警護対象者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/08 15:54 UTC 版)
日本では警察官による警護対象者は警察法施行令第13条に基づく警護要則により「内閣総理大臣、国賓その他身辺に危害が及ぶことが、国の公安に係ることとなるおそれがある者として警察庁長官が定める者」とされている。 具体的な警護対象は、内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官の三権の長、衆議院副議長、参議院副議長、国務大臣、総理大臣経験者、与野党党首、与党(現在は自由民主党)の幹事長、政務調査会長、総務会長、参議院議員会長、参議院幹事長、主要国駐日大使、地方公共団体の首長。なお、アメリカのシークレットサービスは大統領の家族も含めて警護するよう規定されているが、日本の場合は内閣総理大臣の家族は警護対象者ではなく、SPは総理大臣を警護しても通常はその家族までは警護しない。ただし、有事の場合はこの限りではなく、安倍晋三銃撃事件の際に元内閣総理大臣夫人の安倍昭恵が夫の入院先の病院まで移動する際はSPによる警護が行われた。 国会に議席を有する政党の代表者についても、必要に応じて警護を行なう。これらは「要請出動」と呼ばれる警護で、要請がなければ警護しない。主要政党の代表者は国政に重要な位置を占めていても法律的には警護対象者ではない為である。原則として、一般の国会議員に対しSPが警護にあたることはなく(前述の例外を除く)、それぞれの国会議員は警備会社のボディーガードを個別に依頼している。ただし、その発言や政策などで、暴力団や右翼団体、過激派などから命を狙われる危険のある国会議員には、要請出動がなされる場合もある。また、国会議事堂内では衛視が身辺警護を務めている。立法府が行政府の警察に警備を委ねるのは好ましくないという理念から、議院警察権を行使し、議院記章のない警察官は国会議事堂内に立ち入ることはできない。 大都市である東京都、大阪府および成田国際空港を抱える千葉県の知事には各都府県警察の警護が付せられる。また、参議院議長経験者の土屋義彦埼玉県知事は、全国知事会長在任中に県警の警護官がつけられたことがある。このほか、昭和天皇の戦争責任発言をめぐり、1990年に狙撃され重傷を負った本島等長崎市長や産業廃棄物処理施設建設をめぐり、1996年に襲撃され重傷を負った柳川喜郎岐阜県御嵩町長にも事件後に県警の警護官がつけられた。 駐日大使では、中華人民共和国、イスラエル、アメリカ合衆国、いわゆる紛争当事国等、国際政治の中で機微に触れる外交問題を抱える国家の特命全権大使には、大使館関係者や先方が雇用している警備員によるボディーガードに加えて、SPによる警護がついている。 民間人においては、唯一、日本経済団体連合会(経団連)の現役会長がSPによる警護を受けていた。経団連会長にSPがついていた期間は、野村秋介率いる三島由紀夫派の右翼団体による経団連襲撃事件が起きた1977年から、2010年までの33年間であった。かつてない不景気の中で、正規雇用の増加を目指した鳩山由紀夫首相と、非正規雇用の増加と、正社員を一人でも多く非正規労働者へと転身させることによって、不景気を克服することを要望する経団連との対立が決定的となったのと同じ時期に、警察庁警備局から警視庁に異例の指示が下され、警護対象から除外された。現在、民間人の立場にSPによる警護を受けている者はいない。
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