総合診療医とは? わかりやすく解説

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そうごうしんりょう‐い〔ソウガフシンレウ‐〕【総合診療医】

読み方:そうごうしんりょうい

総合的な診療能力有しプライマリーケア専門に行う医師身体の状態だけでなく、心理的社会的問題含めて患者継続的に診察し必要に応じて専門医紹介する

[補説] 総合医同義使われることが多いが、病院総合診療科などに勤務する医師を総合診療医、地域診療所医療従事する医師総合医区別することもある。


総合診療医

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 09:32 UTC 版)

予防接種を開発したエドワード・ジェンナー

総合診療医(そうごうしんりょうい、英語: general practitioner, GP)とは、病気を心身から全体的に診療する医師である。病気の予防にも携わる。

総合診療は、患者の生活についての、生物学的・精神的・社会環境に着目し、ホーリズム的な手法である。総合診療医は、患者の特定臓器に着目するのではなく、全体的な健康問題に向き合って治療を行う。総合診療医は、その国のあらゆる年齢、および性別の患者を診療出来るよう、教育がなされる[1]

一部の国の医療制度において総合診療医は、プライマリケア保健センターに勤務してチーム医療の中心的役割を担っている。その他の国の制度では、総合診療医は開業医である。日本では、総合診療科を標榜して個別に実施されている。

総合診療医が担う役割は、世界各国やまた地方自治レベルでもさまざまである。先進国の都市地区においては、総合診療医は患者に密着した慢性期医療、および生命を脅かさない急性期医療が主な役割であり、深刻な疾病の早期発見、健康教育予防医療なども担っている。 一方、先進国の農村部および発展途上国においての総合診療医は病院に準ずる救急医療や産科を担うことが多く、場合によりコミュニティによって運営される療養所の医療や、難易度の低い外科手術なども行うことがある[2][3][4]

general practitionerGPという呼称は、イギリスアイルランド共和国などのイギリス連邦諸国では普及している。英連邦諸国ではphysicianという呼称は特定分野の専門医を指すことが多く、とりわけ内科学であることが多い。英連邦諸国においてはGPの責務は明確に定義づけられているが、一方で北米地方ではあいまいであり、家庭医(family doctor)やプライマリケアのような意味合いとなっている。

医学界では、歴史的に総合診療医の立ち位置は明確でなかったが、1950年代に総合診療医は一つの専門領域として認知され、そのための専門教育が各国で施されるようになった[5][6]。後の1978年アルマ・アタ宣言により、今日のプライマリケアおよび総合診療医としての地位が確立された。

経済協力開発機構は「健康増進のための最も費用対効果が高い方法は、GPによるプライマリケアである」と述べている[7]

各国の制度

OECD各国の医師総数におけるGP割合(2012年)[8]
国名
(五十音順)
%
アイスランド 16.4
アイルランド 66.4
アメリカ合衆国 12.1
イギリス 29.3
イスラエル 20.3
イタリア 23.4
 エストニア 25.7
オーストラリア 47.3
 オーストリア 32.9
オランダ 42.3
カナダ 46.9
韓国 28.6
ギリシャ 4.8
スイス 27.5
 スウェーデン 16.2
スペイン 18.8
スロバキア 13.8
スロベニア 21.1
 チェコ 19.3
 チリ 54.4
 デンマーク 21.0
ドイツ 41.8
トルコ 33.2
ニュージーランド 31.4
 ノルウェー 26.6
 ハンガリー 11.6
 フィンランド 35.7
フランス 47.2
ベルギー 38.1
ポーランド 18.8
ポルトガル 52.1
メキシコ 36.1
ルクセンブルク 29.6

アイルランド

イギリス

英国はGP制度を採用しており一次医療を担う。救急などの場合を除いて、担当GPの許可なく上位医療を受診することはできない[9][10]。市民はNHS医療アクセスのためGP登録を行うよう義務を課されている(国民保健サービス#NHSの社会契約[11][10]。登録変更は自由に行うことができ、医師一人あたりの登録市民数は2,000人ほどである[9]。英国医師の32%(約43,000人)はGPとして就業している[9]

英国でGPになるには医科大学卒業後、最低5年間の訓練に従事しなければならない。

イタリア

イタリアの医療は国民保健サービス(SSN)によるGP制度であり、医師一人あたり最大1,500人の患者を受け持つ。

オランダ

オランダの医療の一次医療は、GPに相当する家庭医(huisartsen)が担っており、GPは約9,000人存在する(半数が個人開業、半数は勤務医)[9]。一次医療によって紹介を受けた者のみが二次・三次医療へのアクセスを許可される[12]

カナダ

カナダの医療においては、英国のGP制度に類似した家庭医療という領域があり、医学教育卒業生の40%ほどがキャリアに選択している。

カナダのGPは政府から雇用されてはいないので、自由診療をも行うことができる。しかしGPの大部分は、州政府による公費負担医療保険プログラムから支給を受けており、その支払い制度は、出来高払い、月給制、その他さまざまな制度が存在する。

フランス

フランスの医療においては、médecin généralisteが市民の長期医療に携わる。

スペイン

スペインにおいては、GPは公式にはespecialistas en medicina familiar y comunitariaと定義されるが、一般的には"médico de cabecera"や"médico de familiaなどと呼ばれている。多くのGPは地方自治体が運営する公的保健機関に就業しており、たいてい月給制の雇用である。

デンマーク

デンマークの医療ではプライマリケアの大部分はGPより提供され、GPへの診療報酬は人頭払いと出来高払いを組み合わせた英国類似の制度である。デンマークには約4,100人のGPがおり、一人あたり約1,300人の患者を受け持つ[13]

ドイツ

ドイツの医療では、Hausarzt(家庭医)が家庭医療を担っている。

日本

日本の医療では、GP制度は実現されていない。一部、後期高齢者医療制度において「高齢者担当医」として後期高齢者診療料を設ける試みがなされている。2014年(平成26年)には主治医報酬(地域包括診療料)が創設された[14]

かつて1959年昭和34年)の医療保障委員会最終答申(厚生大臣宛提出)では、イギリスの医療(ベヴァリッジ報告書)を参考に、GP制度の実現を強く求めていたが、日本医師会は「医療の国営化、人頭割制度につながる」として反対した[15]。2009年のOECD対日審査においては、日本は不必要な専門医受診を防ぐゲートキーパー制度を導入し、また総合診療医の数を増やし、かつ専門医の役割を明確にするよう勧告されている[16]

2018年(平成30年)度より開始された日本専門医機構が認定する「新専門医制度」において、総合診療専門医が新設されることとなった。

脚注

  1. ^ http://wiki.answers.com/Q/What_are_the_Duties_of_a_family_practitioner
  2. ^ Rachow JW, Ryan LM (August 1988). “Inorganic pyrophosphate metabolism in arthritis”. Rheum. Dis. Clin. North Am. 14 (2): 289–302. PMID 2845490. 
  3. ^ http://www.stfm.org/fmhub/fm2008/April/Bill284.pdf
  4. ^ Benjamin Daniel (2012). Confessions of a GP (The Confessions Series). The Friday Project. ISBN 978-1906321888 
  5. ^ De Neve W, Evelhoch J, Everett C, et al. (June 1990). “Interaction between flavone acetic acid (LM-975, NSC 349512) and radiation in Glasgow's osteogenic sarcoma in vivo”. Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 18 (6): 1359–65. PMID 2370185. 
  6. ^ Simon, C. (2009). “From generalism to specialty--a short history of General Practice”. InnovAiT 2 (1): 2–9. doi:10.1093/innovait/inn171. ISSN 1755-7380. 
  7. ^ "OECD Health Data 2009 – comparing health statistics across OECD countries" (Press release). OECD. 1 July 2009.
  8. ^ OECD Health Data 2013 (Report). OECD. June 2013. Generalist medical practitioner, % of physicians (head counts).
  9. ^ a b c d 医療制度の国際比較 (Report). 財務総合政策研究所. 30 June 2010. Chapt.4.
  10. ^ a b 堀真奈美 (March 2011). 海外行政実態調査報告書 保健医療分野におけるVFMとアカウンタビリティの確保に関する研究 イギリスのNHS・ソーシャルケア改革を事例として, (PDF) (Report). 会計検査院.
  11. ^ "The NHS Constitution" (Press release). NHS. March 2013.
  12. ^ J.M. Boot, 'De Nederlandse Gezondheidszorg', Bohn Stafleu van Loghum 2011
  13. ^ 医療制度の国際比較 (Report). 財務総合政策研究所. 30 June 2010. Chapt.5.
  14. ^ 2014年度診療報酬改定、「主治医機能」を評価」『日経メディカル』2014年1月31日。 
  15. ^ 新村拓『国民皆保険の時代 : 1960,70年代の生活と医療』法政大学出版局、2011年11月、193-194頁。ISBN 9784588312113 
  16. ^ OECD Economic Surveys: Japan 2009 (Report). OECD. 13 August 2009. p. 117. doi:10.1787/eco_surveys-jpn-2009-en. ISBN 9789264054561

関連項目

外部リンク


総合診療医

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 16:56 UTC 版)

フランスの医療」の記事における「総合診療医」の解説

フランスでは総合診療医(médecin généraliste、通称docteur, GP)が市民長期医療責任持っており、予防医療教育専門性求められない傷病について医療を施す。また深刻な傷病についての日常的フォローアップも行う(急性期以降から専門医受診まで)。 また疫学統計調査法医学ケガ保険金請求証明スポーツ証明書死亡証明精神疾患による措置入院)、救急医療(SAMU)の役割担っている患者通院できない時は在宅訪問医療行い(特に老人小児)、また夜間休日診療する義務がある。 GPのほとんどは独立開業医であるが、一部チーム就業している。フランスの医療制度において、GPは強いゲートキーパーではなく市民専門医含めどのような医療提供者へも受診することができ、外来医療様々なものが存在する。(しかしGP紹介状が無い場合保険支給受けられない)。

※この「総合診療医」の解説は、「フランスの医療」の解説の一部です。
「総合診療医」を含む「フランスの医療」の記事については、「フランスの医療」の概要を参照ください。

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