葉 生理機能

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/13 20:21 UTC 版)

生理機能

光合成

葉は植物の体において、主な光合成の場となる[10]。光合成の代謝過程は葉の柵状組織と海綿状組織の葉肉細胞で起こる[137]。光合成を行う細胞の二酸化炭素の需要と、孔辺細胞による二酸化炭素の供給の協調作用が純CO2吸収として測定される光合成速度に影響する[137]

光合成は葉の構造的特性と機能的特性に影響される[138]。葉の内部構造や葉の方向は光合成のための光吸収を最大化するようになっている[138]。また、葉は生育環境に対し馴化する[138]

陸上植物は生育する環境の光条件に応じて形態的、生理的に異なった性質を持つ葉を作ることが多い[139]。弱光下で形成された葉を陰葉(いんよう、shade leaf)、強光下で形成された葉を陽葉(ようよう、sun leaf)という[139]。種によって陰葉と陽葉の分化の程度は異なる[139]。陰葉と陽葉のどちらが分化するかは、葉が発生するシュート頂ではなく既に成熟している葉に対する光環境で決まる[139]

陰葉と陽葉には以下のような違いがある。

陰葉 陽葉
形態的特徴 (相対的に)面積が大きい[139] (相対的に)面積が小さい[139]
厚さが薄い[139][140][141] 厚さが分厚い[139][140][141]
柵状組織の発達が悪い[139][140][105] 柵状組織が発達し、多層になる[139][140][105]
生化学的特徴
クロロフィルa/b比が小さい[139][140] クロロフィルa/b比が大きい[139][140]
弱光下でも光合成効率をあげられるように、
反応中心あたりのクロロフィル量が多い[140]
ルビスコを多く持ち、炭酸同化を増加させ、キサントフィルサイクルの構成要素の
プールを大きくすることにより過剰エネルギーを放散する[140]
生理的特徴 光飽和時の葉面積当たりの光合成速度が小さい[139][141] 光飽和時の葉面積当たりの光合成速度が大きい[139][141]
葉面積当たりの呼吸速度が小さく、光補償点が低い[139] 葉面積当たりの呼吸速度が大きく、光補償点が高い[139]

単位葉面積当たりの重さを比葉重(ひようじゅう、LMA, leaf matter per area)といい、単位はg/m2である[141]。比葉重の大きな葉は物理的な強度が高い傾向にある[141]。陰葉より、強風などのストレスを受ける開けた環境の陽葉の方が比葉重が大きい[141]。また、草本植物に比べ木本植物の方が比葉重は大きく、木本の中でも落葉樹より常緑樹の方が比葉重が大きい[141]。常緑樹の葉は長い場合10年もの寿命を持つことがあり、長期間にわたって生存できるため、比葉重が大きい葉を作る[141]

また、ギャップ形成などにより植物が置かれた環境が変わると、植物はその環境に適応する。葉が生育環境に適した性質を持つように生化学的および形態学的に調節された発生学的過程を馴化(順化、じゅんか、acclimation)という[140]。馴化は新たに展開する葉においても、既に成熟した葉においても起こりうる[140]

落葉

紅葉したカエデの葉
黄葉の落葉

葉は二次肥大成長を行わず、一定の季節に茎との境界に離層を分化して母体から脱落し、茎の表面に葉痕を残すことが多い[8]温帯では、前に行うものが多いが、これを落葉という。落葉の有無により、落葉樹常緑樹に区別する。落葉に際しては葉が枯れるので、黄色から茶色になることが一般的だが、特にはっきりとした色を発色するものがあり、黄色くなるものを黄葉、赤くなるのを紅葉という。

葉を落とす時期は、温帯では冬期の前が多いが、熱帯の乾燥地では、乾季の前に葉を落とす。また、常緑樹であっても、葉の寿命がくれば葉を落とす。葉の寿命は往々にして複数年にわたるが、温帯では、新芽が出る時期は初夏であり、この頃に古い葉を落とす例が多い。特殊な例としては、南西諸島等で植栽に用いられるのデイゴマメ科)は、花を咲かせる枝に限って葉を落とす。また、アコウクワ科)は、不定期に木全体の葉を落とし、新芽を出す。また、一般の落葉樹でも、落葉の時期でなくとも、乾燥がひどかったり、葉が塩害にあった時など、不特定の時期にも葉を落とす場合がある。

落葉を行う場合、葉柄のつけ根で葉がきれいに落ちるが、これは、ここに離層と呼ばれる切り離し面ができるためである。これは植物が自ら作るものである。押し葉標本を作ると葉がボロボロ落ちる木があるが、これも標本の枝中の水分が乾き切って死ぬ前に、離層を作ってしまうためである。したがって、葉を落とさないためには、枝を切り落としてすぐ、熱湯などで枝を殺してしまうとよいとも言う。

常緑植物でも一部の種、針葉樹スギニオイヒバ、メギ科のナンテンベンケイソウ科の多肉植物などで、冬には紅葉するが枯れて落葉はせず、春には再び緑色に戻るものがある。赤い色素は紫外線を吸収する作用があり、光合成活動が低下している時期に過剰な光による組織への悪影響(光阻害)を防止する効果があると考えられている。

葉痕の例


注釈

  1. ^ 葉頂[1][2]と呼ばれ、葉頭や葉端などの訳語も知られる[3]。なお、それに対して葉身の基部は葉脚または葉底 (leaf base) と呼ばれるが、leaf base の語は葉柄も含む葉全体の基部を表す葉基に対しても用いられる[1]
  2. ^ 中脈[4][5]、主脈[4]、一次脈 (primary vein)[6]とも呼ばれる。
  3. ^ 図中の矢印は一次側脈 (primary lateral vein) で[4]、二次脈 (secondary vein) と呼ばれることもある[6]。そこから分枝した脈は二次側脈 (secondary lateral vein) または三次脈 (tertiary vein) と呼ばれる[6]
  4. ^ 葉縁の突起は鋸歯 (serration) と呼ばれる。
  5. ^ 葉・側芽を合わせてシュートと呼ぶ
  6. ^ 以降注記なしの立体ラテン文字は英名を示す。
  7. ^ 複葉の各裂片も小葉 leaflet と呼ばれるが、別の用語である[7]
  8. ^ 茎から葉に繋がる維管束
  9. ^ 環境条件によって異なる形態の葉を形成することをヘテロフィリー heterophylly、環境条件が一定でも成長過程で異なる形態の葉を形成することをヘテロブラスティー heteroblasty と呼び分け、それらを総称して「異形葉性」と呼ぶこともある[44]
  10. ^ 下記の鱗片葉とは異なる[75]
  11. ^ 旧シロモジ属 Parabenzoin を含む
  12. ^ ホメオボックス転写因子をコードする[115]。クラスⅠ KNOX 遺伝子とも[110]
  13. ^ syn. Aspidium cicutarium

出典

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