伊勢市 概要

伊勢市

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/07 05:30 UTC 版)

概要

伊勢神宮鳥居前町として発達した都市で「神都」の異名を持つ。かつては宇治山田市を名乗っていた[1]

三重県を代表する観光都市の1つであり、名古屋関西といった大都市圏からのアクセスに優れることから年間を通じて大勢の観光客で賑わう。

江戸時代には「お伊勢まいり」の街として全国から多くの人が訪れ、現在も伊勢志摩の中心都市となっている。伊勢神宮では20年に一度社殿を建て替え神座を移す「神宮式年遷宮」が催行され、街に活気をもたらすことから「伊勢の町は遷宮のたびに新しくなる。20年ごとに活性化する」と言われている[2]。直近の式年遷宮は2013年(平成25年)に開催された。

1906年明治39年)までは度会郡に属しており、一部に旧多気郡域を含む。明治維新直後の慶応4年7月6日から明治2年7月17日まで度会府府庁が置かれた。廃藩置県により度会府は度会県となり、三重県に編入される1876年(明治9年)4月18日まで県庁所在地であった。

地理

伊勢市中心部周辺の空中写真。2020年(令和2年)9月21日撮影の40枚を合成作成。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成。

志摩半島の北東部に位置する。市の北部は平地伊勢平野の南端)であり、伊勢湾に面している。南部は標高100m - 500mの丘陵山地が広がる。

中心市街地は伊勢神宮 外宮(豊受大神宮)の周辺に形成されている。市街地を外れた森の中に、伊勢神宮 内宮(皇大神宮)が位置する。

「伊勢市」と称する以前は「宇治山田市」と称しており、内宮周辺が宇治、外宮周辺が山田に当たる。

地形

気候

小俣(1991年 - 2020年)の気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
最高気温記録 °C°F 18.1
(64.6)
21.5
(70.7)
25.3
(77.5)
30.7
(87.3)
33.7
(92.7)
36.5
(97.7)
38.5
(101.3)
38.8
(101.8)
37.8
(100)
30.4
(86.7)
25.6
(78.1)
25.4
(77.7)
38.8
(101.8)
平均最高気温 °C°F 9.5
(49.1)
10.2
(50.4)
13.8
(56.8)
19.4
(66.9)
24.0
(75.2)
26.8
(80.2)
31.0
(87.8)
32.2
(90)
28.3
(82.9)
22.7
(72.9)
17.1
(62.8)
11.9
(53.4)
20.6
(69.1)
日平均気温 °C°F 4.8
(40.6)
5.2
(41.4)
8.5
(47.3)
13.8
(56.8)
18.7
(65.7)
22.2
(72)
26.3
(79.3)
27.2
(81)
23.7
(74.7)
17.9
(64.2)
12.1
(53.8)
7.0
(44.6)
15.6
(60.1)
平均最低気温 °C°F 0.2
(32.4)
0.5
(32.9)
3.3
(37.9)
8.4
(47.1)
13.9
(57)
18.4
(65.1)
22.6
(72.7)
23.4
(74.1)
19.9
(67.8)
13.6
(56.5)
7.2
(45)
2.2
(36)
11.1
(52)
最低気温記録 °C°F −5.7
(21.7)
−6.0
(21.2)
−3.9
(25)
−1.8
(28.8)
4.8
(40.6)
10.0
(50)
15.7
(60.3)
16.0
(60.8)
10.2
(50.4)
3.1
(37.6)
−1.7
(28.9)
−4.9
(23.2)
−6.0
(21.2)
降水量 mm (inch) 63.3
(2.492)
68.3
(2.689)
121.3
(4.776)
134.2
(5.283)
188.1
(7.406)
213.7
(8.413)
181.7
(7.154)
160.2
(6.307)
319.2
(12.567)
258.4
(10.173)
95.8
(3.772)
66.6
(2.622)
1,870.8
(73.654)
平均降水日数 (≥1.0 mm) 5.4 5.9 9.6 9.6 10.3 12.6 11.3 8.9 11.3 10.6 6.5 5.6 107.6
平均月間日照時間 173.1 163.3 182.2 190.5 191.1 137.3 174.8 208.2 150.1 157.9 159.4 174.7 2,059.8
出典1:Japan Meteorological Agency
出典2:気象庁[3]

伊勢と宇治山田

宇治山田という地名は、翌年に市制町村制の施行を控えた1888年(明治21年)に紛糾の末[4]、「宇治山田共ニ往古ヨリ稱スル著名ノ冠名ニ付、兩稱ヲ合セテ宇治山田ト撰定ス」[5]すなわち、「宇治と山田は古来から全国民に親しまれている」という理由から内宮鳥居前町の宇治と外宮鳥居前町の山田の両方の名を合わせて決定した[6]。町名には神都または伊勢の名を冠するべき[6]、宇治を外して山田と単称するべきという意見のほか[5]、そもそも市とするか町とするか、宇治と山田は別個に町制を敷くべき、といった議論もあった[7]1887年(明治20年)時点の人口は26,546人で、市制の標準人口の25,000人は満たしていた[8]が、「宇治山田町」として出発することになった[6]

その後、1906年(明治39年)9月1日に市制を施行することになったが、また名称をめぐる問題が起きた[6]。結局、この時点では町名と同じ宇治山田を市名とすることで決着したが、これ以降、折に触れて市名問題が発生することになる[9]。具体的には1935年(昭和10年)頃、1941年(昭和16年)の神社町編入時、1943年(昭和18年)の大湊町・浜郷村・宮本村編入時である[9]1948年(昭和23年)1月には戦災復興都市計画の中で市名改称の是非を問う公聴会が開かれたが、賛成3人、反対15人、不明1人で否決された[10]

大きな流れとなったのは1955年(昭和30年)1月1日の豊浜村・北浜村・四郷村・城田村との合併であり、前年の1954年(昭和29年)11月13日に市名改称公聴会の賛成、11月29日の臨時市議会での議決を経て合併と同時に「伊勢市」に改称された[10]。このようにして自治体名としての宇治山田の名は消滅したが、現在でも駅名・学校名・店名などに残っている。

(例)近鉄宇治山田駅三重県立宇治山田高等学校三重県立宇治山田商業高等学校auショップ宇治山田店、ソフトバンク宇治山田店、宇治山田港

また、宇治山田神社という伊勢神宮皇大神宮(内宮)の摂社がある。ただし、読み方は「うじようだじんじゃ」である[11]

歴史

伊勢神宮鳥居前町として古代から発展し、江戸時代には江戸幕府が伊勢神宮の管理を目的とする山田奉行所を設置した。山田奉行所は大岡越前として知られる大岡忠相奉行を務めたことがあり、このころ紀州藩にいた徳川吉宗により、のちに抜擢されることになった。

明治から昭和にかけて参宮鉄道線(現在のJR東海参宮線)・参宮急行電鉄本線(現在の近鉄山田線)・伊勢電気鉄道本線(後の参宮急行電鉄伊勢線。1942年廃止)など鉄道が次々と開通したことにより参詣客が増加した。

国家神道の下で、第二次大戦までは「神都」として国威発揚の場ともなった。伊勢神宮は、江戸時代から「お伊勢さん」として民衆に親しまれ、明治初年には、市内の寺院の数は300以上から15にまで減らされ、1871年には御師が廃止、神域にあった民家も撤去されるなど、古制に帰り、天皇・皇室・国家のための神社としてなお崇敬された。「皇紀2600年」にあたる1940年(昭和15年)には、約800万人が参宮のために当地を訪れた(当時の市名は宇治山田市)。大戦末期には、6回の大規模な空襲を繰り返し受けた(宇治山田空襲[12]

1946年(昭和21年)11月20日には伊勢志摩国立公園に指定された。

1974年(昭和49年)1月14日、船江2丁目で火災が発生。付近に延焼し36棟が焼失、1人死亡[13]

1974年(昭和49年)7月7日には梅雨前線による集中豪雨。市内で1000戸以上が床上浸水、交通機関が停止したため、同日行われていた第10回参議院議員通常選挙に混乱も生じた[14]

沿革

いせし
伊勢市
伊勢市の旧旗(宇治山田市旗を新設合併まで使用) 伊勢市の旧章(宇治山田市章を新設合併まで使用)
廃止日 2005年(平成17年)11月1日
廃止理由 新設合併
伊勢市(旧)、度会郡二見町小俣町御薗村 → 伊勢市(新)
現在の自治体 伊勢市(新)
廃止時点のデータ
日本
地方 東海地方近畿地方
都道府県 三重県
隣接自治体 鳥羽市志摩市、度会郡二見町、小俣町、御薗村、玉城町度会町南伊勢町多気郡明和町
伊勢市役所
所在地 三重県伊勢市岩渕一丁目7番29号
伊勢市域の変遷
ウィキプロジェクト
  • 1889年明治22年)4月1日 - 町村制の施行により、度会郡宇治町(宇治館町・宇治今在家町・宇治中ノ切町・宇治浦田町・宇治桜木町・宇治中ノ町・宇治古市町・宇治久世戸町)・山田町(山田倭町・山田尾上町・山田岡本町・山田岩淵町・山田吹上町・山田河崎町・山田船江町・山田一ノ木町・山田豊川町・山田田中中世古町・山田宮後町・山田一志久保町・山田大世古町・山田曽祢町・山田八日市場町・山田下中ノ郷町・山田常磐町・山田浦口町・山田二俣町・山田辻久留町・山田中島町・山田宮川町)の区域をもって宇治山田町が発足。
  • 1906年(明治39年)9月1日 - 宇治山田町が市制施行して宇治山田市となる。
  • 1941年昭和16年)5月5日 - 宇治山田市が度会郡神社町を編入。
  • 1943年(昭和18年)12月1日 - 宇治山田市が度会郡大湊町宮本村浜郷村を編入。
  • 1955年(昭和30年)1月1日 - 宇治山田市が度会郡豊浜村北浜村城田村四郷村を編入、即日改称して伊勢市となる。
  • 1955年(昭和30年)4月1日 - 度会郡沼木村を編入。
  • 1957年(昭和32年)4月1日 - 度会郡玉城町の一部(大字粟野)を編入。
  • 2001年平成13年)11月1日 - 柏町の一部を多気郡明和町に編入。明和町の一部(大字上野・明星・平尾の各一部)を編入。
  • 2005年(平成17年)11月1日 - (旧)伊勢市、度会郡二見町小俣町御薗村と合併し、改めて伊勢市が発足。
  • 2006年(平成18年)4月1日 - 度会郡玉城町の一部(大字長更の一部)を編入。

注釈

  1. ^ 例外として、二見町 茶屋、光の街の2地区が、二見町の中で独立した町名になった。
  2. ^ 村松町は例年7月第3土曜だが参院選の年は1週遅れる事がある。東大淀町は隣接する多気郡明和町大淀の祇園祭と同日に行われるため年によっては8月上旬になる。

出典

  1. ^ 三重県宇治山田市 (24B0010001)”. 歴史的行政区域データセットβ版. 2020年3月19日閲覧。
  2. ^ 外山(2006)124ページ
  3. ^ 小俣 過去の気象データ検索”. 気象庁. 2024年3月9日閲覧。
  4. ^ 伊勢市(1968)92ページ
  5. ^ a b 宇治山田市役所(1929)234ページ
  6. ^ a b c d 伊勢市(1968)93ページ。
  7. ^ 伊勢市(1968)92 - 93ページ
  8. ^ なお三重県でほかにこの基準を満たしていたのは津市のみ
  9. ^ a b 伊勢市(1968)94ページ
  10. ^ a b 伊勢市(1968)95ページ
  11. ^ 財団法人伊勢神宮崇敬会"宇治山田神社(うじようだじんじゃ)"(2010年11月23日閲覧。)
  12. ^ 山口千代己 (1988年7月). “悲惨だった三重県の空襲”. 三重の文化 - 歴史の情報蔵. 三重県環境生活部文化振興課県史編さん班. 2014年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月29日閲覧。
  13. ^ 伊勢で36棟焼ける 火勢増した備蓄の油『朝日新聞』昭和44年(1974年)1月14日朝刊、13版、19面
  14. ^ 「土石流、家をなぎ倒す 瀬戸内3島 逃げる背に迫る岩」『朝日新聞』昭和44年(1974年)7月8日朝刊、15版、11面
  15. ^ 伊勢新聞 (2009年10月8日). “伊勢市 森下市長、思い語る 幹部職員に辞任あいさつ”. 47ニュース. オリジナルの2013年9月6日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2013-0906-1417-14/www.47news.jp/localnews/mie/2009/10/post_20091008105017.html 2013年9月6日閲覧。 
  16. ^ 会派・委員等名簿”. 伊勢市議会事務局. 2016年10月9日閲覧。
  17. ^ 衆議院小選挙区図 (PDF) 三重県選挙管理委員会
  18. ^ 県議会議員の選挙区と定数 Archived 2011年4月21日, at the Wayback Machine. 三重県選挙管理委員会
  19. ^ 「友好提携の歴史」(友好提携の歴史)
  20. ^ 「友好関係さらに深く 災害時に相互応援 伊勢市と長野県飯田市 協定書に調印」『中日新聞』朝刊 1996年3月2日付 22面 伊勢志摩版
  21. ^ さわ餅”. 名物 へんば餅. へんばや商店. 2018年3月5日閲覧。
  22. ^ 小俣・宮川周辺エリア”. 伊勢市. 2018年3月5日閲覧。
  23. ^ a b 小川尭洋「津市立全小学校もエアコンを設置へ 20年度までに完了目指す」朝日新聞2017年1月19日付朝刊、三重版27ページ
  24. ^ 沼木バス”. 沼木まちづくり協議会. 2016年10月9日閲覧。
  25. ^ 平成25年市町別及び地域入込客数延数”. 三重県雇用経済部 観光・国際局 観光政策課. 2015年1月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月25日閲覧。
  26. ^ 観光地点等分類ごとの入込客数”. 三重県雇用経済部 観光・国際局 観光政策課. 2015年1月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月25日閲覧。
  27. ^ 伊勢市の観光PRキャラクター任命式(伊勢市公式サイト「はなてらすちゃんのにっき」、2012年6月1日)
  28. ^ 円座のかんこ踊 
  29. ^ 佐八(そうち)町のかんこ踊り
  30. ^ 御頭神事 伊勢市。2021年6月24日閲覧。
  31. ^ 御頭神事 三重県教育委員会事務局 社会教育・文化財保護課。2021年6月24日閲覧。
  32. ^ a b 川原田喜子 (2016年2月14日). “七起こしの舞 疫病払う 伊勢 「高向の御頭神事」 800年以上歴史「国重文」 地元若者 勇壮に”. 中日新聞 (中日新聞社): p. 朝刊 三重総合版 27 
  33. ^ a b 伊勢市(1968)630ページ
  34. ^ 橋爪(2001)249 - 278ページ。
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  37. ^ 伊勢市(1968)632 - 633ページ
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  39. ^ 橋爪(2001)273ページ
  40. ^ 伊勢市(1968)634 - 635ページ
  41. ^ 橋爪(2001)274 - 275ページ
  42. ^ 橋爪(2001)275ページ
  43. ^ 宇治山田市役所 編『宇治山田市史 下巻』宇治山田市役所、昭和4年3月5日、1690p.(1350ページより)
  44. ^ サンライズ出版 » 石田三成の青春”. サンライズ出版. 2016年7月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年7月16日閲覧。
  45. ^ 三重映画フェスティバル実行委員会 (2013年3月18日). “三重映画フェスティバル実行委員会”. 2013年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月4日閲覧。
  46. ^ 中日新聞社 (2017年2月1日). “伊勢進富座で出演作初上映 伊勢出身の岡明子さん”. 47NEWS. 2017年3月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月17日閲覧。
  47. ^ 第8回伊勢市民功労賞、伊勢市民スポーツ賞表彰式”. 伊勢市秘書課 (2013年11月2日). 2015年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月29日閲覧。
  48. ^ 明和町出身の音楽家・長岡成貢さんプロデュースのアーティストが伊勢でライブ”. 伊勢志摩経済新聞. 2019年1月11日閲覧。
  49. ^ 負け組法律事務所 〜沈黙する証人”. 水曜ミステリー9. テレビ東京 (2015年1月28日). 2015年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月4日閲覧。
  50. ^ 中日新聞 2007年9月12日朝刊 三重版、同年9月22日朝刊 三重版
  51. ^ 『広報いせ』平成20年9月号 18ページ






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