財政再建に関する提言・議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 20:10 UTC 版)
「日本の財政問題」の記事における「財政再建に関する提言・議論」の解説
「日本の消費税議論#消費増税の代替案」も参照 増税賛成論 国際通貨基金 (IMF) は、消費税の軽減税率の導入は効率性を阻害し、事務コストや行政管理のコストを増大させ、恒久的な歳入損失をもたらすと指摘し、低所得者層に対象を絞った補助金を通じて対処されるべきと述べている。日本の中長期的な財政再建について、最低でも15%への段階的な消費税率引き上げ、個人所得税の課税ベース拡大、年金・医療支出の抑制などを求めている。 持続可能な財政の姿を考えれば、国民の負担は今(2012年)よりも重くなり、支出はスリム化するしかない。消費税換算で30%ぐらいまで、すなわちあと25%の増税をすれば、プライマリーバランスの黒字を実現して、財政の持続可能性は回復できる。国民所得に占める消費の割合は60%なので、目の子算でいうと国民所得の15%分ほど生活水準を下げれば、なんとかなるということである。他方で、15%生産性が上がれば、差し引きゼロで生活水準を引き下げる必要はなくなる。 増税の前にやることがあると、歳出カットや成長戦略を行なう必要性が唱えられてきたが、問題を先送りしてきた結果である。「消費税を中心に増税」「社会保障費を中心にムダな歳出をカット」「成長戦略を実効性のあるものにして経済を活性化」の3つを実現させる必要がある。 経済が悪化し、財政赤字も拡大する一番悪いときに財政再建の意思決定を行い、財政再建の取り組みを開始することが理想的である。厳しい時ではないと、財政再建や構造改革について、政治家や国民の間で合意できないからである。その後、経済が上向き、回復した経済成長で税収が増え、財政収支が改善する。市場に安心感を与えることにより、経済を回復させることができる。もちろん、そうではない事例もある。1980年代前半ニュージーランドは、経済危機に直面していたため、一刻も早く財政収支を改善させる必要があった。ニュージーランドの場合は、財政再建期間中の1985年から1992年までの間の成長率は、1988年の2.7%を除いて1%前後で低迷した。財政再建の議論で重要なことは、短期と中長期の効果を区別することである。中長期で成長軌道に乗り、財政収支の改善によるプラスの効果があればよい。 増税反対論 大事なのは債務残高そのものよりも債務残高とGDPの比率である。財政支出を切り詰め増税をしても政府のGDP比債務残高は減らない。財政を縮小すると不況がやってくるが、それから景気はよくなるというのが財政再建派のロジックである。しかし、不況で経済が縮小すると景気の悪化を招きかねないため、税収が減少して財政再建はうまくいかない公算が大きい。1997年の例で分かるように、日本は財政再建に高いプライオリティをつけては失敗してきた。 経済成長、財政再建と社会保障の三つを満足させる解は、消費税増税と経済対策ではない。(安倍首相は)いわゆるトリクルダウン説を根拠としており、説得力に欠ける。財政再建をするには、増税せずに歳出を押さえ、その一方で金融緩和で景気をよくして税収増を図るのが正しい。これは財務省150年の歴史に当てはまる黄金則である。 歳出削減を実現したところで、デフレ経済下では財政破綻の懸念が常につきまとうことに注意が必要である。単年度で財政収支が均衡しても、政府債務は利息分だけ増加する。新規国債発行を抑制しても、債務は雪だるま式に大きくなり、結果として財政破綻は避けられない。歳出削減と名目GDPの成長率を引き上げる政策が必要不可欠である。
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