理論的研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/13 08:35 UTC 版)
遺伝子間に相互作用がある場合、自然選択は常に遺伝子座の連鎖を強めるか、または同じ連鎖関係を維持する傾向のあることを最初に数学的に証明した。そして、ゲノムあたりの平均組換え率は、ふつう下等な生物よりも高等生物で低いことを発見し、これは自然選択が相互作用のある遺伝子間の連鎖を強くすることによるという提案を行った。Hox遺伝子、免疫グロブリン遺伝子、ヒストン遺伝子など相互作用をもつ多くの遺伝子は長期間にわたって遺伝子クラスターとして存在することが最近の分子データから分かっている。これも相互作用をもつ遺伝子間の連鎖の維持の法則によって説明することができる。有害な突然変異は、R. A. フィッシャーの理論とは異なって、集団の大きさが有限である場合、Y染色体や重複遺伝子に多く蓄積することを証明した。1969年には、アミノ酸置換、遺伝子重複、遺伝子機能の消失の速度を考慮して、高等生物は多くの重複遺伝子と機能を持たない遺伝子(現在では偽遺伝子と呼ばれる)をもつことを予測した。この予測は長い間忘れられていたが、1980-2000年になって多くの多重遺伝子族や偽遺伝子が発見され、その正しさが証明された。1970年代初めには、新たな遺伝距離の尺度(根井の距離)を考案し、集団や近縁種の進化的関係の研究の用いることを提唱した。この距離尺度は、分子集団遺伝学と分子生態学の分野では今でも広く用いられている。後に、系統樹のトポロジーを得るのに適した、DA距離という遺伝距離尺度も考案した。また、GST尺度を用いてどのような交配様式でも集団分化の程度を計ることのできる統計量を考案した。1975年、共同研究者とともに、集団のびん首効果による遺伝的変異の数式化を行い、びん首効果の生物学的意味を明らかにした。また、1979年、制限酵素を用いた遺伝的変異の研究に用いられる数学的理論を考案した。丸山毅夫とChung-I Wuとの共同研究で、2つの隔離集団の遺伝子間の不適合性のさまざまなモデルを用いて種分化の進化理論を考案した。このモデルにはまだ異論があるが、cis-調節エレメントと転写因子の共進化に当てはまると考えられる。
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