認証の意義と認証官の範囲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/28 23:08 UTC 版)
「認証」とは対象となる行為が権限ある機関によって正当な手続を経て行われた事実を確認し公証する行為を指す。天皇による認証は日本国憲法第7条に基づく国事行為の一つであり、同条による認証としては、いわゆる認証官の任免の認証(日本国憲法第7条第5号)のほか、全権委任状及び大使・公使の信任状の認証(日本国憲法第7条第5号並び書き)、恩赦の認証(日本国憲法第7条第6号)、批准書及び法律の定めるその他の外交文書の認証(日本国憲法第7条第8号)がある。 具体的にどの官職が認証官にあたるのかについては憲法または個別の法律(例:内閣法、宮内庁法など)より規定されるが、国務大臣、高等裁判所長官など、内閣、裁判所に置かれる官職のうち高位にあるもののみが認証官とされている。ただし、国会に設置される職(衆議院議長、参議院議長など)は天皇による任免、認証の対象とされていない。 認証官とされた官職であっても「任免」(任命及び免官)を行うのはあくまで日本国憲法や各法律に規定された任命権者(内閣など)であり、天皇はその任免の「認証」を行うのみである。認証を欠いていた場合にも対象となる行為そのものの効力には影響しない。このため、認証自体は形式的な行為に過ぎないが、宮中にて行われる儀式と併せて当該官職あるいはその地位にある者の権威を高める効果を持つ。 中央省庁再編前の政務次官は認証官ではなかったが、再編後に新設された副大臣は認証官となり、その地位の向上が図られている。また、自衛官の地位の向上のため、大将に相当する統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長および航空幕僚長の職にある将を認証官とする事が政策として検討されている。 認証には内閣の助言と承認を要する(日本国憲法第7条第5号)。ただし、新内閣成立時における国務大臣の任命についての認証については内閣総理大臣以外の国務大臣が未だ任命されていない。したがって、この場合には性質上、新たに任命された内閣総理大臣のみによって内閣の助言と承認が行われることになる。 なお、内閣総理大臣と最高裁判所長官の2つの官職のみは、任命に先立つ「指名」は前者は国会、後者は内閣からなされるものの、官職への任命行為は天皇が自ら行い(日本国憲法第6条)、天皇による認証は行われない。したがって、内閣総理大臣と最高裁判所長官は認証官には含まれない。内閣総理大臣や最高裁判所長官を任命する儀式は「親任式」と呼ばれている。大日本帝国憲法下では天皇が任命する官吏について「親任官」と呼称していたが、現憲法下では儀式の呼称として「親任」の文字が残るものの官職の区分としての「親任官」は用いられていないため、内閣総理大臣と最高裁判所長官を一括して「○○官」で表す区分呼称は存在しない。ただし、公的な行政権の行使等に関しない場面においては、宮内府・宮内庁が新年祝賀の告示文中などに「親任官」の表記を用いた例もあったが、1951年(昭和26年)6月16日付け官報の皇室事項欄掲載の「皇太后大喪儀」(貞明皇后の葬儀)の式次第に関する報告を最後に使用されなくなった。当然ながら、旧憲法下において親任官であった者への恩給など、過去の官吏に言及する場合については、当然のことながら今なお立法・行政・司法の公的な場で「親任官」の表現は使用され得る。
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