オクメ オクメの概要

オクメ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/28 18:46 UTC 版)

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オクメ
オクメの枝葉。
保全状況評価
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ上群 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : アオイ群 Malvidae / rosid II
: ムクロジ目 Sapindales
: カンラン科 Burseraceae
: Aucoumea
: オクメ A. klaineana
学名
Aucoumea klaineana Pierre
英名
okoume, gaboon

記載

この木はフランス出身の聖霊修道会(: Congregation of the Holy Spirit; Holy Ghost Fathers とも)会員でアマチュア植物学者でもあったテオフィル・クレーヌ(Théophile Klaine)により同定され、種小名はのちに彼にあやかって命名された[3]。実際に命名を行ったのはジャン・バティスト・ルイ・ピエール(Jean Baptiste Louis Pierre)で、1896年に Bulletin mensuel de la Société linnéenne de Paris 上で記載された。しかし#利用で後述するように、記載が行われる前の段階で既に木材としての取引が行われていた。

分布

カメルーン赤道ギニアガボンコンゴ共和国に分布する[4]

二次林、低地に群生する[1]

特徴

高木で樹高は30-40メートル[3]ないしは60メートル前後、胸高直径は1-2メートルである[2]。樹冠は非常に大きく、冬になると赤色を帯びるようになる[1]。樹幹はすっきりした円筒形だが少し曲がることもある[2]板根があり、樹皮は赤褐色、樹脂は灰色でテルペン臭がする[1]

葉は奇数羽状複葉、小葉は革質で鋭先形である[1]

花は円錐花序である[1]

果実は蒴果で5角形である[1]

利用

木材

オクメ材(右列の上から3番目)

性質・用途

オクメの心材は薄桃色で、空気に触れると桃褐色に変わる[2]。木理は概して通直で、時に浅く交錯あるいは微かに波状となり、柾目木取りの材面には魅力的な縞模様ができる。肌目は中庸で一定、均一で、魅惑的な天然の光沢がある[2]

オクメ材は強度も密度も低く、気乾比重は0.37-0.56、平均は約0.43である[2]。乾燥は容易でほとんど劣化することなく短時間で済ませることができ、乾燥後の狂いは中庸である[2]曲げ強さ[注 1]は低く、剛性[注 2]も非常に低い。圧縮強さ[注 3]は中庸で、蒸し曲げに対する適性は低い。概して弱く、耐久性も耐朽性も劣る木材ではあるが、大部分が屋内で使用されるためこの欠点はさほど問題とはならない[2]。加工は手道具でも機械でもかなり容易に行うことができるが、表面が毛羽立つ場合があり、また材の中に含まれるシリカで刃先が鈍磨し、加工が厳しくなることもある[2]。柾目木取りの材面を削りやくり型加工する際、木理が逆立つ場合がある[2]。釘打ちは容易で接着性も良い[2]。スクレーパーやサンダーで研摩すると美しい光沢に仕上がる[2]辺材はヒラタキクイムシ[注 4]の害を受けやすい[2]。耐久性は低く、保存薬剤処理も困難である[2]

オクメ材は通常ロータリーカットされて建築用単板にされ、合板、ブロックボード、ラミンボードの材料となり、ドア、キャビネット、住宅用羽目板の表面材として用いられる[2]。無垢材はマホガニーの代替材として縁飾り、表面化粧仕上げ、モールディングなどに、また家具の骨組みとしても使用される[2]葉巻箱英語版や運動用具にも用いられる[2]。斑紋杢や縞杢の優れた材はスライスカットで装飾用化粧単板にされ、キャビネットや羽目板などに用いられる[2]。また、#歴史で後述するように木製飛行機の部品という使い道も存在する。

歴史

ガボンの国章。盾の後ろに描かれている木がオクメである。

ガボンの現地人たちは伝統的にカヌー作りにこの木を使用してきた[3]ファン人は1889年7月、最初の商用の丸太を当時リーブルビル近郊の Glass へカヌーで運び、持ち込んだ[3]。ガボンの総督代理シャルル・ド・シャヴァンヌ(Charles de Chavannes)の主導により、オートオゴウェ商工農業組合(: Société Commerciale, Industrielle, et Agricole du Haut-Ogooué; 略称: SHO)の地方監督M・サジュー(M. Sajoux)は7-8トンをフランスに送り、売れ行きは好調であった[3]。しかし北ヨーロッパカナダ産の古めの木材にこだわる傾向があった港湾都市ル・アーヴルの商人たちがそれ以上好価格で売れ行きが伸びることを阻むように結託したために、フランスにおけるオクメの利用は20年遅れることとなった[3]。1892年、オクメはヴェアマン(Woermann)の商会によりハンブルクに送られ、間もなくそこでセドロ材が占めていた葉巻箱作りにおける地位を奪って席巻することとなる[3]オランダの会社であるピクス社(Picus)は1898年に、ドイツの様々な会社はそれよりも後にオクメを合板に使用し始めた[3]

第一次世界大戦中にフランス軍は軽量級飛行機を含む建造にオクメ材を使い始めた[3]。オクメ材はヨーロッパ中で現代でも人気のある航空機のジョデル(Jodel)の部品の大量生産に大々的に用いられ、今日においてもアマチュアのジョデル建造者たちにとってオクメ材は材料として馴染みのあるものである[3]

ガボンにおいてフランスの諸会社はマホガニー[注 5]、エボニー[注 6]、ウオルナット[注 7]といった木材が得られる樹種を1920年代のうちに大量に伐採したが、伐採に関わった会社はオクメの重要性に気付くことはなかった[6]世界恐慌の影響が実感される前の1930年の時点で381,000トンにまで達したオクメの生産は、1960年のガボン独立時には737,000トンに跳ね上がっており、1970年代にそれはほぼ毎年100万トンを超えていた[3]。1957年、オクメの輸出は単独で当時植民地であったガボンの総輸出の87パーセントを占めていた[3]。フランスの林務官たちはシャンパンのことを「オクメのジュース」(: jus d’okoumé)とさえ呼んでいた[6]。独立後の1963年7月15日に制定されたガボンの国章にも、重要な産業である林業の象徴としてオクメの木が描かれている[7]。今日、オクメはガボンの全輸出木材のおよそ90パーセントをなお占めており、ガボンは世界全体のオクメの供給の90パーセントを賄っている[3]

その他

ガボンではオクメの樹皮が下痢赤痢月経不順の治療薬に用いられてきている[3]。また、同じくガボンで樹脂はたいまつの燃料とされた[3]


注釈

  1. ^ 板材の両端に力を加えて割れる時の力を測定したもの[2]
  2. ^ 木材の弾力性を表す尺度で、曲げ強さとの関連で考慮される[2]
  3. ^ 木口に加えられる荷重に耐えられる能力のことで、短柱や支柱などに用いられる木材にとっては重要な要素となる[2]
  4. ^ Lyctus brunneus をはじめとするLyctus属の甲虫類などを指す[5]
  5. ^ 単にマホガニーというとセンダン科マホガニー属Swietenia mahagoni を指すが、この木は西インド諸島産であり、アフリカには自生しない。アフリカに自生し、マホガニーの名で呼ばれるのは同じセンダン科ではあるが別属アフリカマホガニー属(Khaya)の複数の樹種である。ガボンにはアフリカマホガニー(Khaya ivorensis)とドライマホガニー(K. senegalensis)の2種が自生する。
  6. ^ エボニーはカキノキ科カキノキ属Diospyros)の複数の樹種を指すが、ガボンにはアフリカンエボニイ(: African ebony; 学名: Diospyros crassiflora)や D. piscatoria が自生する。
  7. ^ 英語でウオルナット(walnut)というと通常はクルミ科クルミ属Juglans)の樹種を指すが、ガボンに自生するのはアフリカンウオルナット(: African walnut; 学名: Lovoa trichilioides; 別名: ディベトウ)と呼ばれるセンダン科の高木である。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i 熱帯植物研究会 (1996).
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y ウォーカー (2006)
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r Yates (2018:363–4).
  4. ^ a b White (1998).
  5. ^ ケーニッヒ (2000:181).
  6. ^ a b Yates (2018:202).
  7. ^ 苅安 (2003).
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u Raponda-Walker & Sillans (1961:110).
  9. ^ a b Galley (1964:43).
  10. ^ Kialo (1999).


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