TCA機長の登場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 06:45 UTC 版)
「ユナイテッド航空232便不時着事故」の記事における「TCA機長の登場」の解説
第2エンジンの異常発生時、客室では食事用トレーの片付け中だった。エンジンの爆発音があり、やがて機長による機内アナウンスが流れて、第2エンジンの停止が乗客に知らされた。先任客室乗務員がコックピットに呼ばれ、状況説明を受けて緊急着陸に備えるよう指示された。その際の緊迫した様子を彼女は「焼却炉のドアを開けて熱風が吹いてくるような感じ」だったと証言している。客室に戻った彼女は、乗客を刺激するのを避けるべく、客室乗務員を一か所に集めることはせず、一人ずつ状況説明をして緊急着陸に備えるよう伝えた。客室乗務員たちは動揺を隠し、平静さを保つよう努め、乗客に緊急時の準備をさせた。 問題発生から約10分後の15時26分42秒より、コックピットボイスレコーダー(CVR)の録音が残っている。そのとき、スー・ゲートウェイ空港の管制官(以下、進入管制官)と交信中で、状況説明を行っていた。15時27分、サンフランシスコの整備施設と最初の交信が行われた。パイロットは整備施設に全油圧システムが停止して油量も失われた旨を伝え、支援を要請した。しかしこの後、事故機と整備施設の間で断続的に交信があったが、整備施設から乗員へ何か指示できることはなかった。 非番で搭乗していたTCA機長は、ユナイテッド航空の乗員訓練を信頼しており、当初は協力を申し出るのを遠慮していた。しかし、エンジン1基停止時の飛行手順と異なる飛行状況だったことや、先任客室乗務員から深刻な状況であることを聞き、手助けを申し出た。15時29分、先任客室乗務員がコックピットに入り、DC-10型機のTCA機長が搭乗していること、そして彼に協力の意思があることを伝えた。機長はただちにTCA機長をコックピットに招くよう指示をした。それから30秒も経たないうちに、TCA機長はコックピットに入った。TCA機長が到着したとき、機長と副操縦士は精一杯の力で操縦桿を左に切っていたが、機体は右旋回をしていた。コックピット内は緊迫しており、機長が挨拶して乗員を紹介したが、その間、誰もTCA機長の方を向く余裕もなかった。 機長はTCA機長に状況を説明し、機体の制御手段がまったくないと伝えた。機長は、客室の窓から外部の損傷がないか、そして操縦翼面が操作に反応しているか確認するようTCA機長に依頼した。外観確認を終えたTCA機長はコックピットに戻り、内側エルロンは無傷だがわずかに上向きで固定されていたことと、スポイラーが下げ位置でロックされていることを報告した。主操縦翼面は動作していなかった。 機長は、TCA機長にエンジンのスロットルの制御を指示した。これにより、機長と副操縦士が他の操作や管制塔との通信などに専念できるようになった。スロットルは機長席と副操縦士席の間のペデスタル(中央制御卓)にある。TCA機長はペデスタルの後ろにひざまずいてスロットル・レバーの調整を担った。TCA機長はエンジン出力でピッチとロールを制御しようと試みた。機体は常に右旋回する傾向があったほか、安定したピッチ姿勢を維持するのが難しくなっていた。TCA機長は第1エンジン(左翼側)と第3エンジン(右翼側)の推力を対称にできないと考え、両手でそれぞれのレバーを操作した。
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