  105. ^ a b c d 原 1972, p. 180.
  106. ^ a b c 原 1994, p. 65.
  107. ^ a b c d e f g h i j k l m 清水 2001, p. 161.
  108. ^ a b 原 1994, p. 66.
  109. ^ 巌佐ほか 2013, p. 683e.
  110. ^ a b c d e f g 巌佐ほか 2013, p. 1422b.
  111. ^ a b c d Taiz & Zeiger 2017, p. 555.
  112. ^ a b 原 1972, p. 72.
  113. ^ a b c 原 1972, p. 73.
  114. ^ 原 1994, p. 143.
  115. ^ a b 長谷部 2020, p. 145.
  116. ^ a b c 長谷部 2020, p. 85.
  117. ^ a b c d 長谷部 2020, p. 162.
  118. ^ a b ギフォード & フォスター 2002, pp. 253–254.
  119. ^ 岩槻 1992, p. 12.
  120. ^ a b c 長谷部 2020, p. 34.
  121. ^ a b 巌佐ほか 2013, p. 653b.
  122. ^ a b 清水 2001, p. 213.
  123. ^ 清水 2001, p. 216.
  124. ^ a b 巌佐ほか 2013, p. 1423f.
  125. ^ a b 熊沢 1979, p. 181.
  126. ^ 清水 2001, p. 224.
  127. ^ a b c 熊沢 1979, p. 172.
  128. ^ a b c d e f 巌佐ほか 2013, p. 1207e.
  129. ^ a b 清水 2001, p. 222.
  130. ^ 熊沢 1979, p. 177.
  131. ^ 巌佐ほか 2013, p. 1207h.
  132. ^ a b c d 熊沢 1979, p. 178.
  133. ^ a b 熊沢 1979, p. 174.
  134. ^ a b 熊沢 1979, p. 175.
  135. ^ a b 熊沢 1979, p. 176.
  136. ^ a b 西田 2017, p. 295.
  137. ^ a b Taiz & Zeiger 2017, p. 245.
  138. ^ a b c Taiz & Zeiger 2017, p. 246.
  139. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 巌佐ほか 2013, p. 100d.
  140. ^ a b c d e f g h i j Taiz & Zeiger 2017, p. 249.
  141. ^ a b c d e f g h i 塩井, 井上 & 近藤 2009, p. 270.
  142. ^ カラーリーフプランツ”. 情報・知識&オピニオン imidas. 2024年3月22日閲覧。
  143. ^ カラーリーフプランツ:葉の美しい熱帯・亜熱帯の観葉植物547品目の特徴と栽培法 著者: 土橋豊、 椎野昌宏 p.17
  144. ^ a b 井出, 純哉 (2023-03-01). “植物の赤い新葉の機能: 赤色は植食性昆虫に対する警告色なのか” (英語). 化学と生物 61 (3): 139–144. doi:10.1271/kagakutoseibutsu.61.139. ISSN 0453-073X. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/61/3/61_610210/_article/-char/ja/. 
  145. ^ クリスマスに人気のポインセチア、なぜ赤い?”. ガジェット通信 GetNews (2017年12月6日). 2024年3月22日閲覧。
  146. ^ Fenestraria aurantiaca. コトバンクより。
  147. ^ ハマキガ. コトバンクより。






葉と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「葉」の関連用語

検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



葉のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの葉 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS