ちん‐せい【鎮静】
鎮静
元来「鎮静」は興奮状態に(被験物質などで)
対処してそれを抑制することをいうが、その結果によりもたらされる抑制状態をもいう。
観察操作に対する一時的な興奮反応の自然の終息や自然に起こっている睡眠または平静な状態を鎮静と混同してはならない。
鎮静は睡眠に移行しやすいが、原則としては覚醒しており、疼痛や恐怖による不穏・苛立ちが抑制されている状態である。
この状態では自発運動は少なくなり、刺激に対する反応も鈍くなっているものであるが、自発運動の低下は必ずしも直ちに「鎮静」(=中枢神経抑制)を意味するものではなく、身体的異常によるものもある。
マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル 程度
鎮静
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/22 07:52 UTC 版)

鎮静 (ちんせい、英: sedation)とは、一般に医療処置や診断処置を容易にするために、鎮静剤を投与して過敏性や興奮を抑えることである。
概要

鎮静剤には、プロポフォール、ケタミン、ミダゾラムなどが含まれる[1]。一般的には、高度な気道確保を伴わない「浅い」麻酔を鎮静と呼ぶ[2]。近年は鎮痛の重要性が認識され、処置時の鎮静・鎮痛(英: procedural sedation and analgesia: PSA)という呼び名も普及しつつある[3]。
一方、鎮静とはいわゆる麻酔の3要素(鎮静、鎮痛、筋弛緩)の1つである鎮静を意味する場合もある。この場合、特に全身麻酔における鎮静とは、意識消失(unconsciousness)と呼吸抑制、ないしは無呼吸を伴う深い鎮静であり、気管挿管などの高度な気道確保 (advanced airway management )を必要とする。
「鎮静は全身麻酔に準ずる」と言われており、麻酔科医が担当することが望ましいが、日本だけでなく、世界でも全症例には対応できていない[4]。麻酔科医が担当する場合は、監視下麻酔管理(英: Monitored anesthesia care: MAC)と呼ばれる[5]。
適応
鎮静法は通常、内視鏡検査、精管結紮術、歯科治療などの小手術や、再建手術、一部の美容整形手術、親知らずの抜歯、不安感の強い患者が適応となる[6]。歯科における鎮静法には、吸入鎮静(亜酸化窒素を使用)、経口鎮静法、静脈内鎮静法などがある。吸入鎮静は、英語圏では"relative analgesia"と呼ばれることもある[7]。
鎮静剤は、集中治療室でも広く使用されており、人工呼吸を受けている患者が気管チューブを気管に留置されていることに耐えられるようにする[8]。また、長時間の脳波検査を行う際にも、患者をリラックスさせるために使用されることがある[9]。
危険性
手術に関連する合併症の40%から50%は鎮静剤が原因であると主張する研究がある[10]。 気道閉塞、無呼吸、低血圧は鎮静中に起こることが珍しくなく、これらの問題を発見し管理するために適切な訓練を受けた医療従事者の存在が必要である。呼吸の抑制以外にも、意図しないレベルの鎮静、術後傾眠、誤嚥[11] 、鎮静剤による副作用などのリスクもある[12]。 また、手術の合併症として、穿孔、出血、反射性失神の誘発などが考えられる[13]。鎮静のリスクを回避するために、医療従事者は徹底した鎮静前の評価を行い、このプロセスには、患者への潜在的リスクと困難気道(Difficult Airway)の可能性を示す判断材料に重点を置いた鎮静前の病歴と身体検査が含まれる[14]。 このプロセスにより、鎮静期間を延長する必要があるか、追加の治療処置が必要かを明らかにすることもできる[15]。
鎮静レベル
鎮静スケールは、医療現場において、病歴と合わせて患者の鎮静の程度を評価し、鎮静不足(患者が痛みや苦痛を感じる危険性)、過鎮静(呼吸抑制などの副作用があり、死に至る危険性)を避けるために使用される[8]。
鎮静尺度の例としては、MSAT(ミネソタ鎮静評価ツール)、UMSS(ミシガン大学鎮静スケール)、ラムゼイスケール(Ramsay他、1974)、RASS(リッチモンド興奮鎮静スケール)などがある。
アメリカ麻酔科学会は、鎮静を次のように覚醒から全身麻酔まで、連続的なものとして定義している:[16]
- 最小限の鎮静 - 言語刺激に対する通常の反応。
- 中等度鎮静 - 言語/触覚刺激に対して意図的に反応する。(これは通常「意識下鎮静」と呼ばれる)
- 深鎮静 - 繰り返しまたは痛みを伴う刺激に意図的に反応する。
- 全身麻酔 - 痛みを伴う刺激でも覚醒しない。
英国では、鎮静は軽度鎮静、中等度鎮静、深鎮静の3段階に分類されている[2]。
前述の注意事項に加えて、治療中に合併症を引き起こす可能性のある他の疾患を患っていないかどうかを問診する必要がある。頭部、頸部、脊髄に病変がある場合は、特に注意する必要がある。
静脈内鎮静
成人に対する最も一般的な意識下鎮静法は、ミダゾラムを使用した静脈内鎮静法である。これは、静脈に針を刺して薬を投与する必要があり、用いられる針は静脈留置針とよぶ。
- 歯科治療に対する不安や恐怖心の軽減
- 侵襲的または長時間の歯科治療
- 咽頭反射のある患者
- 歯科治療のストレスにより悪化する可能性のある病状
- 特別なケア(軽度の知的または身体障害者)
- 筋弛緩作用によりその痙性を緩和し得る一部の障害
禁忌:
- 使用する鎮静薬の禁忌に該当する場合[19]
脚注
注釈
出典
- ^ Brown, TB.; Lovato, LM.; Parker, D. (Jan 2005). “Procedural sedation in the acute care setting”. Am Fam Physician 71 (1): 85–90. PMID 15663030.
- ^ a b “Sedation explained: Information for patients” (英語). Royal College of Anaesthetists(英国王立麻酔科協会). 2023年7月6日閲覧。
- ^ 乗井 2016, pp. 3–4.
- ^ 日本麻酔科学会 2021, p. 27.
- ^ 日本麻酔科学会 2021, p. 4.
- ^ “Sedation Dentistry for Anxious Patients”. 2014年9月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月11日閲覧。
- ^ Howes, M. C. (2004-09-01). “What is “relative analgesia?”” (英語). Emergency Medicine Journal 21 (5): 646–647. ISSN 1472-0205. PMID 15333564 .
- ^ a b “人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン”. square.umin.ac.jp. 2023年1月3日閲覧。
- ^ “脳波等神経生理検査時の鎮静における医療安全に関する提言・指針”. 日本小児神経学会 (2019年10月). 2023年2月5日閲覧。
- ^ Vargo, John (2016). Sedation and Monitoring in Gastrointestinal Endoscopy, An Issue of Gastrointestinal Endoscopy Clinics of North America. Philadelphia, PA: Elsevier Health Sciences. pp. 465. ISBN 9780323448451
- ^ Odom-Forren, Jan; Watson, Donna (2005). Practical Guide to Moderate Sedation/analgesia. St. Louis, MO: Elsevier Mosby. pp. 84. ISBN 0323020240
- ^ Vargo, John (2016). Sedation and Monitoring in Gastrointestinal Endoscopy, An Issue of Gastrointestinal Endoscopy Clinics of North America. Philadelphia, PA: Elsevier Health Sciences. pp. 554. ISBN 9780323448451
- ^ Skelly, Meg; Palmer, Diane (2006). Conscious Sedation: A Handbook for Nurse Practitioners. London: Whurr Publishers. pp. 69. ISBN 1861562667
- ^ Mason, Keira (2011). Pediatric Sedation Outside of the Operating Room: A Multispecialty International Collaboration. New York: Springer. pp. 166. ISBN 9780387097138
- ^ Winter, Harland; Murphy, Stephen; Mougenot, Jean Francois; Cadranel, Samy (2006). Pediatric Gastrointestinal Endoscopy: Textbook and Atlas. Hamilton, Ontario: BC Decker Inc.. pp. 59. ISBN 1550092235
- ^ “Continuum of Depth of Sedation: Definition of general anesthesia and levels of sedation/analgesia” (pdf). American Society of Anesthesiologists (2009年10月21日). 2010年11月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年11月29日閲覧。
- ^ Girdler, N. M. (2009). Clinical sedation in dentistry. Hill, C. M., Wilson, K. E. (Katherine Elizabeth), 1963-. Chichester, U.K.: Wiley-Blackwell. ISBN 978-1-4051-8069-6. OCLC 230187665
- ^ Malamed, Stanley F., 1944- (2010). Sedation : a guide to patient management (5th ed.). St. Louis, Mo.: Mosby Elsevier. ISBN 978-0-323-05680-9. OCLC 698080026
- ^ 日本麻酔科学会 2021, p. 20.
参考文献
- 日本麻酔科学会『安全な鎮静のためのプラクティカルガイド』公益社団法人日本麻酔科学会、2021年11月26日 。2023年10月12日閲覧。
- 乗井, 達守『処置時の鎮静・鎮痛ガイド』医学書院、2016年11月15日。 ISBN 9784260028301。
関連項目
- 終末期鎮静
- トワイライト麻酔
鎮静
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/11 10:12 UTC 版)
プロポフォールやミダゾラム(ドルミカム)が好まれる。ミダゾラムは同じベンゾジアゼピン系の中でも副作用がジアゼパム(セルシン)よりも少なく、半減期が2~4時間と短いのが好まれる理由である。静注で行うのなら、初回投与はドルミカムならば5mg、セルシンならば10mg程度である。オピオイドを併用すると鎮痛、鎮咳作用によって挿管は容易になるが呼吸抑制が顕著にでるため注意が必要である。静注で併用するのならばフェンタニル0.05mg程度が無難である。 ディプリパン原液を2ml/hより開始 。 ドルミカム10A(100mg/20ml)を1ml/hから開始 。体動を認めたら1mlフラッシュする。 ドルミカム5A(50mg/10ml)+生食40mlを3ml/hで開始 。体動を認めたら3mlフラッシュする。 ドルミカム8A(80mg/16ml)+ケタラール(筋注用)2000mg(2A)+生食14mlを2ml/hから開始 。体動を認めたら2mlフラッシュする。
※この「鎮静」の解説は、「呼吸困難」の解説の一部です。
「鎮静」を含む「呼吸困難」の記事については、「呼吸困難」の概要を参照ください。
鎮静
「鎮静」の例文・使い方・用例・文例
- 医者は彼に鎮静剤を注射した
- 彼女は時々夜に鎮静剤を飲む。
- 私も早くそのデモが鎮静化されることを望みます。
- 私はこの問題を鎮静化する。
- よって流通するマネーが減り、物価上昇は鎮静化する。
- 医者に相談して鎮静剤を処方してもらうのはどうでしょうか。
- インフレは鎮静化しています。
- 鎮静状態にある.
- 人を鎮静させる.
- 地価の高騰もようやく鎮静化のきざしが見えてきた.
- 暴風雨鎮静に帰す
- 精神が鎮静する
- 人心が鎮静する
- 騒動が鎮静する
- 暴風雨が鎮静する
- 興奮した精神が直ちに鎮静した
- 鎮静剤を投与することで落ち着かせるまたは静かにさせる
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