空気 空気の概要

空気

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 03:18 UTC 版)

一般に空気は、無色透明で、複数の気体の混合物からなり、その組成は約8割が窒素、約2割が酸素でほぼ一定である。また水蒸気が含まれるがその濃度は場所により大きく異なる。工学など空気を利用・研究する分野では、水蒸気を除いた乾燥空気(かんそうくうき, dry air)と水蒸気を含めた湿潤空気(しつじゅんくうき, wet air)を使い分ける。

空気と大気

地球を覆う気体の層を「大気圏」といい[2]、その気体そのものを日常会話や工業分野などでは「空気」[1]気象学など地球科学の分野では「大気[3]とも呼ぶ。普通日常会話で「空気」という場合には、人間が暮らしている中で身の回りに存在する地上の空気を指し、場合によっては飛行機が航行する高度のような上空の空気を指す。一方、地球科学においては同じものを「大気」という。なお、日本語における「空気」には、その場にいる人々の気分やその場の雰囲気という意味もある[4]

空気の物性

乾燥した空気1 L重さは、セ氏0度、1気圧(1 atm)のときに1.293 gである[1]。1 Lで1 gというと一見小さいようであるが、垂直に数十kmも積み重なることで、地表付近の空気には大きな重さ(圧力)がかかる。1気圧は1.033 kgf/cm2なので、地表では1 cm2あたりおよそ1 kgの物体が乗っているような力が圧力として加わっている。1平方メートルあたりでは10トン、つまり土砂を積んだダンプカーが乗っているような大きな力になる。これは月と違って地球には厚い大気の層があるためであり、地表付近ではこの圧力のために空気は密集した状態になっていて、真空状態とは違った様々な影響がある。

(例)

風速、つまり空気の移動速度が大きくなるにつれ、衝突する空気の総量が増え、大きな風圧が生じることになる。帆船ヨットウィンドサーフィンなどはこれを利用して大きな推力を得ているわけであるし、台風などでは巨大な破壊力となる。

また、空気は流体であり、空気の中を進む物体には揚力抗力(空気抵抗)が生じる。飛行機は大きな揚力を得ることで空気中を飛揚する。

密度(0 ℃ 1 atm) 1.293 kg/m3
平均モル質量 28.966 g/mol
熱膨張率(100 ℃ 1 atm) 0.003671 /K [注 1]

常温常圧の空気はほぼ理想気体として振る舞い、t [℃]における空気の密度ρ [kg/m3]は、大気圧をP [atm]、水蒸気圧をe [atm]とすると、

乾燥大気の組成を示す円グラフ。下の円は微量成分の詳細。

地球の大気は窒素、酸素のほか多数の微量成分で構成される。1cm3当たり3×1019個の分子が含まれる。[11]以下に国際標準大気(1975)[12]における、海面付近(1気圧)の、エアロゾル等の微粒子を除いた清浄な乾燥空気の組成を解説する。

(*)を付けた成分は、呼吸光合成などの生物の活動、車や工場の排気ガスなどの産業活動、空気中で起こる光化学反応に伴う合成・分解により、場所により大きく変動する。

実際の空気中で最も変動するのは水蒸気であり、最大で4%程度、低いときは0%近くまで低下する。全球地表平均では約0.4%となる。(下表には含まない)

(+)をつけた成分は、人為的に排出される成分であり、濃度が近年著しく変化しているものである。主に産業革命以降完全に人為的に排出されて大気中に残存した成分と、元々自然界で排出されていたが産業革命以降人為的に大量に排出されて濃度が高まった成分とがある。

数値の右の(>)は、その値が通常の空気における最大値であることを示す。「1ppm>」であれば、最大1ppm、通常はそれ以下であることを意味している。

表1: 乾燥空気の主な組成(国際標準大気、1975年)
成分 化学式 体積比 割合(vol%) ppm ppb 備考
窒素 N2 78.084 780,840 - [12]
酸素 O2 20.9476 209,476 - [12]
アルゴン Ar 00.934 009,340 - [12]
二酸化炭素 CO2 00.041 000,410 - +*2018年の値[13][12][注 2][14]
ネオン Ne 00.001818 000,018.18 - [12]
ヘリウム He 00.000524 000,005.24 - [12]
メタン CH4 00.000181 000,001.81 1813±2 +2011年の値[13][12][注 3]
クリプトン Kr 00.000114 000,001.14 - [12]
二酸化硫黄 SO2 00.0001> 000,001> - *[12]
水素 H2 00.00005 000,000.5 - [12]
一酸化二窒素 N2O 00.000032 000,000.32 0324.2±0.1 +*2011年の値[13][12][注 4]
キセノン Xe 00.0000087 000,000.087 0087 [12]
オゾン O3 00.000007> 000,000.07> 0070> *[注 5][12]
二酸化窒素 NO2 00.000002> 000,000.02> 0020> *[12]
ヨウ素 I2 00.000001> 000,000.01> 0010> *[12]
表2: 乾燥空気の微量成分
成分 化学式 体積比割合(vol%) ppm ppb ppt 備考
クロロメタン CH3Cl 約0.000000055 - 0.55 約550 +* 2008年の値[15]
ジクロロジフルオロメタン(CFC-12) CCl2F2 - - - 約540 + 2008年の値[15]
トリクロロフルオロメタン(CFC-11) CCl3F - - - 約245 + 2008年の値[15]
クロロジフルオロメタン(HCFC-22) CHClF2 - - - 約200 + 2008年の値[15]
一酸化炭素 CO - - - 約91 +* 2008年の値[16]
四塩化炭素 CCl4 - - - 約90 + 2008年の値[15]
トリクロロトリフルオロエタン(CFC-113) C2Cl3F3 - - - 約75 + 2008年の値[15]
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a) C2H2F4 - - - 約50 + 2008年の値[15]
1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HCFC-142b) CClF2CH3 - - - 約20 + 2008年の値[15]
1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(HCFC-141b) CCl2FCH3 - - - 約20 + 2008年の値[15]
1,1,1-トリクロロエタン CH3CCl3 - - - 約10 + 2008年の値[15]
1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a) C2H4F2 - - - 約4-9 + 2008年の値[15]
六フッ化硫黄 SF6 - - - 約6.5 + 2008年の値[15]
ブロモクロロジフルオロメタン(ハロン1211) CClBrF2 - - - 約4 + 2008年の値[15]
ブロモトリフルオロメタン(ハロン1301) CBrF3 - - - 約3 + 2008年の値[15]
アンモニア NH3 痕跡量*[要出典] - - -

注釈

  1. ^ ほぼ絶対温度の逆数に等しい。
  2. ^ 産業革命前の1750年比で1.4倍に増加している。国際標準大気(1975)では314 ppmとして示されている。
  3. ^ 産業革命前の1750年比で2.6倍に増加している。国際標準大気(1975)では2 ppmと丸めて示されている。
  4. ^ 産業革命前の1750年比で1.2倍に増加している。国際標準大気(1975)では0.5 ppmと丸めて示されている。
  5. ^ 冬は20 ppb>程度まで低下する。
  6. ^ 初めて出版されたのは沢庵が正保二(1645)年に亡くなった後の正保三(1646)年であるが、江戸時代を通して文政七(1824)年まで何度も刊行されている[20]
  7. ^ 安政六年に初めて刊行された[20]
  8. ^ 江戸時代には幕府の命令で印刷できず、1937年に初めて印刷出版された[32]
  9. ^ なお、人は空気の動きを全身の体表面の毛(体毛)の毛根あたりの感覚器で(体毛の動きを感じて)直接的に感じている、と指摘している研究がある。体毛を剃ってしまったりすると、感度が落ちるという。

出典

  1. ^ a b c Yahoo! Japan辞書(大辞泉くう‐き【空気】
  2. ^ Yahoo! Japan辞書(大辞泉たいき‐けん【大気圏】
  3. ^ Yahoo! Japan辞書(大辞泉たい‐き【大気】
  4. ^ 新村出編「空気」『広辞苑』(第5版)岩波書店、1998年、744頁。ISBN 4-00-080111-2 
  5. ^ 牛山泉『風車工学入門』(2版)森北出版、2013年、27頁。ISBN 978-4-627-94652-1 
  6. ^ 国立天文台編『理科年表 平成22年』丸善、2010年 ISBN 978-4621081914
  7. ^ Young, Hugh D., "HyperPhysics", University Physics, 7th Ed., Addison Wesley, 1992. Table 15-5, 2013年1月12日閲覧
  8. ^ "Air Properties" The Engineering Toolbox, 2013年1月12日閲覧
  9. ^ "Thermal Conductivity of some common Materials and Gases" The Engineering Toolbox, 2013年1月12日閲覧
  10. ^ Pawar, S. D."Effect of relative humidity and sea level pressure on electrical conductivity of air over Indian Ocean", Journal of Geophysical Research, vol.114, pp.D02205, 2009. Bibcode2009JGRD..11402205P , doi:10.1029/2007JD009716.
  11. ^ 「徹底図解 宇宙のしくみ」、新星出版社、2006年、p106
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p kikakurui.com 「JIS W 0201:1990 標準大気
  13. ^ a b c WMO温室効果ガス年報 気象庁訳 (PDF)気象庁、2012年11月、2013年1月12日閲覧
  14. ^ 二酸化炭素濃度の年平均値”. 国土交通省 気象庁. 2020年10月24日閲覧。
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n 2.3.2 世界のハロカーボン類等の濃度」気象庁、大気・海洋環境観測報告、2008年、2013年1月12日閲覧
  16. ^ 2.5.2 世界の一酸化炭素濃度」気象庁、大気・海洋環境観測報告、2008年、2013年1月12日閲覧
  17. ^ Yahoo! Japan百科事典(小学館 日本大百科全書)『液体空気
  18. ^ a b c d e f g 原宏. “大気からの物質沈着: 大気からの物質沈着: これまでから、これからへ これまでから、これからへ”. 慶應義塾大学理工学部応用化学科. 2021年9月21日閲覧。
  19. ^ 板倉聖宣 1999, p. 7.
  20. ^ a b 板倉聖宣 1999, p. 10.
  21. ^ 板倉聖宣 1999, pp. 7–8.
  22. ^ a b 板倉聖宣 1999, p. 8.
  23. ^ 板倉聖宣 1999, pp. 8–9.
  24. ^ 板倉聖宣 1999, p. 9.
  25. ^ a b c d e 板倉聖宣 1999, p. 11.
  26. ^ 板倉聖宣 1999, p. 13.
  27. ^ 板倉聖宣 1999, p. 15.
  28. ^ 板倉聖宣 1999, p. 16.
  29. ^ 板倉聖宣 1999, p. 20.
  30. ^ 板倉聖宣 1999, p. 21.
  31. ^ 板倉聖宣 1999, p. 23.
  32. ^ 板倉聖宣 1999, p. 26.
  33. ^ a b 板倉聖宣 1999, p. 24.
  34. ^ a b 板倉聖宣 1999, p. 27.
  35. ^ 板倉聖宣 1999, p. 30.
  36. ^ 板倉聖宣 1999, p. 31.
  37. ^ 板倉聖宣 1999, p. 32.
  38. ^ a b 板倉聖宣 1999, p. 33.
  39. ^ 板倉聖宣 1999, p. 34.
  40. ^ 板倉聖宣 1999, p. 39.
  41. ^ 板倉聖宣 1999, p. 40.
  42. ^ a b c 板倉聖宣 1999, p. 43.
  43. ^ 板倉聖宣 1999, p. 44.


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