鳥類の進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 15:36 UTC 版)
「シブリー・アールキスト鳥類分類」および「恐竜の分類(英語版)」も参照 すべての現生鳥類は鳥類 (ちょうるい、Avis) すなわち今鳥亜綱 (こんちょうあこう、Neornithes) に位置づけられる。 頭骨のモザイク進化に関する研究により、すべての今鳥亜綱の最も新しい共通の祖先は、カギハシオオハシモズに似た嘴とニシコウライウグイスに似た頭骨を持っていたことがわかった。両種は小型でよく飛ぶ、林冠で採餌する雑食性鳥類であり、共通祖先についても同様であると考えられる。 今鳥亜綱は古顎類と新顎類に分けられる。この2つの分類群は上目として扱われることが多いが、リブジー や Zusi は区として扱っている。 古顎類 (Palaeognathae) は従来、胸骨に竜骨突起を残すシギダチョウ類と、竜骨突起を喪失した飛べない平胸類(走鳥類〈ダチョウ類〉)に分けられてきたが、平胸類の単系統性が分子系統により否定された。 新顎類 (Neognathae) はキジカモ類 (Galloanserae) と新鳥類 (Neoaves) に分けられる。キジカモ類にはカモ目(カモ類、ガン類、ハクチョウ類、サケビドリ類)とキジ目(キジ、ライチョウ類、ツカツクリ類、ホウカンチョウ科など)が含まれる。新顎類の多様化は、中生代のうちに起こっていたことが、白亜紀後期のカモ科ヴェガヴィス (Vegavis) の発見によって明らかになっている。また、8500万年前のAustinornis lentus がキジ目に属するという説もある。 分岐の起こった年代についてはまだ盛んに議論されている。今鳥亜綱が白亜紀に進化したこと、他の新顎類からキジカモ類が分岐したのがK-T境界絶滅イベントの以前であることについては意見が一致しているが、キジカモ類以外の新顎類の適応放散も恐竜の絶滅以前だったのかどうかは異なる見解がある。これは、適応放散の推定年代結果が手法によって異なるためである。化石記録では第三紀、DNA分岐年代推定は白亜紀の適応放散を示唆している。 既知の現生鳥類の種数はおよそ9700種以上、9930種から1万530種となる。鳥類の現生種のうち、古顎類は0.5%、キジカモ類は4.5%を占めるにすぎず、新鳥類に種の95%が含まれる。 鳥類の分類は議論の絶えない分野である。鳥類の分類体系の中で最も古いものは、1676年の『鳥類学』 Ornithologiae においてフランシス・ウィラビイとジョン・レイによって示されたものである。 カール・フォン・リンネは1758年に、現在に繋がる生物の分類体系を発表しているが、鳥類の分類はウィラビイとレイのものを元にしている。 シブリーとアールキストの「シブリー・アールキスト鳥類分類」 Phylogeny and Classification of Birds (1990) は、鳥類の分類における画期的な業績である。この分類は、かつては目の位置づけが正確であることを示唆する証拠が多いと考えられていたが、2000年代後半に明らかになった分子系統により、いくつかの目分類は大幅な修正を受けた。 Ericson et al. (2006)は、新鳥類 (Neoaves) が2つの姉妹群 Coronaves と Metaves に分かれるとした。Hackett et al. (2008)にも弱く支持されたが、異論もある。 以下の分類は国際鳥類学会 (IOC) に基づく。目レベルまでの系統は完全には解かれていないが、以下のような分類群が提案された(ただし landbirds 〈陸鳥〉は正式な分類群ではない)。 古顎類 Palaeognathae シギダチョウ目 Tinamiformes、ダチョウ目 Struthioniformes、レア目 Rheiformes、ヒクイドリ目 Casuariiformes、キーウィ目 Apterygiformes 新顎類Neognathae キジカモ類 Galloanserae キジ目 Galliformes、カモ目 Anseriformes 新鳥類 Neoaves ネッタイチョウ目 Phaethontiformes、サケイ目 Pteroclidiformes、クイナモドキ目 Mesitornithidae、ハト目 Columbiformes、ジャノメドリ目 Eurypygiformes、ツメバケイ目 Opisthocomiformes、ノガン目 Otidiformes、カッコウ目 Cuculiformes、ツル目 Gruiformes、エボシドリ目 Musophagiformes、チドリ目 Charadriiformes 賛鳥類 Mirandornithes カイツブリ目 Podicipediformes、フラミンゴ目 Phoenicopteriformes Strisores ヨタカ目 Caprimulgiformes、アマツバメ目 Apodiformes 水禽類 Aequornithes アビ目 Gaviiformes、ペンギン目 Sphenisciformes、ミズナギドリ目 Procellariiformes、コウノトリ目 Ciconiiformes、ペリカン目 Pelecaniformes、カツオドリ目 Suliformes landbirds ノガンモドキ目 Cariamiformes、タカ目 Accipitriformes、フクロウ目 Strigiformes、ネズミドリ目 Coliiformes、オオブッポウソウ目 Leptosomatiformes、キヌバネドリ目 Trogoniformes ゲラ・ブッポウソウ類 Picocoraciae サイチョウ目 Bucerotiformes、キツツキ目 Piciformes、ブッポウソウ目 Coraciiformes 真ハヤブサ形類 Eufalconimorphae ハヤブサ目 Falconiformes オウム・スズメ類 Psittacopasserae オウム目 Psittaciformes、スズメ目 Passeriformes 伝統的な目分類に対する修正により、上表はほぼ系統分類となっている。これらの修正は、初期の分子系統分類 シブリーら (1990) や、より新しい形態系統分類 Livezey & Zusi (2007) などと共通点は少ない。有望なレトロポゾンによるものや、近年の複数の研究 (Hackett, 2008; Mayr 2011) でも支持されている。 以下の系統樹は Braun & Kimball (2021) に基づく。 鳥類 古顎類 Palaeognathae 新顎類 鶏雁類 キジ目 Galliformes カモ目 Anseriformes Galloanserae 新鳥類 賛鳥類 フラミンゴ目 Phoenicopteriformes カイツブリ目 Podicipediformes Mirandornithes 鳩形類 ハト目 Columbiformes クイナモドキ目 Mesitornithiformes サケイ目 Pterocliformes Columbimorphae 燕雀上類 ノガン目 Otidiformes カッコウ目 Cuculiformes エボシドリ目 Musophagiformes ツル目 Gruiformes チドリ目 Charadriiformes ツメバケイ目 Opisthocomiformes Strisores Ardeae 広尾形類 ネッタイチョウ目 Phaethontiformes ジャノメドリ目 Eurypygiformes Eurypygimorphae 水禽類 アビ目 Gaviiformes Austrodyptornithes ミズナギドリ目 Procellariiformes ペンギン目 Sphenisciformes コウノトリ目 Ciconiiformes カツオドリ目 Suliformes ペリカン目 Pelecaniformes Aequornithes 陸鳥類 猛禽類 コンドル目 Cathartiformes タカ目 Accipitriformes Accipitrimorphae フクロウ目 Strigiformes ブッポウソウ上目 ネズミドリ目 Coliiformes 樹鳥類 オオブッポウソウ目 Leptosomiformes キヌバネドリ目 Trogoniformes ゲラ・ブッポウソウ類 サイチョウ目 Bucerotiformes 強カゲラ類 ブッポウソウ目 Coraciiformes キツツキ目 Piciformes Picodynastornithes Picocoraciae Cavitaves Coraciimorphae オーストラリア鳥類 ノガンモドキ目 Cariamiformes 真ハヤブサ形類 ハヤブサ目 Falconiformes オウム・スズメ類 オウム目 Psittaciformes スズメ目 Passeriformes Psittacopasserae Eufalconimorphae Australaves Telluraves Passerea Neoaves Neognathae Aves
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