Voodoo3以降
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/24 01:46 UTC 版)
1998年末、3dfxはビデオカードメーカーSTB社のメキシコ工場を純正ビデオカードの製造・販売のため買収すると発表した。Voodoo Bansheeの後継製品Voodoo3搭載カードは自社工場での製造を中心とし、ビデオカードメーカーには積極的には供給しない方針への転換でもあった。 これは「ビデオチップベンダ」から、Matrox、ATIのような自社ブランド重視の「メーカー」へと脱皮する試みであり、ビデオカードメーカー各社との協力体制で生産しお互いに利益を得ていくモデルから、自社で全ての利益を総取りするという3dfxの一方的な路線変更であった。しかし、当然ながらこの路線変更はそれまで3dfx社の製品を採用していたビデオカードメーカーにとっては死活問題となった。3D性能において常にトップパフォーマンスのVoodooシリーズは、ビデオカードの購入層であるゲーマーにとって魅力ある製品であり、売れ筋だったからである。 3dfxは最新のVoodoo3チップは自社製品にのみ搭載し、旧式のVoodoo BansheeとVoodoo2ならば他社へ供給しても良いという、ビデオカードメーカーを馬鹿にしたような対応を行った。この対応は多くの友好的だったメーカー各社を不快にさせ、それらのメーカーは次善の策としてそれまでVoodooに比べ3Dゲームの性能面では劣るとされていたS3やNVIDIAの製品を採用するようになった。 だが、この時点でのVoodooシリーズの優勢を背景としたこの路線変更は3dfxにとって致命傷となった。Voodoo3搭載カードを自社工場のみで製造するという試みを行った結果、製品の発売が予定から大幅遅延、収益に深刻な打撃を与えただけでなく、他社は続々とNVIDIA製品に切り替えを行ったため、デファクトスタンダードの座から自ら降りる結果となった。 チップベンダであれば研究・開発・設計までを行えば良い。しかし一元生産を行うメーカーとなれば、それまで各ビデオカードメーカーが行っていた、その後のカード試作・生産準備・調達・生産・販売・アフターフォローといった、工程のすべてを自社にて行う必要がある。 3dfxの誤算は、チップ製造以降の各工程こそがもっとも莫大なコストがかかり、かつ人的管理などが難しい工程であったことであった。 多数の人間を雇用し、安全管理や労務者の健康管理まで行う工場経営は簡単にできるものではなかった上、自社で販売するとなれば、世界中に販売のための現地法人を作るなり、協力会社と提携するなど、世界的規模での投資が必要となる。 マーケティング上においてもそれまで友好的な関係にあった世界中のビデオカードメーカーとの関係の悪化を招くなど、自らの首を絞める結果となっていった。 結果、1998年11月に発表されたVoodoo3が実際に販売開始されたのは1999年4月。その間の収益悪化は避けられず、しかもビデオカードメーカーはNVIDIAやS3といった他社のチップベンダの製品を採用することになり、3dfxは磐石だったシェアを自ら明け渡した格好であった。 発売されたVoodoo3 3000の3D描画はVoodoo Bansheeの仕様を踏襲し16bitカラーレンダリング限定とすることで、3Dゲーム向けでは24bit/32bitカラーレンダリングに対応した他社製品と比較して高い性能を叩き出したが、色数として24bit/32bit環境が普及している状況を考えた場合には明らかに限界が見え始めていた。人間の視覚でバンディングノイズを感知できなくなる色数は、最低でもRGB各色8bitの計24bitの色数が必要であり、他社製品も人間の視覚に合わせて24bit/32bitの色数を前提として改良が続けられる中で、Voodooの場合は16bitを継続する方向性を取っており、世界標準からの乖離は次第に大きくなって行った。 当時の最高スペックのゲームである「Unreal」や「Quake2」といったゲームでは、MATROX、S3、ATI、NVIDIAが生産するDirect3Dのみ対応のビデオカードでは高解像度にすると非常に重く、場合によってはゲームプレイが困難なほどであったが、Voodoo3はGlideとの組み合わせで常時60fpsを叩き出した。 Voodoo3は機能面では前作のVoodoo Bansheeと大差なかったが、グラフィックコアの高クロック動作(183MHz駆動)でGlide対応ソフトにおいてSLI構成のVoodoo2を上回る圧倒的な描画スピードと優れた画質を実現しており、RIVA TNTやRAGE 128、Permedia 3といった発売時点での他社のライバル製品をまったく寄せ付けなかった。ビデオキャプチャ機能付きのVoodoo3 3500 TVも発売された。 性能面では未だNo.1の座に居たVoodoo3ではあったが、16bitの色数に固執する姿勢や、販売方法変更の影響から3dfxに対して報道ではすでに将来性に懸念を投げかける声が出ていた。
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