じ‐ぞく〔ヂ‐〕【持続】
持続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/27 17:57 UTC 版)
持続 ( じぞく、英: duration、独: Dauer、仏: durée ) は、ひとつの状態が、その状態を維持したまま続くこと。また、状態を保ち続けることをさす[1][2]。和製漢語である[引用 1][3]。
専門用語としての「持続」
持続可能性 ( Sustainable Development ) における持続は、1987年の国際連合ブルントラント委員会報告書で定義された専門概念であり、単なる持続とは意味合いが異なる[4]。また、経営学の用語である「持続的競争優位 (Sustainable Competitive Advantage)」は、単なる持続ではなく模倣困難で希少な資源に基づく長期的優位性という意味で使われる[5][6]。
英語には「持続」に関連する複数の概念があり、それぞれ異なるニュアンスを持つが、日本語では「持続」という同一の語で翻訳されることが多い。Durationは時間的な長さや期間を表す最も基本的な概念で、「どのくらいの時間続くか」という量的側面を示す[7]。一方、専門分野では以下のような概念が「持続」と翻訳される。
- Sustainedは「支えられた」「維持された」という意味で、外部からの支援や意図的な努力によって持続される状態を表す。心理学の「持続的注意(Sustained Attention)[8]」や物理学の「持続振動(Sustained Oscillation)[9]」などで使用される。
哲学用語としての「持続」
哲学における持続とは、特定の対象・表象・体験などが時間の経過を通じて同一性を保ち続けることを意味する。これは継起( 独: Sukzession )の概念と対比される。継起が時間内での変化や交替の過程を表すのに対し、持続はそうした変化の中でも変わらずに維持される同一性の側面を捉える概念である[2]。
スコラ哲学において持続は神の「存在の不易性 ( 羅: Immutabilitas entis ) 」と捉えている。
カントは持続を実体の範疇におけるアプリオリな原則と考えた。現存在は継起するだけで、絶えず消滅するため量を持たない。実体によって時間系列の中の諸部分に一つの量を獲得するようになる。この量をカントは持続と呼んだ[2]。
ベルクソンは持続について純粋持続という新たな解釈を生み出した。ベルクソンは持続を等質的で量的連続である物理時間と区別した。ベルクソンの純粋持続は意識に直接与えられている継起であるとともに、常に相互浸透しながら流動する質的多様であると考えた。また、ベルクソンはこの純粋持続を生命そのものと同一視した[11]。
関連項目
出典
引用
- ^ オンライン版の『精選版 日本国語大辞典』によると『[初出の実例]「皇統の連綿を持続するが如きは易中の易のみ」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉一)』とある。
脚注
- ^ 小学館. “持続 じぞく”. デジタル大辞泉. 小学館. 2025年7月14日閲覧。
- ^ a b c 哲学事典 1971, p. 590.
- ^ 小学館. “持続 じぞく”. 精選版 日本国語大辞典. 小学館. 2025年7月14日閲覧。
- ^ 外務省 (2015年2月4日). “持続可能な開発 ( Sustainable Development )”. 地球環境. 外務省. 2025年7月13日閲覧。
- ^ Qualtrics. “企業が持続的な競争優位を獲得する方法”. カスタマーエクスペリエンス ( CX ). Qualtrics. 2025年7月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年7月14日閲覧。
- ^ 須栗 2003.
- ^ Longman & no date.
- ^ 藤木 2018, p. 117.
- ^ 田村 1990, p. 1294.
- ^ 農山漁村文化協会. “持続感染”. ルーラル電子図書館. 農山漁村文化協会. 2025年7月14日閲覧。
- ^ 哲学事典 1971, pp. 590–591.
参考文献
- Longman (n.d.). “duration”. In Longman (ed.). Longman Dictionary of Contemporary English (英語). 英国: Pearson Education Limited. p. https://www.ldoceonline.com/dictionary/duration.
- 青井和夫; 青柳真知子; 赤司道夫; 秋間実; 秋元寿恵夫; 秋山邦晴; 秋田光輝; 東洋 ほか 著「持続」、林達夫; 野田又夫; 久野収 ほか 編『哲学事典』(第1版)平凡社、日本、1971年4月10日、590-591頁。 ISBN 4-582-10001-5。
- 須栗大「持続的競争優位の源泉に関する一考察 (PDF)」『中京学院大学研究紀要』第10巻第1号、日本: 中京学院大学経営学部、2003年1月、63–77頁。doi:10.20732/00000348。2025年4月14日閲覧。
- 田村淳二、武田郁夫「同期機の乱調解析のための持続振動理論に関する一考察 (PDF)」『電気学会論文誌D ( 産業応用部門誌 )』第110巻第12号、日本: 一般社団法人 電気学会、1990年12月20日、1294–1295頁。doi:10.1541/ieejias.110.1294。ISSN 0913-6339。2025年7月14日閲覧。
- 藤木大介、堀井順平、二宮由樹、外尾恵美子「持続的注意への自覚が読解成績に及ぼす影響 (PDF)」『日本教育工学会論文誌』第41巻、日本: 一般社団法人 日本教育工学会、2018年3月1日、117–120頁。doi:10.15077/jjet.S41064。ISSN 1349-8290。2025年7月14日閲覧。
持続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/19 09:42 UTC 版)
物語内容の時間的長さと物語言説の長さ(つまり行数・ページ数など)との関係を扱う領域である。言い換えれば物語言説の「速度」のことである。これには4つの種類がある。 休止法 - 物語内容=0、即ち物語内容 <∞ 物語言説。つまり静止した情景を描写する場合。 情景法 - 物語内容 = 物語言説。例えば会話の場面など、両者のスピードが一致している場合。 要約法 - 物語内容 > 物語言説。物語言説を圧縮して語る、基本的な叙述。 省略法 - 物語言説=0、即ち物語内容 ∞> 物語言説。つまりあったはずの出来事を記さず、話が飛んでいる部分。
※この「持続」の解説は、「物語論」の解説の一部です。
「持続」を含む「物語論」の記事については、「物語論」の概要を参照ください。
持続
「持続」の例文・使い方・用例・文例
- 一流の大学に行きたければ,いい成績を持続しなければならない
- 彼はフランス語の勉学の熱意を持続できなかった
- より長期間効果が持続します
- あなたはトランジッション効果の持続時間を1秒から60秒の間で設定できます
- そのジャーナリストは持続する不退転さで有名だ。
- 持続可能成長スピードは企業経営にとって重要なファクターである。
- 売上高成長率は持続可能性との関わりで考えなくてはならない。
- 日本は大衆消費社会からリサイクルを基本とする持続可能社会に変わるべきである。
- 現在の財政環境での補助金の持続の難しさを彼は説明した。
- 失業は上昇し、持続している。
- 現代社会の持続的発展に、ポリマーとファイバーは重要な役割を果たしてきました。
- 私たちは、これは御社が自立的、持続的な経営を目指している表れだと考えます。
- 持続可能な社会の構築
- その障害は成人まで症状が持続する。
- それはいつまで持続するのでしょうか?
- (持続時間を競う)ダンスマラソン.
- その伝統は国の各地で今日まで持続している.
- 交渉を持続しようという提案をする.
- 記憶[注意力]が持続する期間.
- 持続可能な開発.
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