ホーム・アンド・アウェー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/20 07:45 UTC 版)
ホームタウン以外での試合開催
ホーム・アンド・アウェー方式での試合は原則として、そのチームのホームタウン区域内にあるスタジアムなどで開催されるのが通常であるが、以下のような理由でホームタウン地域外で開催されることがある。
- 本拠地地域以外での市場開拓を目的とした開催。
- NPB管轄のプロ野球においては、特定球団のホームタウンとなっていない空白地域が多い。これらの地域でスポーツ振興を図り、また市場開拓を行うといった目的のため、特定チームがホームタウン以外の地域において試合を主催することが少なくない。このような場合でも、主催側をホームチームと呼ぶが、ホームであることの有利さはほとんど享受できない[9]。
- 他球団の本拠地で主催試合を行うこともあり、セントラル・リーグ所属の読売ジャイアンツの本拠地である東京ドームではこれまでにパシフィック・リーグ加盟全球団がホームゲームを組んでいる。パ・リーグ所属大阪近鉄バファローズおよび近鉄と合併したオリックス・バファローズの本拠地・大阪ドームでは阪神タイガース(後述)、巨人、更にはオリックスと同じパ・リーグに所属する福岡ソフトバンクホークスがホームゲームを組むなどしている[10]。ただし、セ・パ交流戦導入以後はそれまで主催していた球場において本来その球場を本拠地にする球団と交流戦で対戦する(当然ビジターとして)ことになったため、以前に比べると減少している。
- サッカー・Jリーグやバスケットボール・Bリーグではクラブ数がそれぞれ58、36と多く、カバーしていない都道府県の方が少ないため、ホームタウン地域以外での試合開催は少ない。2部制導入前のJリーグにおいては特定クラブのホームタウンとなっていない地域が多く、プロ野球同様の地方開催も多く見受けられたが、地方開催を行った地域の大半に新たなJリーグクラブが設立されているため、現在ではホームタウン地域外での開催は、ホームスタジアムが事故、災害、改修などで使用不能などの特殊事情がない限り(後述)ほとんど見られなくなっている。
- かつての本拠地での開催
- 東京ドームは2003年まで、パ・リーグ所属日本ハムファイターズも本拠地として使用していた。2004年、日本ハムは札幌ドームに移転したが、2004年以降も東京時代のファンへの配慮として、10試合程度の東京ドームでの主催試合を毎年開催している。また、オリックス・バファローズは、2004年オフに大阪近鉄バファローズと合併する前は神戸市の神戸総合運動公園野球場を本拠地としオリックス・ブルーウェーブの名称で活動していたが、2005年の合併以後も、旧本拠地の神戸で[11] 15試合程度開催している。この他にも、所沢移転後に旧本拠地の福岡市・平和台球場で主催試合を行った西武ライオンズや、川崎移転後に旧本拠地の仙台市・宮城球場で主催試合を行ったロッテオリオンズなどの事例がある。
- Jリーグ・アビスパ福岡はJFL時代に藤枝ブルックスとして藤枝市民グラウンドを本拠地にしていたが、福岡移転初年度(当時の名称は「福岡ブルックス」)の1995年にもホームゲームを3試合開催した。なお、この開催は1995年夏季ユニバーシアードの開催により、ホームスタジアムの博多の森球技場がサッカー競技会場となった都合によるものでもあり、下記「他のイベントの都合」にも該当する。
- 他のイベントの都合
- 阪神タイガースの本拠地である阪神甲子園球場は、高校野球(選抜高等学校野球大会、全国高等学校野球選手権大会)の開催会場であり、開催期間中は、阪神の主催試合を組むことができない。そのため、近隣(甲子園球場最寄りの阪神甲子園駅から大阪ドーム最寄りのドーム前駅まで阪神電車で20分程度である)の大阪ドームで代替開催する(詳細は「死のロード」を参照)。また、東京ドームが都市対抗野球大会を開催している時期、巨人が東京以外の地域で主催試合を行うことがある。
- 2018年、川崎フロンターレはホームスタジアム・等々力陸上競技場が第87回日本学生陸上競技対校選手権大会で使用できなかったため、Jリーグカップの準決勝をFC東京のホームスタジアムである味の素スタジアムで行った。
- 2020年、読売ジャイアンツは都市対抗野球大会の関係で巨人主催の日本シリーズを大阪ドームで開催した。日本シリーズを出場球団の本拠地以外で開催したのは、1980年、本拠地の日本生命球場が収容人員不足(オールスター・日本シリーズを開催する場合3万人以上収容必須だが、実際には20500人しか収容できなかった)であるのと、藤井寺球場に照明設備がなかったため、当時南海ホークスの本拠地だった大阪球場を借りた近鉄バファローズ以来、40年ぶりだった。2021年の日本シリーズでも東京ヤクルトスワローズの本拠地である神宮球場に既に他のイベントが入っていたため、ヤクルト主催の試合である第3戦から第5戦は東京ドームで開催した。また、対戦相手のオリックス・バファローズの本拠地である大阪ドームも第6,7戦開催日に既に他のイベントが入っていたため、神戸総合運動公園野球場で開催した(第6戦でシリーズが終了したため、第7戦は行われず)。また、2021年と同じカードとなった2022年の日本シリーズでも第9戦までもつれた場合、第9戦はオリックスの主催試合となる予定であったが、大阪ドームは社会人野球日本選手権大会により使用できないため、神戸総合運動公園野球場で開催される予定であった(第7戦でシリーズが終了したため、第9戦は行われず)。
- 営業上の理由
- ホームスタジアムで試合を行うより観客動員、収入が期待できる場合、アウェー動員を見込んであえてアウェーチームのファンの多い地域で主催ゲームを行う場合もある例として、2008年に新大分球場、北九州市民球場で行われた横浜ベイスターズ主催の福岡ソフトバンクホークス戦、1999年に行われた福岡ドームでのオリックス・ブルーウェーブ主催の福岡ダイエーホークス戦、1989年の広島東洋カープ主催の東京ヤクルトスワローズ戦のうちの1試合を群馬県立敷島公園野球場で開催したほか、1990年から1997年にも同様に広島主催行われていた岐阜市の長良川球場での中日ドラゴンズ戦がある。[12]下関球場でも横浜DeNAベイスターズ主催試合を開催することがあるが、隣接している地域が本拠地の福岡ソフトバンクホークスや、広島東洋カープとの試合が突出して多く開催している[13]。
- ホームスタジアムの収容人員が多くないのに対し、対戦カードの動員力が大きい場合、ホームタウン外にある、収容人員の多いスタジアムで試合を開催することもある。例として、Jリーグのヴァンフォーレ甲府はホームスタジアムの山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場の収容人員が17,000であるのに対し、浦和レッドダイヤモンズとの試合ではそれを遥かに超える動員力があることから、一時期、浦和戦を収容人員約50,000の東京・旧国立競技場で行っていたものがある。旧国立競技場解体以降、浦和戦についても小瀬での開催となっていた。国立競技場の建て替え完成以降は甲府と浦和の所属カテゴリが違うため、対戦そのものが組まれていない。
- 本拠地、ホームタウンでの事故、災害、紛争など
- 本拠地が改修工事や事故などで使用不能になった場合や、ホームタウン地域で大きな災害や紛争が起きた場合、ホームタウン地域での主催試合開催が困難となるため、ホームタウン地域外での開催を余儀なくされることがある。2005年、ハリケーン・カトリーナによりニューオーリンズが甚大な被害を受けた際、NBAのニューオーリンズ・ホーネッツおよびNFLのニューオーリンズ・セインツが本拠地以外のルイジアナ州内や近隣州を転戦した。
- 2011年、東日本大震災が発生した際、被災地の仙台を本拠地とする東北楽天ゴールデンイーグルスは本拠地の宮城球場が使用可能となるまでの間、甲子園球場やほっともっとフィールド神戸で主催試合を行ったほか、西武(滋賀県・皇子山球場)、ヤクルト(静岡市・草薙球場)が本拠地以外での開催、巨人も宇部市野球場での開幕を余儀なくされた。
- Jリーグでも被災地の茨城県・鹿嶋市をホームタウンとする鹿島アントラーズが、ホームスタジアムであるカシマスタジアムが被災し、使用不能となったため、復旧が済むまで国立競技場でホームゲーム(AFCチャンピオンズリーグの2試合)を行った。
- 同年に開催された男子バレーボールの国際大会であるFIVBワールドリーグでは福島第一原子力発電所事故の影響により、日本のホームゲームが相手国での開催に変更された。
- 2016年、熊本地震の際、熊本をホームタウンとするロアッソ熊本は地震の影響で熊本県内でのホームゲーム開催が困難となったため、しばらくの間、ホームゲームを柏、神戸、鳥栖で行った。
- 2020年3月に開催予定だった2022 FIFAワールドカップ・アジア予選のモンゴル対日本戦は新型コロナウイルス感染拡大の影響で日程が延期され、モンゴル国内では厳しい感染防止策のため試合開催ができず、モンゴル連盟の意見を聞いた上で2021年3月30日に千葉市蘇我球技場にて無観客試合として開催されることになった。
- コンサドーレ札幌は札幌ドーム完成以前は札幌厚別公園競技場がホームスタジアムであったが、厚別は気候の関係で5月以降でないと使用出来なかったため、4月末までは道南の入江運動公園陸上競技場(室蘭市)もしくは千代台公園陸上競技場(函館市)で開催するか、北海道外で主催試合を行うことが定例となっていた。この際に利用していた道外のスタジアムとしては、リーグ戦では町田市立陸上競技場、平塚競技場、高知県立春野総合運動公園陸上競技場、仙台スタジアム、カップ戦では長崎県立総合運動公園陸上競技場、岐阜メモリアルセンター長良川競技場、熊本市水前寺競技場がある。
- Jリーグではこのほか、ホームスタジアムの改修工事期間を確保するため、開幕節や最終節、ポストシーズンを別のクラブのホームスタジアムで開催する事例が複数ある。一例として、2016年J2・J3入れ替え戦のツエーゲン金沢(石川西部→富山)2017年J1昇格プレーオフのアビスパ福岡(レベスタ→えがおS)、2018年開幕戦の松本山雅FC(アルウィン→中銀スタ)、2020年第38節(ホーム最終節)のファジアーノ岡山(Cスタ→ピカスタ)など。
- 不祥事に対する制裁
- 主催チームおよびそのファンが、不祥事を起こした場合、主催団体から制裁として、ホームタウンでの開催権を剥奪され、中立地での開催を命じられることがある。例として、2005年6月8日、2006 FIFAワールドカップ・アジア予選、北朝鮮対日本戦が直近の北朝鮮ホームゲーム(金日成競技場)・イラン戦で試合後に暴動があったことを理由に、FIFAの裁定により第三国のタイ・バンコクのスパチャラサイ国立競技場で開催されたものがある。なお、この試合は無観客試合として行われている。
- 日程の都合
- 当初組まれていた試合が中止になり、閉幕まで期間がないなどで、日程が詰まっており、本拠地での試合消化が困難な場合、ホームタウン以外での主催試合が実施される場合もある。2007年9月25日にセーフコ・フィールドで開催されたシアトル・マリナーズ対クリーブランド・インディアンスのダブルヘッダーは、同年4月に雪の影響で中止されたジェイコブス・フィールドでの振替試合を行うため、第1試合のみインディアンス主催で実施された。また、日本でも試合日程の都合で西鉄ライオンズが1956年の阪急ブレーブス戦、並びに後継の太平洋クラブライオンズ時代の1973年後期に日拓ホームフライヤーズ戦のダブルヘッダーの1試合を後楽園球場で代替開催したことがあった。Jリーグでも2014年J1最終節のうちアルビレックス新潟対柏レイソル戦が雪の影響で延期された上会場も新潟スタジアムからカシマスタジアムに変更された。
- 本拠地地域に主催者の基準を満たすスタジアムがない
- ホームタウンにあるスタジアムが何れも主催者の基準を満たさない場合、対戦相手のホームタウンや近隣の基準を満たすスタジアムでの開催となる場合もある。2014 FIFAワールドカップ・北中米カリブ海予備予選では開催時点でモントセラト・アンギラ両国に国際基準を満たす競技場が存在しなかったため、モントセラトのホームゲームは中立国のトリニダード・トバゴ・クーヴァのアトー・ボルドンスタジアムで、アンギラのホームゲームは対戦相手国のドミニカ共和国・サン・クリストバルのエスタディオ・パンアメリカノで、それぞれ開催された。
- ^ アウェイとビジターの違いは興行権をリーグ側が持つかホームチーム側が持つかである。現行の日本プロ野球や日本バスケットボールリーグ、ジャパンラグビーリーグワンではチーム主催で試合を開くので相手チームは「ビジター」(リーグワンは主管側チームを「ホスト」)と呼ぶのが正式である、サッカーのJリーグでは「アウェー」と呼ぶのが正式である。
- ^ Schedule(MLB.com)
- ^ DIVISION1の交流戦=インターカンファレンス戦を除く。こちらはどちらか一方のホームのみで行う総当たり戦で、各クラブ3試合づつをホーム・アウェーで割り当てる
- ^ ただし、サッカーで延長戦までにわたりアウェーゴール制度を採用している場合、延長戦で双方に得点が入った末同点で終了すると、アウェーチームの勝ちとなるため、アウェーチームが一概に不利とも言い切れない。
- ^ “北朝鮮、韓国戦の第三国開催を希望”. ゲキサカ (2008年5月6日). 2020年10月31日閲覧。
- ^ UEFAチャンピオンズリーグでは、2012年のバイエルン・ミュンヘンおよび前身たるUEFAチャンピオンズカップ時代の1957年レアル・マドリード、1965年インテル・ミラノ、1984年ASローマの4例。ホームチームが勝利したのは1957年と1965年の2度が該当する。一方、NFLスーパーボウルでは2021年のタンパベイ・バッカニアーズが初めて達成した。
- ^ さらに、この形式では決勝進出チームのホームグラウンドが会場となっても、成績などの理由からもう一方のチームのホームゲーム扱いで開催されることもある。該当例としては2015年のJ1昇格プレーオフ(ヤンマースタジアム長居を本拠地とするセレッソ大阪が決勝に進出したが、成績の関係でアビスパ福岡のホームゲームとして開催)や、第56回スーパーボウル(SoFiスタジアムを本拠地とするロサンゼルス・ラムズが進出したが、主債権は1年交代という関係からシンシナティ・ベンガルズのホームゲームとして開催)などがある。
- ^ 山本昌邦 (2011年6月14日). “試合はピッチの中だけではない 私が五輪代表戦で知った「本当の国際競争力」”. 現代ビジネス. 2020年10月31日閲覧。
- ^ 例えば岡山県倉敷市のマスカットスタジアムや、米子市民球場(かつては北陸地方=富山市民球場アルペンスタジアム、石川県立野球場、福井県営球場他も)で行う広島東洋カープ対阪神タイガースでは、広島が主催者でありながら、阪神ファンの方が多いということが慢性化している。
- ^ ただし、パ・リーグ各球団が主催しての東京ドームでの巨人・ヤクルトとの対戦、および京セラドームでの巨人主催の阪神戦、ソフトバンク主催のオリックス戦などは、これまで公式戦での開催事例はない。
- ^ ただし、2005年から2007年までの3年間は合併特例措置として、大阪・神戸のダブルホーム
- ^ これは野球協約の「プロ野球地域保護権」のフランチャイズ都道府県以外での中立地開催であることを利用し、相手球団のファンの来場を見越した営業的な戦略の一環である。
- ^ 横浜DeNAベイスターズにおける発祥の地域は山口県下関市で、下関市営球場(旧・下関球場)を本拠地としていた。これは、下関市に拠点を置いていた大洋漁業(現・マルハニチロ)が自らの実業団チームをプロ化したという球団発足時の経緯によるものであった。特に東日本大震災に伴う計画停電時の代替球場の一部として設定されていた程であった。
- 1 ホーム・アンド・アウェーとは
- 2 ホーム・アンド・アウェーの概要
- 3 ホームタウン以外での試合開催
- 4 脚注
- ホーム・アンド・アウェーのページへのリンク