Starの遺産と誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/29 14:09 UTC 版)
「Xerox Star」の記事における「Starの遺産と誤解」の解説
他方で、Starはかくも先進的であったがゆえに、その影響力を過大評価する誤解もはびこっている。たとえば、Apple Computerのスティーブ・ジョブズはゼロックスのPARCを訪問してAltoを見てからLisaと後のMacintoshにGUIとマウスを持たせることを決めたとされていることと、Altoが後にStarのハードウエアに技術転用された事実を組み合わせて、XeroxのStarがアップルのその後のGUIに影響を与えたとされることがある。しかし、これは正しい話ではない。スティーブ・ジョブズが目にしたのは当時、暫定的ダイナブック環境として開発中だったSmalltalkシステムであり、PARCを見学したジョブズたちが別部門で、しかも極秘裏に開発中のStarのデモンストレーションを受け、さらにそこからインスピレーションを受けることなどとうていあり得ないことである。 実際、Lisa試作機においては、Star発表の前年の1980年には、SmalltalkのGUIから多くの特徴を吸収し、さらにマウスのワンボタン化(Altoのは3ボタン)と、その際に削除したボタンの機能を割り振るため、プルダウンメニューやメニューバーの発明(第二ボタンの機能)や、ウインドウやタイトルバーへの機能の組み込み(第三ボタンの機能)といった、独自のアレンジを終えていた(この状況の推移は、1980年の月単位で参考文献に詳しい)。Lisaの開発チームのメンバーは、翌年の全米コンピュータ会議 (National Computer Conference: NCC '81) で初めてStarを目にするまで、Starのことを知るよしもなかったと後に述べている。さらに、発表当初Starは、ウインドウもタイル表示スタイルでオーバーラップ表示ではなかったことや、マウスボタンの使用法、テキスト編集方法や編集用メニューコマンドの構成など、多くの点でLisaや、それが手本にしたSmalltalk GUIとは様式が大きく異なっていた。このような状況証拠からも、StarがLisa、ひいてはその後継者であるMacintoshやWindowsなどに多大な影響を及ぼしたとは考えにくい。 しかし、Lisaより先行して発表されたStarのユーザーインターフェイスからの、Apple製品への影響が皆無ともいいきれない。たとえば、Smalltalkシステムはプロセス毎に1ないし数個のウィンドウを持つが、これらのウィンドウは最小化(アイコン化)して名前だけの四角形にすることはできても、デスクトップ上にデータ(フォルダや文書)やサービス(印刷、電子メールなど)がアイコン化されて置かれるということは無い。こうしたアイコンベースのデスクトップマネージャ機能はStarオリジナルのもので、この点に限ってはアップルの開発者も、前述のNCCで見たStarからヒントを得て完成間近のLisaに新たに組み込んだものであることを認める発言をしている。
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