高速台車振動研究会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 17:09 UTC 版)
「鉄道車両の台車史」の記事における「高速台車振動研究会」の解説
後進工業国として、長く欧米からの技術を受け止めることに汲々としてきた日本の鉄道工業界にとって一大転機となったのは、第二次世界大戦の敗戦と、それに伴う航空機産業の禁止であった。航空産業にとっては致命的と言って良い打撃となったこの決定は、しかし優秀な航空技術者を受け入れる立場となった鉄道・自動車産業界には非常に大きな恩恵を与えるものであった。 特に、この時に航空技術者からもたらされた、ワグナー(Herbert A. Wagner)の薄板による張力場理論を基礎とする張殻構造の設計ノウハウとフラッター現象の分析に由来する振動現象の理論的研究の2つは、日本の鉄道・自動車産業史をこれ以前と以後に峻別させるほどの重大な影響を及ぼした。それは鉄道車両用台車も例外ではなく、中でも後者はその第一人者であった松平精が国鉄の鉄道技術研究所に入り、蛇行動に関する研究を行うようになったことで、これまでは半ば設計者の勘に頼る形で行われていた構造設計について、理論モデルに従った机上計算により合理的に行えるようになる、という劇的な変化が生じることとなった。 その大改革に主導的役割を果たしたのが、1946年(昭和21年)に松平が在籍する鉄道技術研究所を中心に、国内の台車メーカー各社が参加して設立された高速台車振動研究会である。蛇行動に関するこの研究会による研究成果については後述するが、この研究会ではガタが生じやすく蛇行動の原因の一つと目された、伝統的なペデスタルを使用する台車からの脱却が強く模索され、この時期以降、日本の台車メーカー各社で多種多様な方式・構造の軸箱支持機構が研究開発された。この時期の理論・実践面での膨大な研究と試行錯誤による経験の蓄積は、やがて新幹線の成功に至る日本の鉄道高速化の道筋を形成することとなる。
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