鳥類の起原をめぐる論争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 01:56 UTC 版)
「恐竜ルネッサンス」の記事における「鳥類の起原をめぐる論争」の解説
19世紀中盤以降、進化論についての議論の発展とともに、多くの科学者が鳥類と恐竜の系統的な関係について注目した。1859年に種の起原が発刊されてすぐに、トーマス・ハックスリーは鳥類が恐竜の子孫であるとの考えを示した。彼は一部の恐竜と始祖鳥と現在の鳥類との間に認められる骨格の類似点を詳細に示した。 しかし1926年になって、ゲラルド・ハイルマン(英語版)は「鳥類の起原」の中で恐竜には叉骨(左右の鎖骨が融合した鳥類特有の骨)がまったく見られないことに言及し、恐竜と鳥類の直接の系統関係を否定した。その後、鳥類は恐竜よりむしろ、ワニ形類や槽歯類から進化したものだとする説が広く受け入れられ、鳥類の起原に関して恐竜は議論の対象から外れてしまった。その結果、一般の学術的な興味は恐竜の系統関係や進化から大きく遠ざかってしまった。この状況は1960年代まで続くことになる。 1964年にジョン・オストロムはモンタナ州から発見されたデイノニクス・アンティルホプスを報告した。デイノニクスは鳥類にとてもよく似た骨格を持っていた。オストロムは鳥類の骨格とデイノニクスの骨格との間には偶然ではすまされない多くの共通点があることに気がついた。このことは彼が鳥類の恐竜起原説に賛同するきっかけとなった。彼は小型肉食恐竜(コエルロサウルス類)から鳥類が進化したとする説を論じた。デイノニクスに近縁なヴェロキラプトルの全身骨格はその40年前に発見されていたが、当時は鳥類と恐竜の系統関係について何の議論も呼び起こさなかった。 オストロムの発見以降、鳥類の恐竜起原説は多くの古生物学者の賛同を得ることになった。今日では、鳥類が恐竜に起原を持つという学説は学界でひろく受け入れられている。さらに、近年の分岐系統学の発展や相次ぐ羽毛恐竜の発見はこの説をさらに強固なものとしている。 恐竜と鳥類の系統関係がクローズアップされたことは恐竜の進化に関する学術的な興味を呼び起こした。現在、恐竜(獣脚類)から鳥類への系統発生は詳細に解明されている。
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