豊中市2人殺害事件とは? わかりやすく解説

豊中市2人殺害事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 04:35 UTC 版)

豊中市2人殺害事件(とよなかしふたりさつがいじけん)は、1998年平成10年)2月19日未明に大阪府豊中市大黒町三丁目で発生した殺人事件である[2]


注釈

  1. ^ a b 事件現場は神崎川駅阪急神戸本線)から北方約1 kmの住宅街[1]
  2. ^ このうち、被害者Aの遺族はそれを預かる形にしている[9]
  3. ^ N・X・Yの各加害者はいずれも当時、高知市在住[15]で、愛人を持つ不良グループ[16]。3人とも定職を持ってはいたが、生活が乱れ、金に困ったことから強盗を企てた[16]
  4. ^ 現:高知市大津舟戸。
  5. ^ 高知県警がNら犯人3人の自宅など6か所を家宅捜索したところ、N宅(高知市比島町二丁目)から22口径ロングライフル弾約150発、少年Y宅(比島町二丁目)から凶器の22口径ライフル銃が押収されたが、3人は「それ以外の盗品(ライフル銃・空気銃)は怖くなって海に捨てた」と自供した[16]
  6. ^ 1969年2月16日 - 22日にかけ、3人は高知市一宮の銃砲店など計4か所で、火薬など計30点(時価合計472,000円相当)および現金4,000円を盗んだ[18](窃盗罪)。また、2月16日10時30分ごろには先述の銃砲店からライフル弾などを盗んだ際、犯跡を隠蔽するために同店火薬庫に放火しようとしたが、火が燃え広がらず未遂に終わった[18](非現住建造物等放火未遂罪)[19]
  7. ^ 土佐電気鉄道後免線知寄町停留場の脇[16]
  8. ^ 1969年2月21日夜、高知市知寄町二丁目[注 7]のガソリンスタンド南側トイレ入口の鉄製ドアにライフル銃弾を撃ち込んだほか、同市若松町でも乗用車のドアに発砲した[17](銃刀法違反・建造物損壊罪器物損壊罪)。
  9. ^ 拳銃を奪うことを企てた理由は銀行強盗のためだった[19]
  10. ^ 3人は当初、アベックの車を狙ったが、適当なものが見当たらず、偶然通りかかるのを見た甲の車を追跡・襲撃した[20]
  11. ^ 現:香美市土佐山田町北滝本。
  12. ^ 土佐郡土佐村(現:土佐町)。
  13. ^ 甲がXからの脅迫に驚いて助けの叫び声を発したため、Nは威嚇のつもりで1発発砲し[23]、腕に命中した[24]。しかし甲がさらに救助を求めて叫んだため、2発目を撃ったが不発に終わったため、3発目を発射したところ頭部に命中した[23]
  14. ^ 現:香美市土佐山田町繁藤。
  15. ^ 被害者である甲の自動車内には所持金16,000円・運転免許証が遺されていた[25]が、Nらは車内の流血の惨状を見て金品強取の目的を放棄した[23]。犯行後、Nらは甲の死体を甲の車に乗せ、現場から900 m離れた土佐山田町繁藤[注 14]の県道脇空き地まで運んで遺棄した[16]
  16. ^ 現:南国警察署
  17. ^ 当時は未解決事件。同年4月に加害者の永山則夫が逮捕され解決。
  18. ^ 事件当初、銃を使用して車の運転手を射殺した犯行手口に加え、ロングライフル弾は1発ずつ装填すれば拳銃にも使用できる点などから、高知県警は「警察庁広域重要指定108号事件[注 17](特に北海道名古屋のタクシー運転手射殺事件)と関連している可能性もある」として[25]警察庁に事件を報告したが[26][25]科学警察研究所で被害者の遺体から見つかった弾丸破片を鑑定したところ、108号事件で使用された弾丸とは別の弾丸であることが判明した[27]
  19. ^ 聞き込み捜査の結果、「むち打ち症で高知市内の病院に入院しているはずのXが車で遠出したり、そわそわしたりしている」との情報が寄せられたため、高知署が内偵捜査したところ、犯行への関与が浮上した[16]
  20. ^ 高知地裁 (1970) は「手段を選ばない無軌道な行動は許せない」と指摘し、共犯の男Xにも無期懲役を、少年Yにも(当時、少年への有期懲役刑としては最高刑である)懲役15年の刑をそれぞれ言い渡した[19]
  21. ^ 高松高裁 (1973) は「犯行は残虐非道なものだが、Nは自動車運転者を襲うに当たり、(最初の発砲は威嚇目的だった点などから考えて)被害者側が抵抗した場合はともかく、最初から何がなんでも殺害しようという意図で犯行に臨んだものとは考え難い。また、犯行後に車内の惨状を見て金品強取を断念するなど、目的を完遂した強盗殺人とは異なる面があり、Nの悪性の中に酌むべき一自制心があったと言える。Nは当審で殺意・強盗目的を否定するなど不可解な弁解をしているが、死刑を免れるための虚言・詭弁というよりは、Nの性格・思考の甘さに由来するものと言え、両親とともに被害者甲の遺族に弁償しようとするなど、悔悟の情が認められる」と指摘した[30]。また、第一審で無期懲役を言い渡された被告人Xも懲役15年に、被告人Yも懲役12年にそれぞれ量刑を減軽された[29]
  22. ^ 服役中、Nは被害者甲の遺族に送金するなどしていた[9]
  23. ^ Nは仮出所後、本事件を起こすまで約7年間は保護司と連絡を取りながら真面目に建築業に携わっていた一方、日常的に自動車の無免許運転を行い、罰金刑を受けても改めなかったが、それ以外の点で問題を起こすことはなかった[9]
  24. ^ Cは1982年(昭和57年)にAと結婚して息子3人を儲け、豊中市内で生活していたが、Aは浮気が酷く、気に入らないことがあると暴力をふるうような状態だったため、Cとの夫婦生活は破綻していた[4]
  25. ^ Cは豊中市の自宅を出る際、離婚届用紙に署名押印して夫Aに手渡し、新居(足立区内)の所在地も教えた[4]
  26. ^ この時、Cは長男・次男のことも気に掛け、同年夏に2人を東京へ呼び寄せたが、2人は東京での生活を嫌ってすぐに逃げ帰った[4]
  27. ^ Aの提示する条件がその時々で変わったり、電話を無視したり、電話を一方的に切ったりするなど[4]
  28. ^ Nはそれ以前にも同所付近でAを見かけたことがあった[4]
  29. ^ 当時、Nは出刃包丁を隠し持っていた[1]
  30. ^ 大阪拘置所はNの病状について「手術できない状態」と判断したが、抗がん剤放射線療法の必要性を検討する精密検査を実施せず、緩和ケア・対症療法を行うに止まった[36]。また、抗がん剤・放射線療法による治療が可能な大阪医療刑務所への移送は同年12月になったが、Nはこれらの大阪拘置所側の措置に不満を持っていた[36]

出典

  1. ^ a b c d e f g 読売新聞』1998年2月19日東京夕刊第4版第一社会面23頁「大阪 2人刺殺男を住民捕らえる 悲鳴聞き追跡200メートル 深夜の路上、62歳ら3人」(読売新聞東京本社
  2. ^ a b c d e f 東京新聞』1998年2月19日夕刊第一社会面11頁「路上で男女2人刺殺 ベルトに別の包丁 住民4人、男捕まえる 大阪・豊中」(中日新聞東京本社
  3. ^ a b c d e f 仮出所中に2人殺害 N被告の死刑確定へ」『asahi.com』朝日新聞社、2006年6月13日。オリジナルの2006年6月16日時点におけるアーカイブ。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai 大阪高裁 2003, 犯行に至る経緯及び背景事情.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 『毎日新聞』2001年11月20日大阪夕刊第一社会面11頁「仮出所中に2人殺害、被告に死刑判決 無期懲役で18年服役後--大阪地裁【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
  6. ^ a b c 最高裁 2006, pp. 1–2.
  7. ^ a b c 大阪高裁 2003, 被告人.
  8. ^ a b c d e f g h i j k 『朝日新聞』2001年11月20日大阪夕刊第一社会面15頁「仮出所中2人刺殺、N被告に死刑判決 大阪地裁【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
  9. ^ a b c d e f g h i 大阪高裁 2003, 量刑の当否について(職権判断).
  10. ^ a b c N死刑囚が病死 仮出所中に2人殺害」『日本経済新聞日本経済新聞社、2014年5月16日。2020年8月24日閲覧。オリジナルの2020年8月24日時点におけるアーカイブ。
  11. ^ a b 『朝日新聞』2001年8月7日大阪夕刊第一社会面13頁「被告に死刑求刑 仮出所中、豊中で2人殺害 大阪地検【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
  12. ^ 刑事裁判資料 1977, p. 238.
  13. ^ 年報・死刑廃止 2019, p. 261.
  14. ^ a b 「がん死刑囚の移送怠る」「今後は速やかに医療刑務所に」大阪弁護士会が拘置所に勧告」『産経ニュース産業経済新聞社、2018年3月16日。2020年8月24日閲覧。オリジナルの2020年8月24日時点におけるアーカイブ。
  15. ^ a b 毎日新聞』1970年3月31日東京朝刊第14版第二社会面22頁「【高知】ライフル殺人に死刑の判決 高知地裁」(毎日新聞東京本社
  16. ^ a b c d e f g h i 朝日新聞』1969年3月27日大阪朝刊第15版第一社会面15頁「【高知】高知の運転手殺し 少年ら三人逮捕 ライフル押収 連射も自供」(朝日新聞大阪本社
  17. ^ a b 刑事裁判資料 1977, p. 241.
  18. ^ a b 刑事裁判資料 1977, p. 239.
  19. ^ a b c d 『朝日新聞』1970年3月31日大阪朝刊第15版第二社会面22頁「【高知】ライフル射殺事件 Nに死刑判決」(朝日新聞大阪本社)
  20. ^ a b c d e 刑事裁判資料 1977, p. 242.
  21. ^ 『朝日新聞』1969年3月18日大阪朝刊第15版第一社会面15頁「【高知】ライフル銃事件 発射、先月2件 銃弾なども盗まれる」(朝日新聞大阪本社)
  22. ^ a b 刑事裁判資料 1977, p. 240.
  23. ^ a b c 刑事裁判資料 1977, p. 253.
  24. ^ a b 刑事裁判資料 1977, p. 243.
  25. ^ a b c d 『朝日新聞』1969年3月18日大阪朝刊第15版第一社会面15頁「【高知】高知県の運転手殺し 凶器は22口径の銃 ライフル 頭などに弾丸2発 連続発射と関連重視」(朝日新聞大阪本社)
  26. ^ a b 『朝日新聞』1969年3月17日大阪夕刊第5版第一社会面11頁「【高知】高知県で車の中 運転手殺される 撃たれたか頭の傷 連続射殺に関連か」(朝日新聞大阪本社)
  27. ^ 『朝日新聞』1969年3月19日東京朝刊第12版第一社会面15頁「高知の運転手射殺 連続射殺とは別の弾丸」(朝日新聞東京本社
  28. ^ 刑事裁判資料 1977, pp. 238–239.
  29. ^ a b 刑事裁判資料 1977, p. 245.
  30. ^ 刑事裁判資料 1977, pp. 253–254.
  31. ^ 『朝日新聞』1998年2月19日東京夕刊第二社会面22頁「男女刺されて死亡 大阪・豊中の路上」(朝日新聞東京本社)
  32. ^ 無期懲役で仮出所中に男女殺害の被告に死刑を求刑 大阪」『asahi.com朝日新聞社、2001年8月7日。オリジナルの2001年8月9日時点におけるアーカイブ。
  33. ^ 大阪高裁 2003, 主文.
  34. ^ 日本経済新聞』2003年10月28日大阪朝刊社会面16頁「大阪高裁判決、仮出所殺人、二審も死刑」(日本経済新聞大阪本社 記者:木戸哲)
  35. ^ 『毎日新聞』2006年6月14日大阪朝刊第一社会面27頁「大阪・豊中の男女刺殺:被告の死刑確定へ」(毎日新聞大阪本社 記者:木戸哲)
  36. ^ a b c d e 会長:小原正敏 (2018年3月15日). “勧告書(大阪拘置所長宛て) (PDF)” (日本語). 大阪弁護士会 公式ウェブサイト. 大阪弁護士会. 2020年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月24日閲覧。
  37. ^ 拘置所における治療困難ながん患者について、速やかに医療刑務所へ移送することを怠った事例” (日本語). 大阪弁護士会 公式ウェブサイト. 大阪弁護士会 (2018年3月15日). 2020年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月24日閲覧。


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