ミケランジェロ・ブオナローティ
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ミケランジェロ・ブオナローティ Michelangelo Buonarroti | |
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![]() ダニエレ・ダ・ヴォルテッラが描いたミケランジェロの肖像画 | |
生誕 | Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni 1475年3月6日 ![]() |
死没 | 1564年2月18日 (88歳) 教皇領、 ローマ |
著名な実績 | 彫刻、絵画、建築、 |
代表作 | 『ダビデ像』 『アダムの創造』 『ピエタ』 『システィーナ礼拝堂天井画』 |
運動・動向 | 盛期ルネサンス |
西洋美術史上のあらゆる分野に、大きな影響を与えた芸術家である[2]。ミケランジェロ自身が本業と考えていた彫刻分野以外の作品は決して多くはないにもかかわらず、様々な分野で優れた芸術作品を残したその多才さから、レオナルド・ダ・ヴィンチと同じく、ルネサンス期の典型的な「万能(の)人」と呼ばれる。
ミケランジェロは存命中から非常に優れた芸術家として高い評価を得ており、現在でも西洋美術史上における最高の芸術家の一人と見なされている[2]。ミケランジェロが制作した絵画、彫刻、建築のいずれをとっても、現存するあらゆる芸術家の作品のなかで、最も有名なものの一つとなっている[2]。長寿を保ったミケランジェロの創作活動は前述以外の芸術分野にも及ぶ膨大なもので、書簡、スケッチ、回想録なども多く現存している。また、ミケランジェロは16世紀の芸術家の中で最もその記録が詳細に残っている人物でもある。
ミケランジェロの彫刻で最も有名と思われる『ピエタ』(1498年 - 1499年、サン・ピエトロ大聖堂)と『ダヴィデ像』(1504年、アカデミア美術館)は、どちらもミケランジェロが20歳代のときの作品である。また、ミケランジェロ自身は絵画作品を軽視していたが、西洋美術界に非常に大きな影響を与えた2点のフレスコ画、システィーナ礼拝堂の『システィーナ礼拝堂天井画』と祭壇壁画『最後の審判』を描いている。
さらに建築家としてもフィレンツェのラウレンツィアーナ図書館で、マニエリスム建築の先駆けといえる様式で設計を行っている。74歳のときにはアントニオ・ダ・サンガッロ・イル・ジョヴァネの死去をうけて、当時改築中だったサン・ピエトロ大聖堂の主任建築家に任命された。このときミケランジェロは従前の設計を変更し、建物西側(奥)はミケランジェロの設計どおりに建てられた。ただし、主ドーム部分はミケランジェロの死後になって、別の設計に変更されて完成している。

ミケランジェロは、存命中に伝記が出版された初めての西洋美術家であるという点でも、際立った存在といえる[3]。そのなかでジョルジョ・ヴァザーリが著した『画家・彫刻家・建築家列伝』では、ミケランジェロをルネサンス期の芸術における頂点として絶賛し、その作品は何世紀にもわたって西洋美術界で通用するだろうとしている。ミケランジェロは存命中から「神から愛された男 (Il Divino )」と呼ばれることもあり[4]、当時の人々からは偉人として畏敬の念を持って見られていた。ミケランジェロの作品に見られる情熱的で独特な作風は後続の芸術家たちの模範となり、盛期ルネサンスの次の西洋芸術運動であるマニエリスムとなって結実していった。
注釈
- ^ ミケランジェロの父はミケランジェロの誕生日を1474年3月6日と記録している。ただし、この記録は当時フィレンツェで用いられていた年記法によるもので、ローマで採用されていた年記法では1475年となる。
- ^ ミケランジェロが学問を学ぶために親元を離れた年齢は文献ごとに相違がある。ド・トルナイは10歳とし、アスカニオ・コンディヴィの伝記を翻訳したセジウィクは7歳としている。
- ^ ヘラクレス像を購入したのはストロッツィ家である。1529年に一族のフィリッポ・ストロッツィがこの彫刻をフランス王フランソワ1世に売却した。1594年にはアンリ4世がフォンテーヌブローの別宅に持ち込んだ記録があるが、1713年にその別宅が破壊されて以降、行方不明となっている。
- ^ ヴァザーリの『画家・彫刻家・建築家列伝』には、このエピソードに関する記述はない。パオロ・ジョヴィオの『ミケランジェロの生涯』には、ミケランジェロがこの彫像を古美術品として売却しようとしたことを示唆する記述がある。
- ^ 現在はフィレンツェのバルジェロ美術館が所蔵している。
- ^ 『キリスト昇天』はキリストとともに多くの天使などが描かれていた作品で、現在ではキリストを描いた部分はローマのクイリナーレ宮殿に、その他の部分はバチカン美術館サンピエトロ大聖堂聖具室に収蔵されている。
- ^ 以前はギルランダイオの工房作といわれており、ミケランジェロの作品ではないかとする説は2度否定されていた。
出典
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- ^ a b C. Clément, Michelangelo, 5
- ^ A. Condivi, The Life of Michelangelo, 5
- ^ a b A. Condivi, The Life of Michelangelo, p.9
- ^ R. Liebert, Michelangelo: A Psychoanalytic Study of his Life and Images, p.59
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- ^ a b A. Condivi, The Life of Michelangelo, p.15
- ^ “Will the Real Michelangelo Please Stand Up?”. 2009年12月14日閲覧。
- ^ a b J. de Tolnay, The Youth of Michelangelo, pp. 20 - 21
- ^ A. Condivi, The Life of Michelangelo, p.17
- ^ a b J. de Tolnay, The Youth of Michelangelo, pp.24 - 25
- ^ A. Condivi, The Life of Michelangelo, pp.19 - 20
- ^ J. de Tolnay, The Youth of Michelangelo, p.26 - 28
- ^ Catterson, Lynn. "Michelangelo's 'Laocoön?'" Artibus et historiae. 52. 2005: p. 33
- ^ ナショナル・ギャラリー公式サイト
- ^ Giacometti, Massimo (1986). The Sistine Chapel.
- ^ Shearman 1986b, pp.38 - 87
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- ^ "Michelangelo Buonarroti" by Giovanni Dall'Orto Babilonia n. 85, January 1991, pp. 14–16 (イタリア語)
- ^ Rictor Norton, "The Myth of the Modern Homosexual"., page 143. Cassell, 1997.
- ^ A. Condivi (ed. Hellmut Wohl), 'The Life of Michelangelo,' p. 103, Phaidon, 1976.
- ^ Opere di Michelangelo
固有名詞の分類
美術家 |
ジャスパー・ジョーンズ 和田英作 ミケランジェロ・ブオナローティ 松蔭浩之 ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ |
イタリアの画家 |
ルーチョ・フォンタナ アンニーバレ・カラッチ ミケランジェロ・ブオナローティ ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ ドメニコ・ギルランダイオ |
16世紀の美術家 |
コレッジョ アンニーバレ・カラッチ ミケランジェロ・ブオナローティ ニコラス・ヒリアード フェデリコ・ツッカリ |
イタリアの建築家 |
レンゾ・ピアノ ジョヴァンニ・ヴィンチェンツォ・カッペレッティ ミケランジェロ・ブオナローティ フランチェスコ・ボッロミーニ カルロ・アイモニーノ |
イタリアの彫刻家 |
デジデーリオ・ダ・セッティニャーノ ルーチョ・フォンタナ ミケランジェロ・ブオナローティ アントニオ・フィラレーテ アンドレア・ブリオスコ |
イタリアの詩人 |
ジュゼッペ・ウンガレッティ フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティ ミケランジェロ・ブオナローティ アレッサンドロ・ピッコローミニ ジャコモ・レオパルディ |
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