Starの市場性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/29 14:09 UTC 版)
「Xerox Star」の記事における「Starの市場性」の解説
Xerox Starは、本来は独立して使われるコンピュータとして設計されたものではなく、ゼロックスの「パーソナル・オフィス・システム」や他のワークステーション、ネットワークサービス機器にイーサネットを介して接続されることを前提として設計された。 1台だけでも16,000ドルという販売価格であったが、普通の事務所では2-3台の機器とファイルサーバ・プリントサーバを用意しなければいけないため、システム全体の価格は50,000ドルから100,000ドルという価格になる。これは販売の大きな障害になった。 後にStarは改良され、単体の装置とレーザープリンターを購入するだけで使えるようになった。しかしXerox Starは25,000台が売れたに留まったため、商業的には失敗だったといわれている。 Starは時代の先を行き過ぎていたのだという声も聞かれた。小さな開発者集団の他にはごく少数の人にしかその高い能力が理解されなかったのである。Starが市場に投入された年というのは、IBMはIBM PCにごく基本的なOSであるPC-DOSを搭載して販売していた年であることに注意してもらいたい。また、Starの2年後にApple Computerにより市場に投入されたLisaも結局、商業的に失敗したが、これもStarと同じような理由だと言われている。 他方では、Starが成功できなかった理由はゼロックスの体制に問題があったからだと指摘する声もある。ゼロックスは長年にわたり複写機のメーカーとしてその地位を築いていた。サイエンティフィック・データ・システムズの獲得に伴う解雇騒ぎで彼らは既に失敗を犯していた。ゼロックスの収入の大部分をまかなっていた旧来からのコピー機の部門は、新規部門に嫉妬心を持っていたと言われている。彼らの商売努力は、半分しか理解されないか全然注目されなかった。加えて、オフィス機器の販売部門の主要な責任者たちは、50万ドルにも及ぶレーザープリンターの賃貸契約料を獲得していた。そこには「分散処理化」が入り込む余地がなかったのである。 おそらく最も重要である点は、ゼロックスの企画戦略担当者たち (Xerox Systems Group : XSG) は、アポロコンピュータやシンボリックスなどのワークステーションメーカーと対等に戦える力が無いと判断したということであろう。「ゼロックス」という名前は大きな財産ではあったが、直接顧客には結びついていなかったのである。 さらに、今日の標準的なものと較べると、このソフトウェアはあの時代の限定されたハードウェアに載せるにはあまりにも重すぎて、動作が遅すぎたのである。特にファイルシステムの設計のまずさによる影響が大きかった。大きめのファイルを保存するのには数分を要した。障害時には1時間近くもかかる「ゴミ掃除 (scavenging)」が始まり、「7511」という診断コードが画面右上に表示され続けた。このシステムがいかに洗練されたものであったにしても、この時間はしばしば堪え難いものであった。 ゼロックスの名にかけて、彼らは売上を伸ばすための様々なことを試みた。Starを改版する際には、より効率的な他のハードウェアプラットフォームに乗り換えをし、性能向上のための大幅なプログラム書き換えを行なった。新しいシステム Viewpoint 6085 は1985年に発売された。このハードウェアは1–4MBの主記憶装置を持ち、10–80MBのハードディスクドライブを持っていた。また、15インチか19インチのディスプレイ、5.25インチフロッピーディスクドライブ、マウス、イーサネット接続端子を持ち、価格は6000ドル強であった。 Viewpointはレーザープリンターさえあれば単独の機器として販売することができるようになった。Intel 8086用拡張基板を用いてPC/AT互換機モードが提供された。StarシステムのファイルをPC/AT用ソフトウェアに引き渡すことが可能になったのである。 かなりの価格低下を実現したにもかかわらず、2000ドル以下で売られているパーソナルコンピュータの世界では、この機器はまるでロールス・ロイスのようなものであった。 1989年にはDTP向けの多くの新しいアプリケーションを搭載したViewpoint 2.0が市場投入された。しかし結果としては、ゼロックスはViewpointで実現したハードウェアとソフトウェアを融合した形でのワークステーションというものを捨てることになった。ゼロックスはPC/AT互換機用ソフトウェア GlobalView を発売し、そこでStarのインタフェースと技術を実現することになったのである。GlobalViewの最初の版ではMESA CPU拡張基板を取り付ける必要があったが、1996年に発表された最終版 (2.1)ではWindows 3.1、Windows 95、Windows 98上でエミュレーションにより動作するようになった。
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