N011M
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/19 17:05 UTC 版)
「バルス (レーダー)」の記事における「N011M」の解説
バルスレーダーの第二弾はN011Mで、N007 ザスロンの開発で得た経験を生かして、電子走査(フェーズドアレイ)方式の平面アンテナを採用したレーダーである。性能向上のために、アンテナ設計を多チャンネルパッシブ電子走査アレイ(PESA)に変更した。N011M バルスアンテナの設計は、以前のN007アンテナと同様に、XバンドレーダーとLバンドIFFトランスポンダーの2つの独立した電子制御アレイで構成されており、総重量は100kg、直径960mmとなっている。このレーダーのピーク出力は4-5kWで、400マイクロ秒でビームの位置決めができ、機械式走査レーダーに比べて大きな利点となる。バルスレーダーは方位角±70度および仰角±45度でセクター走査をするための位置固定が可能。走査範囲の改善のため、レーダーを電気機械駆動に取り付けることもでき、この場合、セクター走査は±90度に広がる。 N011Mに搭載されている28MHzのTs200プログラム制御シグナル・プロセッサは、毎秒7500万回の演算が可能なバタフライ型のフーリエ変換を組み込んでいる。N011Mは、3つのプロセッサを使用したデジタル信号処理をサポートしており、16MBのスタティックメモリとフラッシュメモリを搭載している。ピーク出力は4-5kW、平均出力は1.2kWで、レーダーシステム全体の重量は約650kg。N011MはSu-30MKI、Su-30MKMに採用されており、N011Mレーダーの契約は3段階に分かれている。初期のMK1ソフトウェアは2002年にテストされ、最初のSu-30MKI納入時に供給された。インドは「Vetrivale」プロジェクトの下でプログラム制御シグナル・プロセッサとデータ・プロセッサの両方を製作し、オリジナルのロシア製部品を置き換えることになっていたが、要求期間内にそれを行えなかったため、MK2ではロシア製機器を使用したままであった。2004年、インドは i960アーキテクチャをベースにしたVetrivaleレーダーコンピュータを納入した。注目すべきは、N011Mは単なるPESAではなく、両方の技術を使うため、PESAとAESAの遷移である。N011Mのアンテナアレイ上の各トランシーバーには、AESAと同じ受信アンプが搭載され、3dBのノイズレベルを持ち、これもAESAアレイと同クラスである。ただし、送信にはPESA技術を採用しており、EGSP-6Aの送信機にはシングル・チェルノック進行波管を使用している。N011Mには3つの受信チャンネルがある。 N011Mは400kmの捜索範囲と200kmの追尾範囲を持ち、空対空モードでは後方に60kmの追尾範囲を持つ。300平方度以上のレビュー領域でのMIG-29戦闘機の検出範囲は、正面に対して140kmまで、追尾では60kmまでである。スキャンモードでは、最大15目標同時追尾、うち4目標同時交戦が可能。N011Mは多くの近距離および速度サーチモードを使用することができ、複数目標の種類と数の識別が可能。バルスレーダーは、照射とデータリンク誘導の両方を行い、R-73 IR誘導ミサイルと同様に、R-77とR-27レーダー誘導ミサイルと互換性がある。 空対地モードでは、本レーダーは地上と海上の移動目標の検出、位置の特定をし、同時に2つの地上目標の追尾を維持することができる。N011は最大40-50 km範囲の戦車グループの目標を検出でき、80-120 km範囲の駆逐艦サイズの目標の検出ができる。バルスはまた、最大分解能10メートルのリアルビーム、ドップラービームシャープニング、または合成開口レーダーのいずれかを使用したマッピングモードを備えている。また、Kh-31対レーダーミサイルも本レーダーに対応している。
※この「N011M」の解説は、「バルス (レーダー)」の解説の一部です。
「N011M」を含む「バルス (レーダー)」の記事については、「バルス (レーダー)」の概要を参照ください。
- N011Mのページへのリンク